GWCA003 問題3
Problem Statement
拡張された物理定数をもつ世界における負の質量粒子の鉛直相対論的運動
問題文
光速 c が極端に遅く、かつ負の質量をもつ物質が安定して存在する仮想的な物理空間を考える。この空間における万有引力の法則、運動方程式、特殊相対性理論に基づくローレンツ因子 γ、および相対論的運動量の定義式は、質量の符号(正負)に関わらず、通常の物理学の数理形式がそのまま適用されるものとする。
この世界にある、質量 M、半径 R の一様な球形をした孤立惑星を考える。この惑星の地表面近傍における鉛直上向きを z 軸の正の向きとし、地表面を z=0 と定義する。惑星の地表面近傍における重力加速度の大きさ g は、万有引力定数 G、惑星の質量 M、および半径 R を用いて g=R2GM と表される。
いま、この惑星の地表面( z=0 )から、負の質量 m ( m<0 )と正の電荷 q を持つ粒子 N を、時刻 t=0 に鉛直上向き( z 軸の正の向き)へ初速度 v0 で打ち出した。同時に、地表面近傍の全域には、鉛直上向き( z 軸の正の向き)に強さ E の一様な電場が印加されている。
粒子 N が運動する際、惑星から受ける万有引力、および一様な電場から受ける静電気力の双方が、粒子の運動に影響を与える。ただし、粒子 N の運動によって生じる磁場や電磁波の放射、および大気による抵抗などの影響はすべて無視できるものとする。
粒子 N は打ち出された後、鉛直上向きに運動しながら減速し、ある最高点 z=h に達した瞬間にその速度が一時的に 0 となった。この最高点 h の値を求めよ。
制約
- 万有引力定数: G=7.00×10−11 N⋅m2/kg2
- 光速: c=8.00×107 m/s
- 惑星の質量: M=9.00×1022 kg
- 惑星の半径: R=1.00×106 m
- 粒子の初速度: v0=4.80×107 m/s
- 粒子の質量: m=−2.00×10−30 kg
- 粒子の電荷: q=1.60×10−19 C
- 印加電場の強さ: E=7.125×10−11 N/C
入力形式
求める最高点 h の値は、整数 A0,B0 を用いて h=B0A0×1014 m と表すことができる。ただし、 B0A0 は互いに素な既約分数であるとする。このとき、分子と分母の和 A0+B0 の値を自然数で答えよ。
Solution
解説
地表面重力加速度 g の決定
惑星の諸元から、地表面近傍における重力加速度の大きさ g を計算します。
g=R2GM=(1.00×106 m)2(7.00×10−11 N⋅m2/kg2)×(9.00×1022 kg)=1.00×10126.30×1012=6.30 m/s2
粒子に働く力と運動量・加速度の関係
鉛直上向きを z 軸の正の向きとし、粒子 N に働く外力を精査します。
-
重力(万有引力): 通常の正の質量をもつ物体が受ける重力は下向き( −mgz^ )ですが、本粒子は質量が m<0 であるため、
Fgrav=m(−g)=−mg>0
となり、重力は z 軸の正の向き(上向きの斥力)に働きます。
-
静電気力: 電場は鉛直上向き( Ez^ )に印加されており、粒子の電荷は q>0 であるため、受ける静電気力も z 軸の正の向き(上向き)になります。
Felec=qE>0
したがって、粒子 N に働く z 軸方向の一様な合力 F は、上向きを正として次のようになります。
F=−mg+qE
各数値を代入すると、
−mg=−(−2.00×10−30 kg)×6.30 m/s2=1.26×10−29 N
qE=(1.60×10−19 C)×(7.125×10−11 N/C)=1.14×10−29 N
F=1.26×10−29+1.14×10−29=2.40×10−29 N>0
合力 F は正(上向き)です。
ここで、相対論的運動量は p=γmv で定義されます。粒子は上向きに運動( v>0 )しているため、質量 m<0 を持つこの粒子の運動量は**下向き( p<0 )**になります。 運動方程式 dtdp=F より、上向きの力 F>0 を受け続けることで、負の運動量 p<0 は時間の経過とともに増加して 0 に近づきます。運動量 p が 0 に向かうことは、上向きの速度 v が減少することを意味するため、粒子は正しく減速して最高点( v=0⟹p=0 )に到達します。
相対論的エネルギー保存則の適用
一様な力 F が作用する場を運動する粒子の、位置 z と速度 v に関する相対論的エネルギー保存則は次のように表されます。
γmc2−Fz=一定
初期状態( z=0,v=v0 )での全エネルギー:
Einit=γ0mc2=1−(cv0)2mc2
最高点状態( z=h,v=0 )での全エネルギー(最高点では γ=1 ):
Efinal=mc2−Fh
エネルギー保存則 Einit=Efinal より、
1−(cv0)2mc2=mc2−Fh
これを最高点 h について解きます。
Fh=mc2(1−1−(cv0)21)
h=Fmc2(1−1−(cv0)21)
各項の数値計算
-
速度比 β とローレンツ因子
β=cv0=8.00×107 m/s4.80×107 m/s=0.60=53
1−β2=1−0.36=0.80=54
したがって、カッコ内の値は次のようになります。
1−1−β21=1−45=−41
-
分子の mc2
mc2=(−2.00×10−30 kg)×(8.00×107 m/s)2=−1.28×10−14 J
最高点 h の算出
求めた値を高さの式に代入します。
h=2.40×10−29 N−1.28×10−14 J×(−41)=2.40×10−290.32×10−14=2.400.32×1015=304×1015 m=34×1014 m
負の質量がもつ負の静止エネルギー mc2 に対し、位置エネルギーによる仕事が加わることで全エネルギーが静止状態の値へ向かって増加し、 h>0 の位置で静止するという運動が、数理的・物理的矛盾なく完全に成立します。
自然数化
得られた分数 34 は、分子 A0=4、分母 B0=3 であり、これらは互いに素な関係を満たしています。 指定された分子と分母の和を計算します。
A0+B0=4+3=7
解答:7