GBO001 問題6
Problem Statement
連鎖崩壊における反跳運動とドップラー効果
問題文
静止している質量 MA の原子核Aが α 崩壊し、質量 MB の原子核B(励起状態)と質量 mα の α 粒子になった。このとき、α 粒子はある直線上を速さ vα で放出され、原子核Bは同直線上を反対方向に速さ vB で反跳した。
その後、運動中の原子核Bは、自身の進行方向と同じ前方の同一直線上に向けて γ 線を放出し、基底状態の原子核B'(質量 MB′)になった。このときBの静止系で測った γ 線の振動数は ν0 であったが、実験室系の前方にある静止した検出器で観測された振動数は ν であった。
基底状態となった原子核B'はやがて静止し、その後 β− 崩壊を起こして質量 MC の原子核Cと質量 me の電子(β 粒子)、および反ニュートリノになった。この崩壊で放出された電子の最大運動エネルギーは Ke であった。
以下の条件および近似に従って、α 粒子の速さ vα を求めよ。
- 原子核の反跳速度は光速 c に比べて十分に小さく、α 崩壊においては古典力学の運動量保存則が成り立つとする。
- γ 線観測におけるドップラー効果は、近似式 ν=ν0(1+cvB) を用いること。
- γ 線放出に伴う原子核Bの反跳エネルギーによる質量欠損への影響は極めて小さいため無視してよい(すなわち γ 線放出の前後で MBc2=MB′c2+hν0 が厳密に成り立つとする)。
- β− 崩壊において電子が最大運動エネルギーを持つとき、反ニュートリノのエネルギーはゼロとなる。また、このときの原子核Cの反跳エネルギーは無視してよい。
制約
- c=3.0×108 m/s (真空中での光速)
- h=6.6×10−34 J s (プランク定数)
- MC=3.319972×10−25 kg
- me=9.0×10−31 kg
- mα=6.64×10−27 kg
- Ke=7.2×10−14 J
- ν0=1.5×1020 Hz
- ν=1.5015×1020 Hz
入力形式
速さ vα [m/s] の値を計算し、その値を 1000 で割った自然数を入力せよ。
Solution
解説
この問題は、崩壊連鎖(β 崩壊、γ 崩壊、α 崩壊)の順に時間を遡って質量と運動の条件を決定していくことで解くことができます。
1. β− 崩壊と基底状態の原子核B'の質量 MB′ の導出
まず、静止した原子核B'の β− 崩壊について考えます。 電子が最大運動エネルギー Ke を持つとき、反ニュートリノのエネルギーはゼロであり、原子核Cの反跳エネルギーも無視できるため、反応前後の質量とエネルギーの保存則(アインシュタインの質量とエネルギーの等価性)より以下の式が成り立ちます。 MB′c2=MCc2+mec2+Ke 両辺を c2 で割り、MB′ を求めます。 MB′=MC+me+c2Ke 与えられた数値を代入します。 c2Ke=(3.0×108)27.2×10−14=9.0×10167.2×10−14=0.8×10−30 kg me+c2Ke=9.0×10−31+8.0×10−31=17.0×10−31 kg=1.7×10−30 kg したがって、MB′ は次のように求まります。 MB′=331997.2×10−30+1.7×10−30=331998.9×10−30 kg
2. γ 崩壊と励起状態の原子核Bの質量 MB の導出
次に、原子核Bの γ 崩壊による質量欠損を考えます。 問題の条件より、γ 線放出時の反跳エネルギーを無視するため、静止系におけるエネルギー保存則は以下のように記述できます。 MBc2=MB′c2+hν0 同様に両辺を c2 で割り、MB を求めます。 MB=MB′+c2hν0 与えられた数値を代入します。 hν0=(6.6×10−34)×(1.5×1020)=9.9×10−14 J c2hν0=9.0×10169.9×10−14=1.1×10−30 kg よって、MB は次のように求まります。 MB=331998.9×10−30+1.1×10−30=332000.0×10−30 kg=3.32×10−25 kg
3. ドップラー効果による原子核Bの反跳速度 vB の導出
原子核Bは速さ vB で観測者(検出器)に向かって運動しながら γ 線を放出しています。 光のドップラー効果の近似式を用います。 ν=ν0(1+cvB) これを vB について解きます。 cvB=ν0ν−1 vB=c(ν0ν−1) 与えられた数値を代入します。 ν0ν−1=1.5×10201.5015×1020−1=1.001−1=0.001 vB=(3.0×108)×0.001=3.0×105 m/s
4. α 崩壊における運動量保存則と vα の導出
静止していた原子核Aが分裂し、α 粒子と原子核Bが反対方向に飛び出します。 古典力学における運動量保存則より、以下の式が成り立ちます。 mαvα=MBvB これを vα について解きます。 vα=mαMBvB 求めた MB と vB、および与えられた mα を代入します。 vα=6.64×10−273.32×10−25×(3.0×105) 質量比を計算すると、 6.64×10−273.32×10−25=6.64332=50 となります。したがって、 vα=50×3.0×105=150×105=1.5×107 m/s=15000000 m/s
入力形式の指示に従い、この値を 1000 で割ります。
100015000000=15000
求める自然数は 15000 となります。