GSO010 問題8
Problem Statement
への字フレームを支える磁気サスペンションの限界衝撃速度
問題文
自転車を側面から見た平面内だけを考え、前向きを X 軸正方向、鉛直上向きを Z 軸正方向とする。

上図のように、乗員・サドル・上部フレームのうちサスペンションによって支持される部分を、質量 m の一つの剛体として扱う。剛体の下部には、点 A を頂点とし、点 R と点 F を両端とする左右対称な「への字」形の部分がある。重心 G と点 A は同じ鉛直線上にある。
後輪側では点 R の近くに、前輪側では点 F の近くに、それぞれ同極を向かい合わせた一組のネオジム磁石を取り付ける。各組の上側磁石は上部剛体に、下側磁石は車輪側の下部フレームに固定されている。
後輪側の磁石面に垂直で上向き成分をもつ単位ベクトルを
eR=(a,b)とし、前輪側では
eF=(−a,b)とする。ただし、
a>0,b>0,a2+b2=1である。
磁石面の法線方向は、それぞれ直線 RA、FA と平行である。したがって、上部剛体が受ける磁気反発力も、それぞれ eR、eF の方向に働く。
各磁気ユニットについて、向かい合う磁石面の法線方向の間隔を、それぞれ xR、xF とする。
考える運動範囲では、磁石面は十分に広く、鉛直運動に伴う磁石どうしの接線方向のずれが反発力に及ぼす影響を無視できるものとする。また、磁気力の接線方向成分も無視できるものとする。
前後の磁気ユニットは同一であり、法線方向の間隔が x のとき、上部剛体に及ぼす反発力の大きさは
Fm(x)=x4Cで表されるものとする。ただし、C は正の定数である。
この磁気力に対応する各磁気ユニットの位置エネルギーを
Um(x)=3x3Cとする。
自転車が静止しているとき、前後の磁石間隔はともに x0 であり、上部剛体は並進・回転ともに静止している。
ここで段差から受ける短時間の衝撃を、次のようにモデル化する。衝撃直後から最初に最大圧縮へ達するまで、車輪側の下部フレームの位置は変化しないものとする。上部剛体は静止位置において突然、鉛直下向きの速さ v を得る。衝撃直後の水平方向の速度および角速度はともに 0 である。
装置の形状、二つの磁気ユニットおよび初期条件は鉛直な対称軸について左右対称である。
空気抵抗、機械的摩擦、磁石やフレームの変形によるエネルギー損失、渦電流による制動はすべて無視する。
各磁気ユニットの間隔が xs に達すると安全ストッパーが作動する。
上部剛体に与える鉛直下向きの初速度を徐々に大きくしていったとき、最初の最大圧縮でちょうど
xR=xF=xsとなる初速度を限界衝撃速度 vc とする。
制約
- b=0.800
- x0=0.0500m
- xs=0.0400m
入力形式
無次元量
gx0vc2を既約分数
qpと表す。
p+q を自然数として入力せよ。
Solution
左右対称性と剛体の運動
まず、上部剛体が鉛直方向だけに運動することを確認します。
左右の磁気ユニットは同一であり、初期状態では
xR=xF=x0なので、左右の磁気力の大きさは等しくなります。
その大きさを F とすると、二つの磁気力は
FR=F(a,b),FF=F(−a,b)です。
したがって、水平方向の成分は
aF−aF=0となって互いに打ち消されます。
また、点 R と点 F、および二つの磁気力の作用方向は、重心 G を通る鉛直線について鏡映対称です。
そのため、二つの磁気力が G まわりにつくるモーメントは大きさが等しく、向きが反対になり、合モーメントは 0 です。
重力は重心 G に作用するため、重力の G まわりのモーメントも 0 です。
よって左右対称な状態では、
∑FX=0,∑τG=0が成立します。
衝撃直後の水平方向速度と角速度はともに 0 であり、左右の条件も同一です。したがって、その後も左右対称な運動が保たれ、上部剛体は回転せず、鉛直方向だけに並進します。
人工的な鉛直ガイドを仮定する必要はありません。
鉛直変位と磁石間隔
上部剛体が鉛直下向きに距離 s だけ移動したとします。
磁石面の法線方向を表す単位ベクトルの鉛直成分は b です。
したがって、鉛直変位 s の法線方向成分は bs となり、前後の磁石間隔はいずれも
x=x0−bsとなります。
よって、
s=bx0−xです。
ここでは鉛直運動に伴って磁石どうしに接線方向のずれも生じますが、問題文の条件により、そのずれが磁気力へ及ぼす影響は無視しています。
静止時の力のつりあい
静止時の各磁気ユニットの反発力の大きさを F0 とすると、
F0=x04Cです。
一つの磁気力の鉛直成分は bF0 なので、鉛直方向の力のつりあいより、
2bF0=mgです。
したがって、
2bx04C=mgより、
2C=bmgx04を得ます。
この関係によって、磁石固有の定数 C と剛体の質量 m を最終結果から消去できます。
限界衝撃速度におけるエネルギー保存
初期状態では、
x=x0であり、上部剛体は速さ vc で鉛直下向きに運動しています。
限界条件では、最初の最大圧縮で
x=xsとなり、その瞬間の速度は 0 です。
この瞬間までは安全ストッパーは仕事をしていません。また、問題文で散逸をすべて無視しているため、この区間では力学的エネルギーが保存されます。
二つの磁気ユニットの位置エネルギーの合計は、
UM(x)=3x32Cです。
静止位置を重力による位置エネルギーの基準とします。
磁石間隔が x まで縮んだとき、上部剛体の下降距離は
s=bx0−xなので、重力による位置エネルギーは、
Ug=−bmg(x0−x)です。
したがって、初期状態から最大圧縮状態までのエネルギー保存は、
21mvc2+3x032C=3xs32C−bmg(x0−xs)となります。
静止時のつりあいから得た
2C=bmgx04を代入すると、
21mvc2+3bmgx0=3bxs3mgx04−bmg(x0−xs)です。
無次元比の計算
ここで、
r=xsx0とおきます。
式全体を整理すると、
gx0vc2=b2(3r3+r1−34)を得ます。
制約より、
r=0.04000.0500=45です。
したがって、
3r3+r1−34=192125+54−34=960113となります。
また、
b=0.800=54なので、
gx0vc2=4/52⋅960113=25⋅960113=384113となります。
113 と 384 は互いに素なので、
p=113,q=384です。
したがって、
p+q=497となります。
入力すべき自然数は 497 です。