GEO004 問題1
Problem Statement
重い人ほど坂道に強い?
問題文
ある人が自転車で一定の傾斜角 θ の坂道を上ろうとしている。自転車本体の質量を M、乗り手の質量を m、後輪の半径を R、ペダルのクランク長を r とする。
立ち漕ぎでは、乗り手は体重を利用しながら筋力を発揮するため、ペダルに加えられる力の上限も体重に応じて増加すると考えられる。
そこで、立ち漕ぎ中にクランクの回転方向へ加えられる接線方向の有効な力を F とし、その上限を
Fmax=21mgとモデル化する。F は 0 から Fmax まで自由に調節できるものとする。また、クランクの角速度 ω には上限 ωmax があり、最大の力と最大角速度は同時に実現できるものとする。
自転車の変速比 n を
n=クランクの角速度後輪の角速度と定義する。変速比は正の実数の範囲で自由に選択でき、クランクの回転は変速機を介して後輪に伝えられるものとする。動力伝達によるエネルギー損失はない。
乗り手は、斜面を一定の速さ v で上りたいと考えている。このとき、斜面下向きには重力の斜面方向成分に加えて、一定の大きさ D の空気抵抗が働く。
両輪は常に路面に接して滑らずに転がり、路面との静止摩擦は十分大きいものとする。転がり抵抗やその他のエネルギー損失は無視できる。
適切な変速比を選ぶことで、指定された速さ v で坂道を等速で上ることができる乗り手の最小質量 mmin を求めよ。
制約
- M=14kg
- R=0.35m
- r=0.17m
- sinθ=0.13
- v=3m/s
- ωmax=6rad/s
- D=10N
- g=10m/s2
入力形式
最小質量 mmin を kg 単位で表した数値の10倍を、自然数で入力せよ。
Solution
方針
乗り手の質量が増えると、ペダルを回す力の上限が増える一方、坂道を上るために必要な力も増加します。
ここで重要なのは、変速比を変えても、損失のない変速機では伝達される仕事率が変化しないことです。
したがって、立ち漕ぎで発揮できる最大仕事率と、一定速度で坂道を上るために必要な仕事率を比較します。
計算
クランクに加えられる最大トルクは
τmax=Fmaxr=21mgrです。
クランクの角速度の上限は ωmax なので、乗り手が発揮できる最大仕事率は
Pmax=τmaxωmax=21mgrωmaxとなります。
一方、坂道を等速で上るために必要な駆動力は、重力の斜面方向成分と空気抵抗の和なので、
Frequired=(M+m)gsinθ+Dです。
したがって、速さ v で等速走行するために必要な仕事率は
Prequired={(M+m)gsinθ+D}vとなります。
指定された速度で登坂するためには、
Pmax≥Prequiredすなわち、
21mgrωmax≥{(M+m)gsinθ+D}vが必要です。
また、この条件は十分でもあります。実際、変速比を
n=Rωmaxvと選べば、指定された速度 v でクランクを最大角速度 ωmax で回すことができます。
その際、必要なクランクトルクは
τrequired=ωmaxPrequiredであり、上の仕事率の不等式が満たされれば、このトルクは τmax 以下になります。
よって、先ほどの不等式が登坂可能条件となります。
これを m について整理すると、
m(21grωmax−vgsinθ)≥v(Mgsinθ+D)です。
数値を代入すると、
5.1m5.1m1.2mm≥3.9(m+14)+30≥3.9m+84.6≥84.6≥70.5となります。
したがって、最小質量は
mmin=70.5kgです。
このときの変速比は
n=Rωmaxv=0.35×63=710であり、クランクの力と角速度がちょうどそれぞれの上限となるため、実際に指定速度での等速登坂が可能です。
入力形式より、
10mmin=10×70.5=705正解:705