GWCA003 問題1
Problem Statement
光速が極端に遅い世界における特急列車のウラシマ効果と運動量輸送
問題文
光速 c が極端に遅い世界を考える。この世界では、静止している観測者から見て速度 v で運動する物体の時間の進み方が、静止系の時間に対して 1−(cv)2 倍になるという特殊相対性理論の効果が日常的に観測される。
ある直線軌道上を、静止系に対して一定の速度 v で走り続ける全長 L (固有長)の特急列車がある。列車の先頭(進行方向の前方)を点 A、最後尾を点 B とする。この列車の内部には、列車に対して静止した一様な「情報の伝播媒体」が満ちており、列車内の時計はすべて同期されている。
いま、列車の最後尾 B にある光源から、列車の先頭 A に向けて、列車内の媒体に対して速度 c で進む光パルスを放射した。この光パルスが B を出発した瞬間、列車内の時計が示す時刻を t1′=0 とし、光パルスが先頭 A に到達した瞬間に列車内の時計が示す時刻を t2′ とする。
一方、線路脇の地面に静止している観測者(静止系)は、この現象をすべて観測している。静止系の観測者から見て、光パルスが B を出発した瞬間の静止系時計の時刻を t1=0 とし、光パルスが A に到達した瞬間の静止系時計の時刻を t2 とする。また、静止系から見た列車の速度 v と光速 c の比を β=cv と定義する。
光パルスが B から A に到達するまでの間に、列車の時計が刻んだ時間(列車系での経過時間) Δt′=t2′−t1′ と、地面の時計が刻んだ時間(静止系での経過時間) Δt=t2−t1 を考える。この2つの経過時間の比 Δt′Δt を β を用いて表せ。
制約
- L=2.40×108 m
- c=8.00×107 m/s (時速 288,000,000 km/h に相当)
- v=4.80×107 m/s
入力形式
時間比 Δt′Δt の値は、ある既約分数 qp を用いて qp と表すことができる。このときの分子と分母の和 p+q の値を自然数で答えよ。
Solution
解説
相対論的効果の整理
列車系(列車と共に動く座標系)と、静止系(地面に固定された座標系)の2つの慣性系を考えます。 列車系において、列車は静止しており、その全長は固有長 L です。 一方、静止系から見ると、列車は速度 v で運動しているため、ローレンツ収縮により列車の長さは L1−β2 に縮んで見えます。
列車系での思考
列車系において、光パルスは速度 c で走り、距離 L 離れた先頭 A に向かいます。列車系では列車自体が静止しているため、光パルスが到達するのにかかる時間 Δt′ は単純に次のようになります。
Δt′=cL静止系での思考
静止系からこの現象を観測します。時刻 t1=0 に最後尾 B から放たれた光パルスは、速度 c で進みます。しかし、ターゲットである先頭 A もまた速度 v で前方に逃げています。 静止系における時刻 t1=0 での先頭 A の位置を基準( x=0 )とすると、ローレンツ収縮により最後尾 B の位置は x=−L1−β2 です。 光パルスはここから速度 c で追いかけます。
時刻 t2 において光パルスが先頭 A に追いついたとすると、それぞれの移動距離の関係から次の式が成り立ちます。
ct2=L1−β2+vt2これを t2 (すなわち静止系での経過時間 Δt )について解きます。
(c−v)Δt=L1−β2 Δt=c−vL1−β2=c(1−β)L1−β2時間比の計算
求めたい時間の比 Δt′Δt を計算します。
Δt′Δt=cLc(1−β)L1−β2=1−β1−β2ルートの中に入れて整理します。 1−β2=(1−β)(1+β) であることを利用すると、次のように変形できます。
Δt′Δt=(1−β)21−β2=(1−β)2(1−β)(1+β)=1−β1+βこれが求める比の一般式です。
数値の代入
制約より、 β の値を求めます。
β=cv=8.00×1074.80×107=0.60=53この値を式に代入します。
1−β1+β=1−531+53=5258=28=14したがって、時間比は 14 となり、既約分数 qp は 14 です。 (なお、このとき Δt′Δt=2 となり、列車の中の1秒が外の世界の2秒に相当する強力なウラシマ効果が確認できます)
分子 p=4、分母 q=1 より、求める自然数は次の通りです。
p+q=4+1=5解答:5