GSO008 問題10
Problem Statement
ガウス加速器
問題文
半径aの球形永久磁石1個と、同じく半径a、質量mの鉄球1個、真鍮球1個を用意する。真空中の水平面上に直線状のレールを固定し、その上のある位置に永久磁石を固定した。鉄球と真鍮球はレールに沿った方向にのみ運動でき、レールの摩擦や球の回転は無視する。レールに沿ってx軸を設定し、永久磁石の中心位置をx=0とする。次に真鍮球の中心位置をx=2aに置いて永久磁石と接触させた(固定はされていない)。最後に鉄球をx<0の非常に遠方から無視できるほど小さい初速度で永久磁石に向かって入射させると、鉄球は加速されて速さvで永久磁石に衝突し、その衝撃がエネルギー損失なく真鍮球に伝わり、鉄球はx=−2aで静止し、真鍮球が速さvで射出された。速さvを求めよ。
ただし、永久磁石が位置rに作る磁束密度B(r)は、原点に固定された、x軸正の向きを向く磁気モーメントの大きさpの点状双極子pのものと等価とみなせて、
B(r)=4πμ0(∣r∣53(p⋅r)r−∣r∣3p)とする。
また、真鍮球の比透磁率は1とし、鉄球の比透磁率は無限大の極限として扱い、鉄球の磁化はヒステリシスを持たないとする。
ヒント:異なる2物質の境界面では、磁束密度Bの法線成分と磁場Hの接線成分がそれぞれ連続になる。また、任意の閉曲面を貫く磁束密度の全磁束は0である。
制約
特になし。ファイトです!
入力形式
鉄球の中心が位置xにあるときの、鉄球と永久磁石の磁気的な相互作用ポテンシャルエネルギーをU(x)とし、U(−∞)=0とする。
互いに素な自然数M,Nを用いて、
v2=m−2U(−2a)=Nπa3mMμ0p2と表せるので、和M+Nを入力せよ。
Solution
真鍮球は磁気力に関与しないので、永久磁石と鉄球の磁気相互作用のみ考えればよい。鉄球の内外で磁束密度Bの法線成分と磁場Hの接線成分がそれぞれ連続になるため、磁力線が鉄球の内外で法線となす角をそれぞれθ1,θ2、鉄の比透磁率をμr、鉄球の内外での磁場の大きさをH1,H2とすると、
H1sinθ1μrH1cosθ1=H2sinθ2,=H2cosθ2よって、
tanθ1=μrtanθ2となる。
鉄球の比透磁率についてμr→∞の極限を考えるので、tanθ2=0、つまり磁力線は鉄球の表面に垂直に入射するとみなせる。
永久磁石の磁場によって、鉄球は磁力線が鉄球の表面に垂直に入射するという境界条件を満たすように磁化するわけだが、境界条件さえ満たしていれば磁場は一意に決まるため、鉄球の磁化による磁場を仮想的な磁荷や磁気双極子で代替することを考える(鏡像法)。
鉄球の中心がx=−2aのとき(衝突直前)、永久磁石の磁気モーメントを微小距離δだけ離れた単磁荷±qの組として考える。ただし、
p=μ0qδとする。
それぞれの鏡像磁荷のx座標と磁荷をx±,q±とすると、
x+q+x−q−=−2a+2a+δ/2a2∼−2a+2a(1−4aδ),=−2a+δ/2qa∼−2q(1−4aδ),=−2a+2a−δ/2a2∼−2a+2a(1+4aδ),=2a−δ/2qa∼2q(1+4aδ)となる。
これらをまとめると、位置−23aに単磁荷
4aμ0pと、磁気モーメント
8pの鏡像ができる。
ただし、この鏡像系には正味の磁荷4aμ0pが含まれている。実際の磁束密度は任意の閉曲面に対して全磁束が0でなければならないため、鉄球の中心x=−2aに、さらに単磁荷
−4aμ0pを置く必要がある。
鉄球の中心に置いた単磁荷が球面上に作る磁気スカラーポテンシャルは一定であるため、この単磁荷を追加しても、鉄球表面で磁力線が垂直になるという境界条件は変化しない。
永久磁石によるx軸上の磁束密度は、x軸の向きを正として、
B(x)=−2πx3μ0pである。
位置−23aにある鏡像磁荷と鏡像磁気双極子による相互作用ポテンシャルエネルギーは、
U1=−214aμ0p4π(−3a/2)2p−218p(−2π(−3a/2)3μ0p)=−216πa35μ0p2となる。
また、永久磁石が鉄球の中心x=−2aに作る磁気スカラーポテンシャルは、
−16πa2pであるため、鉄球の中心に追加した鏡像磁荷による寄与は、
U2=21(−4aμ0p)(−16πa2p)=128πa3μ0p2となる。
ここで、鏡像磁荷と磁気モーメントは永久磁石の磁場に誘起されて生じたものであるため、相互作用エネルギーには係数21が付くことに注意する。
以上より、
U(−2a)=U1+U2=−216πa35μ0p2+128πa3μ0p2=−3456πa353μ0p2となる。
エネルギー保存則から、
21mv2+U(−2a)=0であるので、
v2=m−2U(−2a)=1728πa3m53μ0p2となる。
したがって、
M=53,N=1728であり、入力すべき値は、
1781である。