Problem Statement
有効質量が跳ぶ階段型ポテンシャルにおける反射率と透過率
問題文
x 軸上を運動する非相対論的な粒子を考える。粒子は半導体ヘテロ界面を通過し、界面を x=0 とする。界面の左側 x<0 では有効質量が mL、ポテンシャルエネルギーが 0 であり、右側 x>0 では有効質量が mR、ポテンシャルエネルギーが V0 である。
この系のハミルトニアンは、位置依存有効質量をもつ一次元量子系として
H^ψ=−2ℏ2dxd(m(x)1dxdψ)+V(x)ψ
で与えられるとする。ただし
m(x)={mLmR(x<0),(x>0),V(x)={0V0(x<0),(x>0).
エネルギー E をもつ定常状態を考え、E>V0 とする。粒子は左側から入射し、左側には入射波と反射波、右側には右向きの透過波だけが存在するものとする。
波動関数を
ψL(x)=AeikLx+Be−ikLx(x<0)
ψR(x)=CeikRx(x>0)
とおく。
このとき、界面で満たすべき境界条件をハミルトニアンから導き、その境界条件を用いて反射率 R と透過率 T を求めよ。
制約
- ℏ=1.054571817×10−34 Js
- mL=1.8218767403×10−31 kg
- mR=9.1093837015×10−32 kg
- E=1.4419589706×10−19 J
- V0=1.1215236438×10−19 J
入力形式
求めた反射率 R と透過率 T をそれぞれ既約分数
R=qp,T=sr
で表す。ただし p,q,r,s は自然数である。
最終的に
p+q+r+s
を入力せよ。
有効質量が不連続なときの注意点
通常の階段型ポテンシャルでは、質量が左右で同じであるため、波動関数 ψ とその微分 ψ′ が連続になると考えます。
しかし、この問題では有効質量 m(x) が界面で不連続です。そのため、単純に ψ′ を連続にしてはいけません。与えられたハミルトニアンは
H^ψ=−2ℏ2dxd(m(x)1dxdψ)+V(x)ψ
という形をしています。これは、確率流が正しく保存されるように設計された有効質量ハミルトニアンです。
境界条件の導出
定常状態のシュレディンガー方程式は
−2ℏ2dxd(m(x)1dxdψ)+V(x)ψ=Eψ
です。
これを x=−ϵ から x=+ϵ まで積分し、ϵ→0 の極限を考えます。ポテンシャル項とエネルギー項は有限なので、積分区間の幅が 0 に近づくと寄与は消えます。残るのは微分項です。
−2ℏ2∫−ϵ+ϵdxd(m(x)1dxdψ)dx→0
したがって
[m(x)1dxdψ]0−0+=0
となり、
mL1ψL′(0)=mR1ψR′(0)
が得られます。
また、波動関数 ψ 自身が不連続だと、微分にデルタ関数的な特異性が生じ、ハミルトニアンの作用が有限な通常のエネルギー固有状態として扱えなくなります。したがって
ψL(0)=ψR(0)
も必要です。
よって境界条件は
ψL(0)=ψR(0),mL1ψL′(0)=mR1ψR′(0)
です。
波数の決定
左側ではポテンシャルが 0 なので
E=2mLℏ2kL2
より
kL=ℏ2mLE
です。
右側ではポテンシャルが V0 なので、運動エネルギーは E−V0 です。したがって
E−V0=2mRℏ2kR2
より
kR=ℏ2mR(E−V0)
です。
振幅反射係数の導出
境界条件に波動関数を代入します。
まず波動関数の連続条件から
A+B=C
を得ます。
次に
ψL′(x)=ikLAeikLx−ikLBe−ikLx
ψR′(x)=ikRCeikRx
なので、修正された微分の連続条件から
mLkL(A−B)=mRkRC
となります。
ここで
α=mLkL,β=mRkR
とおくと、
A+B=C
α(A−B)=βC
です。
C=A+B を代入すると
α(A−B)=β(A+B)
となります。これを整理すると
(α−β)A=(α+β)B
です。
したがって振幅反射係数 r=B/A は
r=AB=α+βα−β
です。
反射率と透過率
反射率は、反射波の確率流を入射波の確率流で割ったものです。左側では入射波と反射波が同じ有効質量、同じ波数をもつため
R=AB2=(α+βα−β)2
です。
一方、透過率は透過波の確率流を入射波の確率流で割る必要があります。有効質量が左右で異なるため、単に ∣C/A∣2 ではありません。
このハミルトニアンに対応する確率流は
j=mℏIm(ψ∗dxdψ)
です。平面波 Deikx に対しては
j=mℏk∣D∣2
となります。
したがって
T=mLℏkL∣A∣2mRℏkR∣C∣2=αβAC2
です。
また
C=A+B
より
AC=1+r=1+α+βα−β=α+β2α
です。
よって
T=αβ(α+β2α)2=(α+β)24αβ
となります。
数値条件の代入
ここで重要なのは、α と β の比だけで反射率と透過率が決まることです。
αβ=kL/mLkR/mR
です。
波数の式を代入すると
αβ=mREmL(E−V0)
となります。
制約より
mL=2mR
であり、また
E−V0=1.4419589706×10−19−1.1215236438×10−19=3.204353268×10−20 J
です。
これは
E−V0=92E
に対応します。したがって
αβ=2⋅92=94=32
です。
つまり
β=32α
です。
これを反射率の式に代入すると
R=(α+32αα−32α)2=(3531)2=(51)2=251
です。
透過率は
T=(α+β)24αβ
なので、
T=(α+32α)24α⋅32α=(35)238=38⋅259=2524
です。
確かに
R+T=251+2524=1
となり、確率流が保存されています。
入力値の計算
求めた反射率と透過率は
R=251,T=2524
です。
したがって
p=1,q=25,r=24,s=25
です。
よって入力すべき自然数は
p+q+r+s=1+25+24+25=75
です。
最終的に入力すべき自然数は
75
です。