GEO001 問題1
Problem Statement
壁と三角柱の間に挟まれた球による転倒限界
問題文
水平で粗い床の上に、十分に高く広がりを持つなめらかな鉛直な壁が固定されている。 質量M、底面の幅Wの一様で中実な三角柱が床に置かれている。この三角柱の断面は直角三角形であり、壁側の底角がθ、壁から遠い側の底角が90∘である。 三角柱は、鉛直な面を右側(壁から遠い側)に、角度θの斜面を左側(壁側)に向け、斜面の下端が壁から距離Dの位置になるように置かれている。
この壁と三角柱の斜面の間に、質量m、半径Rのなめらかで一様な球を静かに置いたところ、球は床に触れたり三角柱の頂点を越えたりすることなく、壁と斜面の両方に接して静止した。 この状態から、球の半径を変えずに質量mを徐々に大きくしていく。 質量mがある限界値を超えた瞬間、三角柱は床の上を滑ることなく、右下の角を軸にして転倒し始めた。 転倒が開始する瞬間の球の質量mを求めよ。
ただし、重力加速度の大きさをgとし、床と三角柱の間の静止摩擦係数は十分に大きく、転倒する前に三角柱が滑ることはないものとする。また、空気抵抗などの影響は無視できる。
制約
- M=15 kg
- W=0.36 m
- D=0.30 m
- R=0.40 m
- θ=30∘(すなわちπ/6 rad)
- g=9.8 m/s2
- 床の静止摩擦係数は転倒前に滑りが生じない程度に十分大きい。
入力形式
求める球の質量mの値(単位:kg)をそのまま一意な自然数で入力せよ。
Solution
解説
1. 座標系の設定と球のつり合い
壁と床の交点を原点O(0,0)とし、水平右向きにx軸、鉛直上向きにy軸をとります。 球は壁(x=0)と三角柱の斜面に接して静止しています。壁および斜面はなめらかであるため、球が受ける抗力は面に垂直な垂直抗力のみです。 球が三角柱の斜面から受ける垂直抗力をNpとします。斜面は水平に対して角度θをなすため、斜面に垂直な方向(Npの向き)は鉛直方向に対して角度θだけ傾いています(左上方向)。 球にはたらく鉛直方向の力のつり合いより、 Npcosθ=mg Np=cosθmg となります。
2. 球と三角柱の接点の座標
球の中心のx座標は、壁に接していることからxc=Rです。 球から三角柱への力は、三角柱から球への垂直抗力Npの反作用であり、球の中心から接点に向かう方向(右下方向、鉛直から角度θ)にはたらきます。 したがって、接点のx座標xpは次のように求まります。 xp=xc+Rsinθ=R(1+sinθ) 三角柱の斜面を表す直線の方程式は、点(D,0)を通り傾きtanθの直線なので、y=(x−D)tanθと表せます。 接点はこの直線上にあるため、接点のy座標ypは以下のようになります。 yp=(xp−D)tanθ
3. 三角柱にはたらく力と転倒条件
三角柱が転倒する際、右下の角が回転軸(支点)となります。この支点の座標は(D+W,0)です。 三角柱にはたらく力のうち、転倒に関与するモーメントを生むのは以下の2つです。
- 重力Mg 三角柱(直角三角形)の重心のx座標は、D+32Wです。 重力は支点よりも左側に作用するため、反時計回り(転倒を妨げる向き)のモーメントを生じます。 その大きさτgは以下の通りです。 τg=Mg((D+W)−(D+32W))=Mg3W
- 球から受ける垂直抗力(反作用)Np この力は接点(xp,yp)において、水平右向きにFx、鉛直下向きにFyの成分を持ちます。 Fx=Npsinθ=mgtanθ Fy=Npcosθ=mg これらが支点(D+W,0)の周りに作る時計回り(転倒させる向き)のモーメントτtopは、各成分のモーメントの和となります。 Fxは高さypで右向きに押すため時計回りのモーメントを生み、Fyは支点より左側(xp)で下向きに押すため反時計回りのモーメントを生みます。したがって、時計回りを正とすると、 τtop=Fx⋅yp−Fy⋅((D+W)−xp) =mgtanθ⋅(xp−D)tanθ−mg(D+W−xp) =mg[(xp−D)tan2θ−(D+W)+xp] =mg[xp(1+tan2θ)−D(1+tan2θ)−W] ここで、1+tan2θ=cos2θ1であることを用いると、 τtop=mg[cos2θxp−D−W] となります。
三角柱が転倒を開始する条件は、転倒させるモーメントが重力による復元モーメントを上回ることです。 τtop≥τg mg[cos2θR(1+sinθ)−D−W]≥Mg3W
4. 数値の代入と解答
与えられた制約の数値を式に代入します。 θ=30∘より、sin30∘=21、cos230∘=43です。 接点のx座標xpを計算します。 xp=0.40×(1+21)=0.60 m 左辺のブラケット内の値を計算します。 3/40.60−0.30−0.36=0.750.30−0.36=0.40−0.36=0.04 m 右辺の重力モーメントの腕の長さを計算します。 3W=30.36=0.12 m これらを転倒条件の不等式に代入します。 m⋅0.04≥M⋅0.12 m≥3M M=15 kgであるため、限界となる質量mは、 m=3×15=45 kg となります。(なお、xp=0.60 mはD≤xp≤D+W⟹0.30≤0.60≤0.66を満たすため、接点は確かに斜面上に存在します。)