GWCA002 問題1
問題文
有限質量原子核をもつ原子の量子化と発光エネルギー
問題文
質量 M、電気量 Ze (Z は原子番号、e は電気量の絶対値)の原子核と、質量 m、電気量 −e の電子からなる孤立した原子模型を考える。原子核と電子は、互いの間に働く静電力(クーロン力)のみによって、共通の重心を中心とした同一平面上の等速円運動を行っている。静電力の比例定数を ke とする。また、重心は慣性系に対して静止しているものとする。
この円運動において、重心のまわりの電子の角運動量と原子核の角運動量の和(系の全角運動量)は、プランク定数 h を用いて 2πnh (n は正の整数)に量子化されているものとする。
この系において、量子数が n=2 の状態から n=1 の状態へ遷移するときに放出される光子のエネルギーを ΔE とする。一方、原子核の質量が電子に比べて無限に大きく、原子核が重心に静止していると仮定した場合に、同様の遷移(n=2 から n=1)によって放出される光子のエネルギーを ΔE∞ とする。
比 ΔEΔE∞ を既約分数 qp (p,q は互いに素な自然数)で表したとき、p+q の値を求めよ。
制約
- M=4.00×10−27kg
- m=1.00×10−30kg
- Z=1
入力形式
ΔEΔE∞=qp から得られる自然数 p+q を回答すること。ただし、 qp は互いに素とする。
解説
解説
運動方程式と重心の関係
原子核と電子の距離を r とします。重心を原点とし、重心から原子核までの距離を r1、電子までの距離を r2 とすると、 r=r1+r2 が成り立ちます。 重心の定義より、次の関係が満たされます。
Mr1=mr2
これより、 r1 と r2 は全体の距離 r を用いて次のように表されます。
r1=M+mmr,r2=M+mMr
両者は共通の角速度 ω で等速円運動を行うため、それぞれの速度の大きさ v1,v2 は次のようになります。
v1=r1ω=M+mmrω,v2=r2ω=M+mMrω
電子と原子核の間の相対速度の大きさを v=v1+v2 と定義すると、 v=rω となります。
電子に働く向心力はクローンの法則による静電力 r2keZe2 であるため、電子の運動方程式は以下の通りです。
mr2v22=r2keZe2
ここに r2 と v2 の式を代入して整理すると、系の換算質量 μ=M+mMm を用いて次のように書き直すことができます。
μrv2=r2keZe2…(1)
角運動量の量子化
系の全角運動量 L は、原子核と電子の角運動量の和です。
L=Mr1v1+mr2v2=μr2ω=μrv
量子化条件 L=2πnh より、次の関係式を得ます。
μrv=2πnh…(2)
全エネルギーの導出
系の全エネルギー E は、原子核と電子の運動エネルギーの和および静電エネルギーの和です。
E=21Mv12+21mv22−rkeZe2=21μv2−rkeZe2
式(1)より rkeZe2=μv2 であるため、エネルギーは次のようにまとまります。
E=−21μv2
式(1)と式(2)から r を消去して v を求めると、 v=nh2πkeZe2 となります。これを代入すると、量子数 n におけるエネルギー準位 En が定まります。
En=−n2h22π2μke2Z2e4
エネルギー比の計算
原子核が無限に重い(M→∞)と仮定したときのエネルギー準位 E∞,n は、 μ→m となることから次のようになります。
E∞,n=−n2h22π2mke2Z2e4
したがって、任意の量子数 n において En=mμE∞,n という比例関係が成り立ちます。
量子数 n=2 から n=1 への遷移で放出される光子のエネルギーは、それぞれのエネルギー差に等しくなります。
ΔE=E2−E1=mμ(E∞,2−E∞,1)=mμΔE∞
求めたい比 ΔEΔE∞ は次のようになります。
ΔEΔE∞=μm=MM+m=1+Mm
数値代入と自然数化
制約に与えられた数値を代入します。
Mm=4.00×10−271.00×10−30=40001
よって、求める比は以下のようになります。
ΔEΔE∞=1+40001=40004001
これは既約分数であるため、 p=4001,q=4000 となります。 求める自然数は、 p+q=4001+4000=8001 です。