GPO001 問題1
Problem Statement
新米考古学者の焦燥と、竪穴から零れ落ちた太古の輝き(物理文学)
問題文
うっそうと茂る原生林の奥深く、外の世界から切り離されたかのように佇む「鳥啼村(とりなきむら)」の裏山で、大規模な縄文時代の集落跡が発見された。地元の大学の考古学研究室に所属する新米研究員の青年・律(りつ)は、歴史的な大発見に胸を躍らせながら、連日発掘調査に明け暮れていた。
ある日の夕暮れ時、周囲がひぐらしの切ない鳴き声に包まれる中、律は未調査の区画で、垂直に深く掘られた奇妙な古代の竪穴(たてあな)を発見した。それは、かつて集落の住人たちが貴重な貯蔵品を保管するため、あるいは何らかの儀式のために穿ったとされる、非常に大がかりな地下空間の遺構であった。
「……周囲の土壌は非常に安定しており、この竪穴の壁面は崩落の危険がない。内部は完全に垂直な空間であり、木々や岩などの障害物は一切見当たらないな」
律は竪穴の縁に膝をつき、手元のペンライトで暗闇を照らした。しかし、光は穴の深くまで届かず、底がどのようになっているのかを肉眼で確認することはできなかった。 そのとき、彼の不注意によって、胸のポケットに差していた調査用の特殊な金属製のピン(これを物体Pとする)が滑り落ちてしまった。物体Pは、当時の貴重な青銅器の組成を模して作られた、質量 m の均一な小物体であった。
「あ、いけない!」
律が手を伸ばしたときには既に遅く、物体Pは竪穴の最上部、すなわち高さの基準となる位置(位置Aとする)から、静かに下方の暗闇へと落下していった。 律は慌てて手首のストップウォッチを押し、落下が始まった瞬間を時刻 t=0s として記録した。
物体Pは、初速度ゼロの状態から重力だけを受けてまっすぐに落下する「自由落下」の運動を始めた。 この竪穴の内部には風が一切吹いておらず、空気の密度も安定している。また、物体Pは十分に小さく滑らかな形状をしているため、空気から受ける抵抗の影響は、今回の短い落下の間においては完全に無視できるほど小さいことが分かっていた。すなわち、物体Pには下向きの一定な重力(重力加速度の大きさを g とする)だけが作用し、力学的エネルギーが完全に保存される理想的な自由落下運動が実現していた。
シュウッという小さな風切り音をかすかに残しながら、物体Pは鉛直下向きにまっすぐ加速していく。 物体Pが落下を始めてから、ちょうど時間 t1 が経過した瞬間(時刻 t=t1 )、物体Pは竪穴の途中に設けられていた、かつて作業用の足場があったとされる位置(位置Bとする)を通過した。この位置Bを通過する瞬間、物体Pは自由落下によって十分な速さ v1 に達しており、それに応じた大きな運動エネルギーを持っていた。
律は、穴の底から聞こえてくるはずの微かな衝突音を待ちわびながら、頭の中で物体Pが辿った運動の軌跡を数式へと置き換えていた。
「自由落下する物体の運動において、時間と速度、そして運動エネルギーの関係は、物理学の最も基礎的な法則によって美しく縛られている」
律はノートの余白に、時刻 t=t1 において物体Pが持っている速さ v1 の公式を書き下した。初速度がゼロで、一定の重力加速度 g で加速する場合、時間 t1 が経過した瞬間の速さは、以下の式でシンプルに表される。
v1=gt1
また、質量 m の物体が速さ v1 で運動しているとき、その物体が持つ運動エネルギー K1 は、以下の公式によって一意に決定される。
K1=21mv12
律が興味を持ったのは、この位置Bを通過した「運命の瞬間」に、物体Pが獲得していた運動エネルギー K1 の具体的な大きさであった。彼は、手元にある台帳に記載された物体Pの質量、ストップウォッチが刻んだ正確な時間、そしてこの地域の標準的な重力加速度の数値を用いて、太古の竪穴を駆け抜けた物体のエネルギーを厳密に算出しようとした。
森の向こうから冷たい夜風が吹き抜け、古代の遺構を静かに揺らす中、律はペンライトの光を頼りに計算を進めた。数千年の時を超えて現れた暗闇の底へ向かって、冷徹な物理法則に従いながら静かにエネルギーを増していく金属片の軌跡が、彼のノートの上に確固たる数値となって浮かび上がっていった。
さて、ここで問題である。質量 m の物体Pが、最上部の位置Aから初速度ゼロで自由落下を始めた。落下を始めてからちょうど時間 t1 が経過して位置Bを通過した瞬間に、物体Pが持っている運動エネルギーの値 K1 を求めよ。ただし、求めるべき解答は、この運動エネルギー K1 の数値をそのまま答えるのではなく、後述の【入力形式】に従って算出される純粋な自然数である。文章中に提示されたすべての数値を正しく整理し、一意に定まる正解を導き出せ。
制約
- 物体Pの質量:m=4.00×10−1kg
- 落下し始めてから位置Bに達するまでの時間:t1=1.50×100s
- この場所における重力加速度の大きさ:g=9.80×100m/s2
入力形式
計算によって得られた、時刻 t=t1 における物体Pの運動エネルギー K1 の値を、SI単位系( J )で表す。 このとき、値 W=K1×1000 を計算し、得られる自然数を答えよ。
Solution
解説
物理設定の整理と法則の適用
本問題は、初速度ゼロから重力のみを受けて落下する物体の「自由落下」と、その時の「運動エネルギー」に関する問題です。高校物理(難易度2)における最も基本的な2つの公式「自由落下の速度の式」および「運動エネルギーの定義式」を順に適用することで、迷うことなく明快に解を導くことができます。
与えられている物理量は以下の通りです。
- 物体Pの質量: m=0.400kg
- 経過時間: t1=1.50s
- 重力加速度の大きさ: g=9.80m/s2
第1段階:位置Bにおける物体Pの速さ v1 の算出
物体Pは初速度 0m/s で自由落下を始めています。空気抵抗は無視できるため、一定の重力加速度 g で等加速度直線運動をします。 落下を開始してから時間 t1=1.50s が経過した瞬間の物体Pの速さ v1 は、自由落下の速度の公式より以下のように求められます。
v1=gt1
制約欄の数値を代入して計算します。
v1=9.80×1.50=14.7m/s
第2段階:位置Bにおける運動エネルギー K1 の算出
速さ v1 で運動している質量 m の物体が持つ運動エネルギー K1 の定義式は以下の通りです。
K1=21mv12
この式に、物体Pの質量 m=0.400kg と、先ほど求めた速さ v1=14.7m/s を代入します。
K1=21×0.400×(14.7)2
K1=0.200×216.09
K1=43.218J
(※別解として、公式に文字のまま代入して K1=21m(gt1)2=21×0.400×(9.80×1.50)2=0.200×14.72=43.218J と一気に計算することも可能です。)
入力形式への適合
得られた運動エネルギーの値 K1=43.218J を用いて、入力形式の指定に従い値 W を計算します。
W=K1×1000=43.218×1000=43218
この算出された数値 43218 は、10の位まで正確に定まった、1000以上100万未満の指定範囲に正しく収まる自然数です。
最終に入力すべき自然数は 43218 です。