GSO004 問題5
Problem Statement
ローラーコースターの安全限界モデル:円筒軌道からの脱出と力学的エネルギー保存
問題文
遊園地のローラーコースターのループ軌道を模した物理モデルを考える。現実のコースターは車輪がレールを挟み込んでいるため軌道から離れることはないが、本問題ではレールの上に乗っているだけの単純な質点モデルとして、安全設計の限界を検証する。
水平な直線軌道と、それに滑らかに接続された半径 R の鉛直な円筒状の軌道がある。軌道はすべて滑らかであり、摩擦は無視できるものとする。重力加速度の大きさを g とする。 水平軌道を含む水平面を高さ y=0 の基準面とし、鉛直上向きを y 軸の正の向きとする。
水平軌道上で、質量 m の質点(コースターの車両)に水平方向の初速度 v0 を与え、円筒状軌道に進入させる。 円筒状軌道は、水平面上の点から始まり最高点(y=2R)を通って再び水平面へと戻るような形状をしているが、ここでは上昇側の軌道のみに注目する。 質点は軌道に沿って上昇していくが、初速度 v0 がある条件を満たす場合、最高点に達する前に軌道から離れて空中に飛び出す。 質点が軌道から離れる瞬間の高さを h とする。 軌道から離れた後、質点は空中を放物運動し、ある最高点に達する。その最高点の基準面からの高さを H とする。
空気抵抗や質点の大きさは無視できるものとして、高さ H を求めよ。
制約
- R=5.0 m
- g=9.8 m/s2
- m=2.0 kg
- v0=14.0 m/s
入力形式
計算結果の H は、既約分数 BA (A,B は互いに素な自然数)を用いて H=BA m と表される。 A×B の値を計算し、その自然数を入力せよ。
Solution
1. 円筒軌道上の運動方程式
質点が高さ y の位置にあるとき、円筒軌道の中心(高さ R)から質点へ向かう動径が鉛直上向きとなす角を θ とします。 このとき、質点の高さは y=R+Rcosθ と表されます。 質点の速さを v、軌道から受ける垂直抗力を N とします。軌道は質点の外側にあるため、垂直抗力 N は円の中心に向かって働きます。重力の中心方向成分は mgcosθ であるため、円の法線方向(中心に向かう方向)の運動方程式は次のようになります。 mRv2=N+mgcosθ
2. 軌道から離れる瞬間の条件
質点が軌道から離れる瞬間、垂直抗力は N=0 となります。 したがって、離れる瞬間の速さ v と角度 θ の間には次の関係が成り立ちます。 mRv2=mgcosθ v2=gRcosθ ここで、cosθ=Rh−R であるため、これを代入します。 v2=g(h−R) 一方、初期状態(水平軌道上)と離れる瞬間の間で力学的エネルギー保存則が成り立ちます。 21mv02=21mv2+mgh これに先ほどの v2 を代入して、離れる高さ h について整理します。 21mv02=21mg(h−R)+mgh 両辺を 2 倍して m で割ると、 v02=g(h−R)+2gh=3gh−gR 3gh=v02+gR h=3gv02+gR これにより、離れる瞬間の高さ h が求まります。
3. 空中での放物運動と最高点の高さ
軌道を離れる瞬間、質点の速度ベクトルは軌道の接線方向を向いています。 動径が鉛直上向きと θ の角をなすため、幾何学的な関係から、速度ベクトル(接線方向)は水平方向と θ の角をなします。 したがって、離れた瞬間の水平方向の速度成分 vx は、次のように表されます。 vx=vcosθ 空中に飛び出した後、質点は水平方向には力を受けないため、水平方向の速度成分は保存されます。すなわち、放物運動の最高点においても、質点は水平方向に速さ vx で運動しています。 全体を通して力学的エネルギーは保存されるため、最初の水平軌道上と放物運動の最高点(高さ H)の間でエネルギー保存則を立てることができます。最高点では鉛直方向の速度成分がゼロになることに注意してください。 21mv02=21mvx2+mgH これより、高さ H は次のように求められます。 H=2gv02−vx2
4. 数値計算
与えられた制約の数値を各文字式に代入していきます。 まず、離れる高さ h を求めます。 h=3×9.814.02+9.8×5.0=29.4196+49=29.4245=325 m 次に、cosθ を求めます。 cosθ=Rh−R=5.0325−5.0=5.0310=32 これを用いて、離れる瞬間の速度の2乗 v2 を計算します。 v2=g(h−R)=9.8×(325−5.0)=9.8×310=398 m2/s2 さらに、最高点での速度の2乗 vx2 を計算します。 vx2=(vcosθ)2=v2cos2θ=398×(32)2=398×94=27392 m2/s2 最後に、これらの値をエネルギー保存の式に代入して、最高点の高さ H を求めます。 H=2×9.814.02−27392=19.6196−27392 式を分割して計算を容易にしましょう。 H=19.6196−27×19.6392=10−2720=27270−20=27250 m
得られた値 H=27250 において、250 と 27 は互いに素な自然数です。 したがって、A=250、B=27 となり、求める入力値は 250×27=6750 となります。