GSO009 問題9
Problem Statement
拘束を変える熱弾性変態
問題文
1 mol の熱弾性物質を考える。この物質には、分子構造の異なる状態 α,β があり、全体のうち状態 β にある割合を x とする。したがって、
0≤x≤1である。
この物質の温度を T、体積を V とする。熱平衡状態におけるヘルムホルツの自由エネルギーが、
F(T,V,x)=F0(T)+2Ax2−ΔS(T−T0)x+2V0K[V−V0(1+λx)]2で与えられるものとする。ここで、F0(T) は x,V に依存しない関数である。
β の割合 x が増えると、この物質が外力を受けないときに自然にとろうとする体積は V0(1+λx) となる。最後の項は、実際の体積がこの値からずれたことによる弾性エネルギーを表している。
同じ物質からなる2つの試料 H, G を用意し、いずれも同じ温度 T の十分大きな熱浴と接触させる。物質の量は変化せず、表面効果、重力、運動エネルギーは無視できるものとする。また、x は熱平衡に達するまで自由に変化できるものとする。
試料 H は剛体容器に入れ、体積を常に
V=V0に固定する。
一方、試料 G は摩擦のないピストン付き容器に入れる。ピストンの外側には一定の圧力 p が加えられており、試料 G の体積は自由に変化できる。熱平衡では試料の圧力と外圧 p が等しくなるものとする。
試料 H の平衡状態における β の割合を xH、試料 G の平衡状態における β の割合を xG とする。
必要なら、温度と体積を一定に保つ系ではヘルムホルツの自由エネルギー F が平衡状態で最小となり、温度と圧力を一定に保つ系ではギブスの自由エネルギー
G=F+pVが平衡状態で最小となることを用いてよい。
数値条件のもとで xH,xG がともに 0<x<1 の範囲にあることを確認したうえで、
xGxH=baを既約分数で表せ。
制約
- T0=300K
- T=380K
- A=1.20×103J
- ΔS=10.0J/K
- K=2.00×108Pa
- V0=1.00×10−5m3
- λ=0.200
- p=5.00×107Pa
入力形式
xGxH=ba を既約分数で表したとき、互いに素な自然数 a,b に対して a+b を入力する。
Solution
試料 H:体積を固定した場合
試料 H では温度 T と体積 V=V0 が一定です。
したがって、平衡状態ではヘルムホルツの自由エネルギー F が、自由に変化できる変数 x に関して最小になります。
V=V0 を与えられた式に代入すると、
F(T,V0,x)=F0(T)+2Ax2−ΔS(T−T0)x+2V0K[V0−V0(1+λx)]2です。
ここで、
V0−V0(1+λx)=−λV0xなので、
F(T,V0,x)=F0(T)+2A+KV0λ2x2−ΔS(T−T0)xとなります。
平衡状態では、
∂x∂F=0であるため、
(A+KV0λ2)xH−ΔS(T−T0)=0です。
したがって、
xH=A+KV0λ2ΔS(T−T0)となります。
数値を代入すると、
ΔS(T−T0)=10.0(380−300)=800Jであり、
KV0λ2=(2.00×108)(1.00×10−5)(0.200)2=80.0Jです。
よって、
xH=1200+80800=85となります。
これは、
0<xH<1を満たします。
また、
∂x2∂2F=A+KV0λ2>0なので、この平衡状態は確かに自由エネルギーの最小値を与えます。
試料 G:圧力を固定した場合
試料 G では温度 T と外圧 p が一定であり、V と x の両方が自由に変化できます。
したがって、
G(T,V,x)=F(T,V,x)+pVを考え、平衡状態では自由に変化できる V,x の両方について、
∂V∂G=0,∂x∂G=0が成り立ちます。
まず、V について微分します。
∂V∂G=V0K[V−V0(1+λx)]+pなので、
V0K[V−V0(1+λx)]+p=0です。
したがって、
V−V0(1+λx)=−KpV0(1)を得ます。
これは、物質内部の弾性的な圧力と外圧 p がつり合う機械的平衡条件に対応しています。
次に、x について微分します。
pV は x に直接依存しないので、
∂x∂G=∂x∂Fです。
与えられた F から、
∂x∂G=Ax−ΔS(T−T0)−Kλ[V−V0(1+λx)]となります。
平衡条件より、
AxG−ΔS(T−T0)−Kλ[V−V0(1+λxG)]=0です。
ここへ式 (1) を代入すると、
AxG−ΔS(T−T0)+pV0λ=0となります。
したがって、
xG=AΔS(T−T0)−pV0λです。
ここで、
pV0λ=(5.00×107)(1.00×10−5)(0.200)=100Jなので、
xG=1200800−100=127となります。
これも、
0<xG<1を満たします。
平衡状態が最小値であることの確認
試料 G では V,x の2変数が自由に変化するため、停留条件だけでなく、その点がギブスの自由エネルギーの最小値であることも確認します。
G の2階微分は、
∂V2∂2G=V0K>0 ∂x2∂2G=A+KV0λ2 ∂V∂x∂2G=−Kλです。
したがって、2階微分からなる行列の行列式は、
V0K(A+KV0λ2)−K2λ2=V0KA>0となります。
さらに、
∂V2∂2G>0なので、この停留点では G は確かに最小となります。
試料 G の体積の確認
式 (1) より、
V=V0(1+λxG−Kp)です。
xG=7/12 を代入すると、
V=V0(1+607−41)=1513V0となり、正の体積が得られます。
したがって、求めた平衡状態は物理的にも問題ありません。
2つの拘束条件の比較
以上より、
xH=85 xG=127です。
したがって、
xGxH=7/125/8=85⋅712=1415となります。
よって、
a=15,b=14であり、入力すべき自然数は、
29です。