GBO001 問題5
Problem Statement
ばね付きピストンに封入された理想気体の熱力学
問題文
滑らかに動く質量 M の熱を全く通さないピストンが備わった、断面積 S の断熱シリンダーが床に鉛直に固定されている。 シリンダーの内部には n の単原子分子理想気体が封入されている。 シリンダーの底面とピストンの間には、ばね定数 k の理想的なばねが鉛直に配置されており、シリンダー底面とピストンを接続している。 シリンダー外部の大気圧を P0、重力加速度の大きさを g とする。
初期状態において、気体は温度 T0 で熱平衡状態にあり、このとき、内部のばねはちょうど自然長であった。このときの気体の体積を V0 とする。 次に、シリンダー内部に設置された体積と熱容量が無視できるヒーターを用いて気体にゆっくりと熱を与えたところ、ピストンは上昇を始め、気体の体積がちょうど初期の2倍(2V0)になったところで加熱を止めた。
この過程において、ヒーターが気体に与えた総熱量 Q を求めよ。 ただし、気体定数を R とし、ピストンやシリンダーの熱容量は無視できるものとする。ばねの体積および熱容量も無視できるものとする。
制約
* n=0.20 mol * T0=300 K * P0=1.00×105 Pa * M=25.0 kg * S=1.00×10−2 m2 * k=1.00×103 N/m * g=9.80 m/s2 * R=8.30 J/(mol \cdotK)
入力形式
ヒーターが気体に与えた総熱量 Q の値をジュール単位で求め、その数値を自然数で回答せよ。
Solution
解説
本問は、力が一定ではない(圧力が体積変化に伴って一次関数的に変化する)過程における、熱力学第一法則の適用を問う標準的かつ重要な問題です。ピストンにかかる力のつり合いと状態方程式を連立し、状態変化の全容を正確に立式していきます。
1. 初期状態の解析と体積 V0 の導出
まず、初期状態(ばねが自然長の状態)での気体の圧力 Pin を求めます。 ピストンには、下向きに大気圧による力 P0S と重力 Mg が働き、上向きに気体の圧力による力 PinS が働きます。ばねは自然長であるため、弾性力はゼロです。力のつり合いより、
PinS=P0S+Mgよって、初期の気体の圧力 Pin は以下のように表せます。
Pin=P0+SMgこの状態において理想気体の状態方程式 PinV0=nRT0 が成立するため、初期体積 V0 は次のように決まります。
V0=PinnRT0=P0+SMgnRT02. 加熱後の状態と到達温度 T1 の導出
体積が 2V0 になったとき、ピストンが初期位置から上昇した距離を y とすると、Sy=2V0−V0=V0 より、ピストンの変位は y=SV0 となります。 このとき、ばねは自然長から y だけ伸びているため、下向きに弾性力 ky が働きます。 加熱後の気体の圧力を Pout とすると、力のつり合いは以下のようになります。
PoutS=P0S+Mg+ky両辺を S で割り、y=SV0 を代入すると、
Pout=P0+SMg+S2kV0=Pin+S2kV0このときの気体の温度を T1 とします。体積は 2V0 であるため、状態方程式より以下が成り立ちます。
nRT1=Pout⋅(2V0)=2(Pin+S2kV0)V0=2PinV0+S22kV02ここで、PinV0=nRT0 を代入すると、
nRT1=2nRT0+S22kV02温度 T1 は次のように求まります。
T1=2T0+nRS22kV023. 気体がした仕事 W と内部エネルギーの変化 ΔU
気体の圧力 P は体積 V に対して一次関数的に増加します。したがって、気体が外部にした仕事 W は P−V グラフ上の台形の面積として計算できます。
W=21(Pin+Pout)×(2V0−V0)Pout=Pin+S2kV0 を代入して整理します。
W=21(2Pin+S2kV0)V0=PinV0+2S2kV02=nRT0+2S2kV02次に、単原子分子理想気体の内部エネルギーの変化 ΔU を求めます。
ΔU=23nR(T1−T0)先ほど求めた nRT1 の式を用いると、
ΔU=23(2nRT0+S22kV02−nRT0)=23nRT0+S23kV024. 総熱量 Q の算出と数値代入
熱力学第一法則 Q=ΔU+W より、与えられた熱量 Q は以下の通りとなります。
Q=(23nRT0+S23kV02)+(nRT0+2S2kV02)=25nRT0+2S27kV02最後に、与えられた制約の数値を代入して値を求めます。 まず、初期状態に関する項 nRT0 を計算します。
nRT0=0.20×8.30×300=498 J次に初期圧力 Pin を計算します。
SMg=1.00×10−225.0×9.80=0.01245=24500 Pa Pin=100000+24500=124500 Paこれより、初期体積 V0 を求めます。
V0=PinnRT0=124500498=0.00400 m3ばねによるエネルギー増分の係数となる S2V02 を計算します。
SV0=0.01000.00400=0.400 m S2V02=(0.400)2=0.160 m2すべての値を Q の式に代入します。
Q=25(498)+27(1.00×103)(0.160) Q=1245+3.5×160=1245+560=1805 J計算の過程で無理数や端数は一切発生せず、厳密に 1805 という自然数が導き出されます。
解答: 1805