GSO009 問題10
Problem Statement
二重連成振り子の微小振動における固有モードとハミルトニアンの正準対角化
問題文
鉛直下向きに一様な重力加速度 g の重力が作用する空間において、天井の固定点 O から長さ L の質量を無視できる軽い剛体棒を下垂させ、その先端に質量 M の質点1を取り付ける。さらに、質点1から長さ L の別の質量を無視できる軽い剛体棒を下垂させ、その先端に質量 M の質点2を取り付ける。全体は同一の鉛直平面内のみを運動するものとし、各剛体棒の鉛直軸からの傾き角をそれぞれ θ1,θ2 とする。運動は各剛体棒の傾きが十分に小さい範囲に限定されるものとする。
この系に対して、固定点 O を原点、水平右向きを x 軸、鉛直下向きを y 軸とする二次元直交座標系を設定する。θi,θ˙i を同程度の微小量とみなし、これらについて3次以上の項を無視する微小振動近似のもとで、系のラグランジアン Llag=T−V を構築し、各角度に対応する正準運動量 pθ1=∂θ˙1∂Llag, pθ2=∂θ˙2∂Llag を定義する。
系のハミルトニアン H(θ1,θ2,pθ1,pθ2) を記述し、ハミルトンの標準方程式から座標の微小振動に関する連立微分方程式を導出する。この系が特定の固有振動数 ω で同期して振動する固有モード(通常振動モード)を仮定したとき、得られる二つの固有振動数を ωA,ωB(ただし ωA<ωB)とする。
このとき、二つの固有振動数の比 R=ωAωB を求めよ。
制約
- M=0.600 kg
- L=1.50 m
- g=9.81 m/s2
入力形式
無次元比 R は、A,B を互いに素な自然数として R=A+B と表される。 自然数の積 A×B の値を求めよ。
Solution
解説
1. 厳密な座標設定と微小近似
各質点の位置座標 (x1,y1),(x2,y2) を剛体棒の傾き角 θ1,θ2 を用いて厳密に表します。
x1=Lsinθ1,y1=Lcosθ1 x2=Lsinθ1+Lsinθ2,y2=Lcosθ1+Lcosθ2これらを時間微分すると、
x˙1=Lθ˙1cosθ1,y˙1=−Lθ˙1sinθ1 x˙2=Lθ˙1cosθ1+Lθ˙2cosθ2 y˙2=−Lθ˙1sinθ1−Lθ˙2sinθ2となります。
2. 運動エネルギーとポテンシャルエネルギー
系の運動エネルギーは、
T=21M(x˙12+y˙12)+21M(x˙22+y˙22)です。
ここで、
x˙12+y˙12=L2θ˙12および、
x˙22+y˙22=L2θ˙12+L2θ˙22+2L2θ˙1θ˙2cos(θ1−θ2)より、
T=21ML2[2θ˙12+θ˙22+2θ˙1θ˙2cos(θ1−θ2)]となります。
微小振動近似では、
cos(θ1−θ2)=1+O(θ2)であり、この補正を θ˙1θ˙2 に掛けた項は4次以上となるため無視できます。したがって、
T≃21ML2(2θ˙12+θ˙22+2θ˙1θ˙2)です。
一方、位置エネルギーは、
V=−Mgy1−Mgy2=−MgL(2cosθ1+cosθ2)です。
cosθ≃1−21θ2 を用い、運動に影響しない定数項を除くと、
V≃21MgL(2θ12+θ22)となります。
3. ラグランジアンと正準運動量
したがって、
Llag=21ML2(2θ˙12+θ˙22+2θ˙1θ˙2)−21MgL(2θ12+θ22)です。
正準運動量は、
pθ1=ML2(2θ˙1+θ˙2) pθ2=ML2(θ˙1+θ˙2)となります。
これを速度について解くと、
θ˙1=ML2pθ1−pθ2 θ˙2=ML2−pθ1+2pθ2です。
4. ハミルトニアン
ハミルトニアン
H=pθ1θ˙1+pθ2θ˙2−Llagを計算すると、
H=2ML21(pθ12−2pθ1pθ2+2pθ22)+21MgL(2θ12+θ22)となります。
5. ハミルトンの標準方程式と固有値問題
ハミルトンの標準方程式
θ˙i=∂pθi∂H,p˙θi=−∂θi∂Hより、
θ˙1=ML2pθ1−pθ2,θ˙2=ML2−pθ1+2pθ2および、
p˙θ1=−2MgLθ1,p˙θ2=−MgLθ2を得ます。
前二式をさらに時間微分すると、
θ¨1=ML2p˙θ1−p˙θ2=−Lg(2θ1−θ2), θ¨2=ML2−p˙θ1+2p˙θ2=L2g(θ1−θ2)となります。
ω02=Lg とおくと、
(θ¨1θ¨2)=−ω02(2−2−12)(θ1θ2)です。
固有モード
θi(t)=Cieiωtを仮定すると、
2ω02−ω2−2ω02−ω022ω02−ω2=0となります。
したがって、
(2ω02−ω2)2−2ω04=0すなわち、
ω4−4ω02ω2+2ω04=0です。
これを解くと、
ω2=(2±2)ω02となるので、
ωA2=(2−2)ω02,ωB2=(2+2)ω02です。
6. 比 R と自然数化
したがって、
R=ωAωB=2−22+2です。
根号内を整理すると、
2−22+2=3+22=3+8なので、
R=3+8です。
よって、
A=3,B=8であり、A と B は互いに素です。
したがって、
A×B=24です。
入力すべき自然数は 24 です。