GWCA002 問題4
Problem Statement
3次元等方的な調和振動子における摂動と縮退エネルギー準位の1次分裂
問題文
質量 m、角振動数 ω をもつ3次元等方的な調和振動子ポテンシャルの中に閉じ込められた粒子を考える。無摂動ハミルトニアン H0 は以下のように表される。
H0=−2mℏ2∇2+21mω2(x2+y2+z2)この系において、第1励起状態のエネルギー固有値は E1(0)=25ℏω であり、3重に縮退している。
この系に、空間的な異方性を導入する微小な摂動ポテンシャル H′ を加える。
H′=λmω2(xy+yz+zx)ここで、 λ は無次元の正の微小パラメータ( λ≪1 )である。
この摂動 H′ によって、3重に縮退していた第1励起状態のエネルギー準位はいくつかの異なるエネルギー準位に分裂する。1次の微摂動論(退化のある摂動論)を適用したとき、分裂した準位の中で最も高いエネルギー準位と最も低いエネルギー準位の差(最大の分裂幅)を ΔE とする。
この最大分裂幅 ΔE は、摂動のエネルギー尺度 λℏω を用いて、次のように表される。
ΔE=C⋅λℏωここで、C は無次元の定数である。
制約
- 特になし(物理定数および設定された文字のまま計算を行う)
入力形式
定数 C の値を計算し、それを分子と分母が互いに素な正の整数である既約分数 qp の形で表せ。 このとき、分数から得られる値 p と q を用いて、次の数式:
N=p3+q2+100から算出される自然数 N の値を求めよ。
Solution
解説
無摂動系の第1励起状態の基底ベクトル
3次元等方的調和振動子の無摂動ハミルトニアン H0 は、 x,y,z の各方向の1次元調和振動子の和に分離できます。 固有状態は、各方向の量子数 (nx,ny,nz) を用いて ∣nx,ny,nz⟩ と表されます。 第1励起状態(エネルギー E1(0)=25ℏω )は、全量子数の和が nx+ny+nz=1 を満たす状態であるため、次の3つの固有状態が対応し、3重に縮退しています。
∣1⟩=∣1,0,0⟩,∣2⟩=∣0,1,0⟩,∣3⟩=∣0,0,1⟩生成・消滅演算子による摂動項の書き換え
1次元調和振動子の位置演算子 x は、消滅演算子 ax と生成演算子 ax† を用いて次のように表されます。
x=2mωℏ(ax+ax†)y,z についても同様です。したがって、摂動項に含まれる各積の演算子は次のようになります。
xy=2mωℏ(ax+ax†)(ay+ay†)これより、摂動ポテンシャル H′ は以下のように書き換えることができます。
H′=21λℏω[(ax+ax†)(ay+ay†)+(ay+ay†)(az+az†)+(az+az†)(ax+ax†)]摂動行列要素の計算
3つの縮退状態の基底空間における、摂動ハミルトニアンの行列要素を計算します。 1次元調和振動子の消滅・生成演算子の性質として、状態を1つ変化させる演算が行われます。
対角要素について考えます。たとえば ∣1⟩=∣1,0,0⟩ で摂動ポテンシャルを挟んだ行列要素を評価します。摂動項 xy,yz,zx のいずれの項も、各方向の量子数を必ず1だけ変化させるため、元の状態と同じ状態との内積をとるとすべて 0 になります。 したがって、対角成分はすべて 0 です。
⟨1∣H′∣1⟩=0,⟨2∣H′∣2⟩=0,⟨3∣H′∣3⟩=0非対角要素について考えます。たとえば ∣1⟩=∣1,0,0⟩ と ∣2⟩=∣0,1,0⟩ の間の行列要素を計算します。 この遷移に寄与するのは xy を含む項のみです。
(ax+ax†)(ay+ay†)∣0,1,0⟩を展開したとき、 ∣1,0,0⟩ に変化して内積が残る成分は、 x 方向の量子数を1増やし、 y 方向の量子数を1減らす ax†ay の項だけです。調和振動子の公式より、次の関係が成り立ちます。
ax†∣0⟩=∣1⟩,ay∣1⟩=∣0⟩これより、この演算の係数は 1 となり、行列要素の非対角成分は次のようになります。
⟨1∣H′∣2⟩=21λℏω対称性により、すべての非対角成分はこれと同じ値になります。
永年方程式の構築と固有値の算出
縮退空間における1次の摂動行列は、 ϵ=21λℏω と置くと、次のように表されます。
0ϵϵϵ0ϵϵϵ0この行列の固有値 E(1) を求めるため、次の永年方程式を解きます。
−E(1)ϵϵϵ−E(1)ϵϵϵ−E(1)=0この行列式を展開して因数分解を行うと、次の方程式が得られます。
(E(1)+ϵ)2(E(1)−2ϵ)=0したがって、1次のエネルギー補正(固有値)は次の2つに分裂します。
E(1)=−ϵ(2重に縮退),E(1)=2ϵ(縮退なし)最大分裂幅と定数の決定
分裂した準位の中で、最も高いエネルギー準位は 2ϵ であり、最も低いエネルギー準位は −ϵ です。 したがって、最大の分裂幅 ΔE は次のようになります。
ΔE=2ϵ−(−ϵ)=3ϵここで ϵ=21λℏω を代入します。
ΔE=3⋅(21λℏω)=23λℏω問題文の定義式:
ΔE=C⋅λℏωと照らし合わせることで、無次元の定数 C が以下のように決定されます。
C=23既約分数化と自然数 N の算出
得られた定数 C=23 は、分子 p=3、分母 q=2 の分数であり、これらは互いに素な正の整数(自然数)の条件を満たしています。
指定された入力形式の数式にこれらの値を代入します。
N=p3+q2+100=33+22+100=27+4+100=131求める自然数は 131 です。