GEO003 問題8
Problem Statement
2本の回転導体棒の相対振動
問題文
水平な面上に、半径 a の細い円環状のなめらかなレールが固定されている。円環の中心を O とする。この空間には、鉛直下向きに磁束密度 B の一様な磁場が存在する。
長さがともに a、質量がそれぞれ m、M である2本の導体棒を用意し、棒1、棒2とする。それぞれの一端を、導電性の回転軸を介して中心 O で互いに電気的に接続する。他端 P、Q は円環状のレールに沿って移動し、棒は水平面上をなめらかに回転できるものとする。
棒1と棒2の慣性モーメントは、それぞれ 31ma2、31Ma2 である。棒とレールの間の摩擦および空気抵抗は無視できる。
円環状のレールは、多数の微小な導体区間と理想スイッチから構成されている。理想スイッチは接点 P、Q の移動に連動し、P から Q へ時計回りにたどる円弧だけを常に導通させ、反対側の円弧を電気的に切り離す。
したがって、2本の棒と導通している円弧によって、O→P→円弧→Q→O の向きに一つの扇形の閉回路が形成される。閉回路の電気抵抗および理想スイッチの力学的影響は無視できる。
この閉回路の自己インダクタンスは、運動中も一定値 L0 とみなせるものとする。また、電流同士の磁気的相互作用による棒への力は無視し、外部磁場 B と棒を流れる電流によるトルクのみを考える。
棒1と棒2の反時計回りの角度をそれぞれ θ1(t)、θ2(t) とし、相対角度を、
ϕ(t)=θ1(t)−θ2(t)とする。これは、Q から見て P が反時計回りになす角である。運動中は常に 0<ϕ(t)<2π であるとする。
時刻 t=0 の直前には、相対角度が ϕ0 であり、2本の棒は静止し、閉回路に電流は流れていない。時刻 t=0 に棒1へ瞬間的な角力積を与え、角度と電流を変化させずに、直後の棒1の反時計回りの角速度を ω0、棒2の角速度を 0 とする。その直後から、両棒を外力のない状態で自由に運動させる。
閉回路を O→P→円弧→Q→O に流れる時計回りの電流を正とする。閉回路の抵抗がゼロであることと、2本の棒が互いに逆向きの磁気トルクを受けることに注意せよ。
制約に示した数値はすべて厳密値として扱う。
制約
- a=0.250m
- m=0.120kg
- M=0.240kg
- B=0.800T
- L0=0.0800H
- ϕ0=1.20rad
- ω0=1.40rad/s
入力形式
初期状態の後、相対角度 ϕ(t) が初めて最大となったときの値を ϕmax とする。
無次元比
R=(ϕ0ϕmax−ϕ0)2を既約分数 qp と表し、p+q を入力せよ。
Solution
閉回路を貫く磁束
正の向きの電流は上から見て時計回りに流れるため、この電流がつくる自己誘導磁束の正方向は鉛直下向きです。
相対角度が ϕ のとき、閉回路が囲む扇形の面積は、
21a2ϕです。
したがって、閉回路を貫く下向きの外部磁束と、自己インダクタンスによる磁束鎖交数との和は、
Φ=21Ba2ϕ+L0iとなります。
抵抗がゼロの閉回路では、ファラデーの電磁誘導の法則より、この磁束鎖交数の和が一定に保たれます。
時刻 t=0 の直後には ϕ=ϕ0、i=0 であるから、
21Ba2ϕ+L0i=21Ba2ϕ0です。
ここで、
k=21Ba2とおくと、電流は、
i=L0k(ϕ0−ϕ)と表されます。
2本の棒の運動方程式
正の電流が流れるとき、棒1には反時計回り、棒2には時計回りの磁気トルクがはたらきます。
それぞれのトルクは大きさが ki で、向きが反対であるため、
31ma2dt2d2θ1=kiおよび、
31Ma2dt2d2θ2=−kiとなります。
相対角度は ϕ=θ1−θ2 であるため、
dt2d2ϕ=dt2d2θ1−dt2d2θ2です。
2本の運動方程式を用いると、
dt2d2ϕ=ki(ma23+Ma23)となります。
ここに、
i=L0k(ϕ0−ϕ)を代入すると、
dt2d2ϕ=−L0k2(ma23+Ma23)(ϕ−ϕ0)を得ます。
したがって、ϕ は ϕ0 を中心として単振動します。
その角振動数を Ω2 とすると、
Ω22=L0k2(ma23+Ma23)です。
k=21Ba2 を代入して整理すると、
Ω22=4mML03B2a2(m+M)となります。
相対角度の最大値
x=ϕ−ϕ0 とおくと、x の運動方程式は、
dt2d2x=−Ω22xです。
時刻 t=0 の直後では、
x(0)=0であり、棒1の角速度が ω0、棒2の角速度が 0 であるため、
dtdxt=0=ω0です。
したがって、
x(t)=Ω2ω0sinΩ2tとなります。
初めて最大となるとき、
ϕmax−ϕ0=Ω2ω0です。
よって、求める比は、
R=Ω22ϕ02ω02となります。
数値計算
角振動数の2乗は、
Ω22=4(0.120)(0.240)(0.0800)3(0.800)2(0.250)2(0.120+0.240)=1675s−2です。
したがって、
R=1675(56)2(57)2=675196となります。
また、相対角度の振幅は、
Ω2ω0=25328radであり、
0<ϕ0−Ω2ω0<ϕ(t)<ϕ0+Ω2ω0<2πが成り立つため、問題文の角度の範囲とも矛盾しません。
したがって、入力すべき自然数は、
p+q=196+675=871