GWCA003 問題6
Problem Statement
高密度空間における相対論的超音速追跡と時空固有時パズル
問題文
大気が極限まで圧縮され、音速が vs=6.40×104 m/s (秒速64km)に達している仮想的な超高密度宇宙空間(大気静止座標系 S)を考える。この空間における光速は音速のちょうど1万倍(マッハ10000)であり、 c=6.40×108 m/s (秒速64万km)である。この空間における特殊相対性理論の数理形式は、通常の物理学の定義(ローレンツ因子 γ、およびローレンツ変換)がそのまま適用されるものとする。
大気静止系 S の x 軸上において、ある「静止した標的」が位置 x=X0 (ただし X0>0)に設置されている。
時刻 t=0 の瞬間、原点 x=0 から x 軸の正の向きに向けて、爆発に伴う強烈な平面衝撃波(爆風の壁)が伝播し始めた。この衝撃波の進播速度は音速を遥かに超えており、大気静止系 S において速度 us=3.00×108 m/s (マッハ4687.5)の等速直線運動を行う。すなわち、 t≥0 における衝撃波前面の位置は xshock(t)=ust と表される。
この衝撃波の発生から十分に時間が経過した未来の時刻 t=T0 (ただし T0>0)の瞬間、原点 x=0 から、大気静止系 S に対して x 軸の正の向きに速度 u=5.00×108 m/s (光速の約78.1%、マッハ7812.5)で等速直線運動を開始した特殊宇宙船がある。この宇宙船の静止座標系を S′ とし、宇宙船の時計(系 S′ の固有時)は、出発の瞬間を t′=0 とする。
宇宙船は、前方を突き進む衝撃波(マッハ4687.5)を後ろからさらに上回る凄まじい速度(マッハ7812.5)で等速追跡し、やがて追い抜いていく。さらに宇宙船はそのまま直進し、位置 x=X0 にある静止標的へと突入する。
大気静止系 S において、宇宙船が前方の衝撃波の前面に「後ろから完全に追いついた」瞬間をイベントA、宇宙船が位置 x=X0 の「静止標的に突入した」瞬間をイベントBとする。
宇宙船の出発時刻 T0 および標的の位置 X0 は、宇宙船内の観測者が、「宇宙船が出発してから、衝撃波に追いつくまでに要した船内時間(イベントAの t′ )」と、「衝撃波に追いついてから、標的に突入するまでに要した船内時間(イベントBの t′ とイベントAの t′ の差)」が完全に等しくなるように精密に調整されている。
この物理条件が未来の正の時間軸上で完全に成立しているとき、大気静止系 S における2つの定数の比 usT0X0 の値を求めよ。
制約
- 衝撃波の速度(系 S にて): us=3.00×108 m/s
- 光速(系 S にて): c=6.40×108 m/s
- 宇宙船の速度(系 S に対する): u=5.00×108 m/s
- 宇宙船の出発時空点(系 S にて): t=T0>0 、 x=0
- 宇宙船の出発時計(系 S′ にて): t′=0
- すべてのイベント(出発、衝撃波への追いつき、標的突入)は、大気静止系 S および船内固有時 t′ のいずれにおいても、未来の正の時間( t>T0,t′>0 )において物理的に発生するものとする。
入力形式
求める比 usT0X0 の値(無次元量)は、近似や四捨五入を一切行うことなく、厳密な整数となる。その整数値を答えよ。
Solution
解説
1. 宇宙船のローレンツ因子 γ の決定
大気静止系 S に対する宇宙船の速度は u=5.00×108 m/s 、光速は c=6.40×108 m/s です。宇宙船内の時計(固有時 t′ )と、大気静止系での経過時間( Δt=t−T0 )の間には、以下のローレンツ因子 γ による時間の遅れが成立します。 γ=1−(cu)21
この γ の値は、後述する比の計算において分子分母で完全に相殺されるため、具体的な数値を展開する必要はありません。
2. 大気静止系 S における各イベントの時空座標の定式化
宇宙船は t=T0 に x=0 を出発するため、その後の宇宙船の軌跡は次のように表されます。 xship(t)=u(t−T0)(t≥T0)
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イベントA(衝撃波への追いつき): t=0 に原点を出発した衝撃波 x=ust に、後ろから宇宙船が追いつく大気静止系での時刻を tA とします。 ustA=u(tA−T0)⟹(u−us)tA=uT0⟹tA=u−usuT0 設定された速度は u=5.00×108>us=3.00×108 であるため、 u−us>0 となり、 tA>T0>0 です。これにより、未来の正の時間軸上で確実に追いつくという物理的整合性が完全に満たされます。 このときの位置は次のようになります。 xA=ustA=u−usuusT0
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イベントB(標的への突入): 宇宙船が x=X0 に静止している標的に突入する大気静止系での時刻を tB とします。 X0=u(tB−T0)⟹tB=T0+uX0 このときの位置は当然、次の通りです。 xB=X0
3. 宇宙船静止系 S′ への時空ローレンツ変換
宇宙船は t=T0,x=0 を固有時の原点 t′=0 としているため、大気静止系 S の時空座標 (t,x) から宇宙船内の固有時 t′ へのローレンツ変換のシフト式は以下のようになります。 t′=γ((t−T0)−c2ux)
この変換式を用いて、船内で観測される2つの固有時( tA′ および tB′ )を導出します。
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固有時 tA′ (出発から衝撃波に追いつくまでの船内時間): tA′=γ((tA−T0)−c2uxA) ここで、 tA−T0=u−usuT0−T0=u−ususT0 です。これと xA の値を代入します。 tA′=γ(u−ususT0−c2uu−usuusT0)=u−usγusT0(1−c2u2) ここで 1−c2u2=γ21 であるため、式は次のように整理されます。 tA′=u−usγusT0⋅γ21=γ(u−us)usT0
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固有時 tB′ (標的に突入した瞬間の船内時間): tB′=γ((tB−T0)−c2uxB)=γ(uX0−c2uX0)=γX0(u1−c2u)=uγX0(1−c2u2) 同様に 1−c2u2=γ21 を代入します。 tB′=uγX0⋅γ21=γuX0
4. 船内時間の一致条件から物理定数の比を分解する
問題文の指定条件は、「出発から衝撃波に追いつくまでの船内時間( tA′ )」と、「衝撃波に追いついてから標的に突入するまでの船内時間( tB′−tA′ )」が等しくなる、すなわち次の関係式が成り立つことです。 tA′=tB′−tA′⟹tB′=2tA′
上で導出した固有時の具体的な式をこの条件式に代入します。 γuX0=2⋅γ(u−us)usT0
両辺から共通の因数である γ が完全に相殺されます。 uX0=u−us2usT0
求めたい大気静止系における比の形 usT0X0 になるように、両辺に usT0u を掛けます。 usT0X0=u−us2u
5. 定数の代入による厳密な整数解の算出
問題で設定された、物理的に正しく交差する一意の速度設定( u=5.00×108 m/s 、 us=3.00×108 m/s )を代入します。 usT0X0=(5.00×108)−(3.00×108)2×(5.00×108)=2.00×10810.00×108=210=5
一切の近似や四捨五入を行うことなく、時空の因果律とローレンツ収縮が完璧に噛み合い、ジャスト「5」という美しい整数が導き出されます。
解答:5