GSO009 問題6
Problem Statement
深宇宙分光器が残した5個の光子
問題文
深宇宙探査機が、非常に希薄な水素ガスから生じる発光を観測している。
探査機の分光器は、1個の水素原子から短い時間間隔で続けて放出された光子を同一の「発光イベント」として識別し、それぞれが何番目に放出された光子であるかを記録できる。
ある発光イベントでは、1個の水素原子が主量子数 n=9 の定常状態から出発し、より低いエネルギー準位への遷移を繰り返した後、基底状態 n=1 に到達した。この間に放出された光子は、ちょうど5個であった。
5個の光子を放出された順に光子1、光子2、…、光子5とする。
観測装置には、通常の分光器とは別に、スペクトル系列を識別するためのフィルターが搭載されている。このフィルターでは、遷移後の主量子数が n=5 であるスペクトル線を「プント系列」として識別する。
観測記録を調べたところ、次のことが分かった。
- 光子1の波長は 11.31μm であった。
- 光子2については波長データが失われていたが、系列識別フィルターによりプント系列であることだけは分かった。
- 光子3については波長データも系列データも失われていた。
- 光子4の波長は 656.3nm であった。
- 光子5については波長データが失われていた。
- 各光子が放出されるたびに、水素原子は放出前より小さい主量子数の定常状態へ遷移した。
- この発光イベント中、水素原子のエネルギー変化は光子の放出だけによって生じた。
以上の情報から、水素原子が n=9 から n=1 に到達するまでにたどったエネルギー準位を特定せよ。
さらに、5個の光子のうち、エネルギーが最大の光子のエネルギーを Emax、エネルギーが最小の光子のエネルギーを Emin とする。
比
EminEmaxを求めよ。
制約
- 水素原子のリュードベリ定数: R=1.097×107m−1
- 必要に応じて、光子のエネルギーと波長の関係 E=hc/λ を用いてよい。
- 観測された波長については、表示された桁の範囲でリュードベリの式による計算結果と一致するものとする。
- 主量子数は自然数である。
- 導出の途中では観測波長を丸めてエネルギー比を計算せず、エネルギー準位間の関係を用いるものとする。
入力形式
EminEmax=qpと既約分数で表したとき、自然数 p+q を入力せよ。
Solution
光子1から最初の遷移を特定する
水素原子は最初に n=9 の状態にあります。
水素原子のスペクトルについて、リュードベリの式は
λ1=R(nf21−ni21)と表されます。
ここで ni は遷移前、nf は遷移後の主量子数であり、
ni>nfです。
光子1については ni=9 です。
nf=7 とすると、
λ11=R(721−921)=R(491−811)=R396932となります。
したがって、
λ1=32R3969です。
数値を代入すると、
λ1≈1.131×10−5m=11.31μmとなり、観測結果と一致します。
よって、光子1は
9→7の遷移によって放出されたと分かります。
光子2の系列情報を使う
光子1の放出後、水素原子は n=7 にあります。
光子2はプント系列であることが分かっています。
問題文より、プント系列とは遷移後の主量子数が n=5 である系列です。
したがって、光子2に対応する遷移は
7→5です。
ここまでで、
9→7→5と決まります。
光子4から後半の遷移を特定する
次に、波長 656.3nm の光子4を考えます。
リュードベリの式において、
ni=3,nf=2とすると、
λ41=R(221−321)=R(41−91)=R365です。
よって、
λ4=5R36≈6.563×10−7m=656.3nmとなり、観測結果と一致します。
したがって、光子4は
3→2の遷移によって放出されています。
5個すべての遷移を復元する
ここまでで、
- 光子1:9→7
- 光子2:7→5
- 光子4:3→2
と分かりました。
光子は全部で5個なので、水素原子は5回の遷移によって
n=9から
n=1へ到達しています。
光子2を放出した直後は n=5、光子4を放出する直前は n=3 です。
その間に放出されるのは光子3だけなので、光子3は必ず
5→3の遷移です。
また、光子4の放出後は n=2 であり、残っている光子は光子5だけです。
したがって、
2→1が光子5の遷移です。
よって、全体の遷移は
9→7→5→3→2→1と一意に決まります。
5個の光子は順に、
9→7,7→5,5→3,3→2,2→1の遷移によって放出されています。
最大・最小の光子エネルギーを調べる
光子のエネルギーは
E=λhcなので、波長が短いほど光子のエネルギーは大きくなります。
また、リュードベリの式より、遷移 ni→nf で放出される光子のエネルギーは、
E=hcR(nf21−ni21)に比例します。
5つの遷移について、括弧内の値を比較します。
光子1では、
721−921=396932です。
光子2では、
521−721=122524です。
光子3では、
321−521=22516です。
光子4では、
221−321=365です。
光子5では、
1−221=43です。
これらを比較すると、
396932<122524<22516<365<43となります。
したがって、エネルギーが最小なのは光子1、最大なのは光子5です。
エネルギー比を求める
共通する係数 hcR は比を取ると消えるので、
EminEmax=39693243=43×323969=12811907となります。
11907 と 128 は互いに素なので、これは既約分数です。
したがって、
p=11907,q=128より、
p+q=12035です。
入力すべき自然数は 12035 です。