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コンテスト/Gnit Practice Open 001 for physics literature practice (GPO001)/第4問 若き天文学者の数式と、遥か巨星から届いた漆黒の吸収線(物理文学)
第4問

若き天文学者の数式と、遥か巨星から届いた漆黒の吸収線(物理文学)

終了
400 ptsLv.4 初級量子
2026/07/06 20:30〜2026/07/06 21:30
作成者:admin02

問題文

初冬の澄み切った夜空に、ひときわ赤く不気味な輝きを放つ超巨星「赫耀(かくよう)」。その星は今、寿命の終わりに近づき、明滅を繰り返しながら宇宙の彼方で静かに佇んでいた。

山頂に建つ国立天文台の薄暗い観測室で、大学院生の青年・数馬(かずま)は、大型望遠鏡に接続された高解像度分光器のモニターを凝視していた。彼の研究テーマは、星の周囲を包む希薄な水素ガス星雲が放つ、あるいは吸収する特異な光のスペクトル分析であった。

「……星から放たれた連続光が、周囲の冷たい水素ガスを通過するとき、特定の波長の光だけが原子に吸収される。その結果、七色の虹のようなスペクトルの中に、何本もの鋭い黒い線――すなわち『吸収線(フラウンホーファー線)』が刻まれるんだ」

数馬は、コーヒーの温もりで冷えた指先を温めながら、ノートを開いた。画面に映し出されているのは、量子力学の黎明期にニールス・ボーアが提唱した「水素原子の量子モデル(ボーアの原子模型)」によって、見事に説明される離散的なエネルギーの世界の縮図であった。

数馬は、宇宙で最も単純な構造を持つ水素原子に注目した。 中心にある正の電荷を持った1個の原子核(陽子)の周りを、負の電荷を持った質量 mmm の1個の電子が、静電気力(クーロン力)を向心力として円運動している。量子力学の規則によると、この電子はどんな半径の軌道でも自由に回れるわけではなく、電子の物質波(ドブロイ波)が軌道上で過不足なくつながって定在波を作るという「量子化条件」を満たす特定の軌道(定常状態)にしか存在できない。

主量子数を nnn ( n=1,2,3,…n = 1, 2, 3, \dotsn=1,2,3,… の自然数)としたとき、それぞれの定常状態にある電子が持つ全エネルギー(運動エネルギーと静電気力による位置エネルギーの和) EnE_nEn​ は、次のような離散的な値として一意に決定される。

En=−E0n2E_n = - \frac{E_0}{n^2}En​=−n2E0​​

ここで E0E_0E0​ は、水素原子の基底状態(最もエネルギーが低い、安定した n=1n = 1n=1 の状態)におけるエネルギーの絶対値を表す、正の一定な定数(リュードベリ・エネルギーに対応する量)である。主量子数 nnn が大きくなるほど、エネルギー準位 EnE_nEn​ は 000 に近づいて高くなっていき、電子は原子核からより離れた外側の軌道を回るようになる。

数馬がモニターで見つめていたのは、この水素原子が光(光子)を吸収して、低いエネルギー準位から高いエネルギー準位へとジャンプする「励起(れいき)」の瞬間であった。 量子力学の基本原理(アインシュタインの光量子仮説およびボーアの頻度条件)によると、光子はそれぞれ振動数 ν\nuν に比例したエネルギー E=hνE = h \nuE=hν を持っている。ここで hhh はプランク定数である。 原子の中の電子が、ある低いエネルギー準位 EiE_iEi​ の状態から、より高いエネルギー準位 EfE_fEf​ の状態へと遷移するとき、そのエネルギーの差分 ΔE=Ef−Ei\Delta E = E_f - E_iΔE=Ef​−Ei​ と完全に一致するエネルギーを持った1個の光子だけを選択的に吸収する。すなわち、以下の関係式が厳密に成立する。

hν=Ef−Ei=(−E0f2)−(−E0i2)=E0(1i2−1f2)h \nu = E_f - E_i = \left( - \frac{E_0}{f^2} \right) - \left( - \frac{E_0}{i^2} \right) = E_0 \left( \frac{1}{i^2} - \frac{1}{f^2} \right)hν=Ef​−Ei​=(−f2E0​​)−(−i2E0​​)=E0​(i21​−f21​)

数馬の観測台帳には、今回のターゲットである水素原子の特定の遷移データが記されていた。 「星雲内の水素原子の電子は、最初、下から2番目にエネルギーが低い状態、すなわち主量子数が i=2i = 2i=2 の定常状態に置かれていた。そこに赫耀からの光波が差し込んだ瞬間、電子は特定の振動数 ν1\nu_1ν1​ の光子を1個だけ吸収し、主量子数が f=4f = 4f=4 の高い定常状態へと瞬時に遷移した」

数馬は、この吸光現象によって分光器のスクリーン上に刻まれた、マゼンタ色の領域に浮かぶ一本の明瞭な吸収線を見つめた。 彼は、この遷移を引き起こした光子のエネルギー Ephoton=hν1E_{\mathrm{photon}} = h \nu_1Ephoton​=hν1​ が、基底状態のエネルギーの基準値である E0E_0E0​ の何倍の大きさにあたるのか、という点に知的な興味を抱いた。彼は、光子のエネルギーと定数 E0E_0E0​ の比を表す無次元量 X=hν1E0X = \frac{h \nu_1}{E_0}X=E0​hν1​​ を定義し、手元に揃った純粋な量子数の組み合わせから、その値を正確に導き出そうとした。

ドームの隙間から吹き込む夜風が、天体望遠鏡の巨体を静かに揺らしている。数馬は暗がりのなかで鉛筆を走らせ、ミクロな原子の内部で起きた電子の跳躍と、遥か何光年もの空間を旅してきた光子との間で交わされた、冷徹なエネルギーの対話をノートの上に確固たる数理として描き出していった。

さて、ここで問題である。主量子数 i=2i = 2i=2 の状態にある水素原子の電子が、1個の光子を吸収して主量子数 f=4f = 4f=4 の状態へと遷移した。このとき、吸収された光子のエネルギー hν1h \nu_1hν1​ と、定数 E0E_0E0​ の比を表す無次元量 X=hν1E0X = \frac{h \nu_1}{E_0}X=E0​hν1​​ を求めよ。ただし、求めるべき解答は、この無次元量 XXX の値をそのまま答えるのではなく、後述の【入力形式】に従って算出される純粋な自然数である。文章中に提示されたすべての量子論的な前提条件を正しく整理し、一意に定まる正解を導き出せ。

制約

  • 基底状態における水素原子のエネルギー定数:E0=2.18×10−18 JE_0 = 2.18 \times 10^{-18} \, \mathrm{J}E0​=2.18×10−18J
  • プランク定数:h=6.63×10−34 J⋅sh = 6.63 \times 10^{-34} \, \mathrm{J \cdot s}h=6.63×10−34J⋅s
  • 電子の初期の主量子数:i=2i = 2i=2
  • 電子の遷移後の主量子数:f=4f = 4f=4

入力形式

計算によって得られた、光子エネルギーの比率を表す無次元比 X=hν1E0X = \frac{h \nu_1}{E_0}X=E0​hν1​​ は既約分数 pq\frac{p}{q}qp​ ( p,qp, qp,q は互いに素な自然数)として表すことができる。 このとき、値 W=p×q×16000W = p \times q \times 16000W=p×q×16000 を計算し、得られる1000以上100万未満の自然数を答えよ。

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