Problem Statement
完全透過する二重不純物
問題文
無限に長い一次元結晶格子を考える。格子点には整数 n∈Z を割り当て、各格子点に局在した電子状態 ∣n⟩ は正規直交基底をなす。
電子は隣接する格子点間のみを移動でき、そのホッピングエネルギーを J>0 とする。
格子点 n=0,2 には同一の不純物が存在し、それぞれの局所エネルギーは他の格子点より V>0 だけ低い。
電子のハミルトニアンは
H=−Jn=−∞∑∞(∣n⟩⟨n+1∣+∣n+1⟩⟨n∣)−V(∣0⟩⟨0∣+∣2⟩⟨2∣)
である。
エネルギー E をもつ定常散乱状態の各格子点における確率振幅を an とする。
不純物の存在しない左右の領域では、電子が左側から入射する散乱状態を
an={eikn+r(k)e−iknt(k)eikn(n≤−1)(n≥3)
とする。ただし、0<k<π であり、
E=−2Jcosk
が成り立つ。r(k)、t(k) はそれぞれ反射振幅と透過振幅である。
透過確率を
T(E)=∣t(k)∣2
とする。
この系で、許容エネルギー帯域の内部において T(E)=1 となるエネルギーを E∗ とする。
完全透過の共鳴の鋭さを表す無次元量 W を
W=E→E∗lim(JE−E∗)2T(E)−1−1
によって定義する。
W を求めよ。
制約
- J=0.18eV
- V=0.63eV
入力形式
W を既約分数
W=qp
で表す。ただし、p,q は互いに素な正の整数とする。
p+q の値を自然数で入力せよ。
方針
この問題では、2つの不純物による量子散乱を考えます。
不純物を1つだけ置いた場合の透過振幅と反射振幅を求め、2つの不純物間で生じる多重反射を考慮して、系全体の透過確率を導出します。
その後、完全透過条件から共鳴エネルギーを求め、共鳴点付近における透過確率の変化を調べます。
重要なのは、2つの不純物による散乱波が干渉することで、各不純物が電子を反射する場合でも、系全体の反射が完全に消失し得るという点です。
計算
1. 単独の不純物による散乱
まず、格子点 n=0 にのみ不純物が存在する場合を考えます。
無次元量
v=JV
を導入します。
エネルギー固有値方程式から、不純物のない格子点では
Ean=−J(an−1+an+1)
が成り立ちます。
一方、不純物のある格子点 n=0 では、
Ea0=−J(a−1+a1)−Va0
です。
左側から振幅1の平面波が入射するとして、
an={eikn+r1e−iknt1eikn(n≤−1)(n≥1)
とおきます。
格子点 n=−1,1 の固有値方程式から、
a0=1+r1=t1
を得ます。
これを不純物点の固有値方程式に代入し、
E=−2Jcosk
を用いて整理すると、
2isinkr1=−v(1+r1)
となります。
したがって、
r1=v+2isink−v
および
t1=v+2isink2isink
を得ます。
2. 二重不純物による透過振幅
次に、格子点 n=0,2 に不純物が存在する場合を考えます。
2つの不純物間の距離は格子間隔の2倍なので、散乱波が不純物間を1往復すると、伝播によって位相因子
e4ik
を獲得します。
各不純物は左右からの入射に対して同じ反射振幅 r1 と透過振幅 t1 をもつため、多重反射をすべて足し合わせると、
t(k)=t12m=0∑∞(r12e4ik)m
となります。
0<k<π では ∣r1∣<1 なので、この等比級数は収束します。
したがって、
t(k)=1−r12e4ikt12
です。
単独不純物の散乱振幅を代入すると、
t(k)=(v+2isink)2−v2e4ik(2isink)2
を得ます。
3. 透過確率の一般式
ここで、
x=cosk
とおきます。
0<k<π より、
sin2k=1−x2
です。
また、
e4ik=cos4k+isin4k
に対して、
cos4k=1−8x2(1−x2)
sin4k=4x1−x2(2x2−1)
が成り立ちます。
これらを透過振幅の式に代入して絶対値の二乗を計算し、整理すると、
T(E)=1−x2+v2(2x2−vx−1)21−x2
を得ます。
この式の分母は分子に非負の項を加えた形になっているため、
0<T(E)≤1
が成り立ちます。
4. 完全透過の共鳴エネルギー
完全透過条件は
T(E)=1
です。
0<k<π より 1−x2>0 なので、透過確率の一般式から、
v2(2x2−vx−1)2=0
となります。
v>0 であるため、
2x2−vx−1=0
が完全透過条件です。
制約値より、
v=0.180.63=27
なので、
2x2−27x−1=0
となります。
両辺を2倍すると、
4x2−7x−2=0
です。
これを因数分解して、
(4x+1)(x−2)=0
を得ます。
したがって、
x=2,x=−41
です。
しかし、x=cosk で 0<k<π なので、
−1<x<1
でなければなりません。
よって、物理的に許される解は
x∗=−41
のみです。
これより、完全透過エネルギーは一意に定まり、
E∗=−2Jx∗=−2J(−41)=2J
です。
制約値を代入すると、
E∗=0.09eV
となります。
5. 共鳴の鋭さ
求める無次元量は、
W=E→E∗lim(JE−E∗)2T(E)−1−1
です。
透過確率の一般式から、
T(E)−1−1=1−x2v2(2x2−vx−1)2
となります。
ここで、
F(x)=2x2−vx−1
と定義します。
共鳴条件より、
F(x∗)=0
です。
F(x) を共鳴点付近で展開すると、
F(x)=F′(x∗)(x−x∗)+O((x−x∗)2)
となります。
また、
E=−2Jx
なので、
x−x∗=−2JE−E∗
です。
したがって、
W=x→x∗lim1−x2v2F(x)24(x−x∗)21=4(1−x∗2)v2[F′(x∗)]2
となります。
ここで、
F′(x)=4x−v
なので、
F′(x∗)=4(−41)−27=−29
です。
これらを代入すると、
W=4(1−161)(27)2(−29)2
=4⋅1615449⋅481
=603969
したがって、
W=201323
となります。
1323 と 20 は互いに素であるため、これは既約分数です。
よって、
p=1323,q=20
です。
したがって、
p+q=1323+20
最終的に入力する自然数は、
1343
です。