GSO012 問題7
問題文
居眠り猫と、ずれる輪っか
問題文
研究室の机で、平凸レンズの凸面を水平なガラス板へ向け、光軸がガラス板に垂直になるように置く。極小のスペーサーによって、レンズ中央とガラス板の間には厚さ h のすき間が保たれている。
研究室の猫が装置のすぐ横で気持ちよさそうに眠っているため、実験開始後はレンズを動かさないことにする。
レンズの曲率半径を R とする。光軸からの距離 r が R に比べて十分小さい範囲では、レンズとガラス板の間の薄膜の厚さ d を、
d=h+2Rr2としてよい。以下で扱うすべてのリングは、この近似が十分成り立つ範囲にあるものとする。
上方から単色光を入射し、垂直入射とみなして反射光によるニュートンリングを観察する。以下で用いる波長は、すべて真空中の波長とする。
レンズとガラス板を構成するガラスの屈折率はいずれも、空気および後に薄膜へ入れる液体の屈折率より大きいものとする。このため、薄膜の上下界面で反射して干渉する二つの光のうち、一方だけが反射時に位相反転する。
以下、「暗い」「明るい」とは、この二光干渉による光強度の極小・極大をそれぞれ指す。また、「暗いリング」とは半径 r>0 の円状の暗線を指し、中心 r=0 が暗い場合でもリングの個数には含めない。
初め、レンズとガラス板の間は空気で満たされている。
波長 λR の光を用いると中心は暗く見えた。一方、波長 λV の光を用いると中心は明るく見えた。
次に、空気中で波長 λR の光を用い、中心の外側に現れる最も内側の暗いリングの半径を r∗ とする。
猫を起こさないようレンズには触れず、薄膜部分の空気だけを、屈折率 n の透明な液体で完全に置き換える。h と R は変化しないものとする。
この状態で再び波長 λR の光を用いたところ、半径 r∗ の位置は、中心に近い方から数えて二番目の暗いリングになった。
最後に、液体を入れたまま波長 λV の光へ切り替える。このとき、中心に近い方から数えて三番目の暗いリングの半径を r3 とする。
薄膜による吸収、薄膜内での多重反射、薄膜上下界面以外の表面からの反射、およびレンズ表面の変形は無視する。
制約
- λR=600nm
- λV=400nm
- 0<h<800nm
- 1<n<2
入力形式
観測から定まる液体の屈折率を既約分数
n=qpとする。
また、
(r∗r3)2=tsを既約分数とする。
p,q,s,t は正の自然数である。
p+q+s+t を入力せよ。
解説
反射光の明暗条件
薄膜の屈折率を N、厚さを d とします。
今回干渉する二つの反射光では、一方だけが反射時に位相反転します。また、垂直入射とみなしているため、反射光が暗くなる条件は、
2Nd=mλです。
ここで m=0,1,2,… であり、λ は真空中の波長です。
一方、明るくなる条件は、
2Nd=(k+21)λです。
ここで k=0,1,2,… です。
通常のニュートンリングでは中央で d=0 なので中心は暗くなります。しかし今回は、スペーサーによって中央にも厚さ h の薄膜があります。
猫は何もしていませんが、スペーサーはかなり仕事をしています。
中央の明暗からすき間を特定する
初めは空気なので N=1 です。
波長 λR で中心が暗いことから、
2h=mλRです。
したがって、
h=300mnmとなります。
さらに、
0<h<800nmなので、可能性は、
h=300nm,h=600nmです。
一方、波長 λV では中心が明るいため、
2h=(k+21)λVです。
よって、
h=(200k+100)nmとなります。
制約を満たす候補は、
100nm,300nm,500nm,700nmです。
二つの観測を同時に満たすのは、
h=300nmだけです。
波長 λR で最初に現れる暗いリング
空気中で波長 λR を用いたとき、中心では、
2h=600nm=λRです。
したがって中心 r=0 は、暗線条件の m=1 に対応します。
ただし、中心は暗いリングの個数には含めません。
その外側で最も内側の暗いリングでは、次の整数である、
m=2が対応します。
その位置の膜厚を d∗ とすると、
2d∗=2λRなので、
d∗=600nmです。
したがって、
d∗−h=300nmとなります。
薄膜の形から、
r∗2=2R(d∗−h)です。
液体を入れると同じ場所の番号が変わる
次に屈折率 n の液体を入れます。
波長 λR に対する暗線条件は、
2nd=mλRです。
半径 r∗ の位置では膜厚は変化していないため、
d∗=600nmです。
したがって、
2n(600nm)=m(600nm)より、
m=2nとなります。
一方、液体中で暗線条件を満たす膜厚は、
dm=2nmλRです。
半径 r>0 の暗いリングが存在するためには、中心より膜厚が大きくなければならないので、
dm>hが必要です。
したがって、
2nmλR>hです。
λR=600nm、h=300nm より、
m>nとなります。
ここで、
1<n<2なので、この条件を満たす最小の整数は、
m=2です。
つまり、液体中では中心に最も近い暗いリングが m=2、その次が m=3 に対応します。
問題文によれば、半径 r∗ の位置は二番目の暗いリングです。
したがって、この位置では、
m=3です。
先ほどの、
m=2nと合わせると、
2n=3より、
n=23となります。
したがって、
p=3,q=2です。
レンズはまったく動いていないのに、液体を入れただけで同じ円の暗線としての次数と、中心から数えた番号が変わりました。
猫から見ると同じ輪っかです。物理屋は勝手に番号を付け替えています。
波長 λV の光に替える
今度は液体を入れたまま、波長 λV の光を用います。
n=23 なので、暗線条件は、
2⋅23d=mλVです。
したがって、
3d=mλVより、
dm=3400mnmとなります。
半径 r>0 の暗いリングが存在するには、
dm>hなので、
3400m>300です。
したがって、
m>49となります。
よって、中心に最も近い暗いリングは m=3 です。
二番目は m=4、三番目は m=5 なので、r3 の位置での膜厚は、
d3=3400×5nm=32000nmです。
半径を求めずに半径の比を求める
薄膜の形から、任意の位置について、
r2=2R(d−h)です。
したがって、
(r∗r3)2=d∗−hd3−hとなります。
各値を代入すると、
(r∗r3)2=600−30032000−300です。
分子は、
32000−300=31100なので、
(r∗r3)2=30031100=911となります。
したがって、
s=11,t=9です。
曲率半径 R は最後まで分かりませんでした。しかし、ニュートンリングでは r2 が中心からの膜厚の増分に比例するため、半径の比を取ると R がきれいに消えます。
猫も最後まで起きませんでした。
入力すべき自然数
以上より、
p+q+s+t=3+2+11+9=25です。
入力すべき自然数は、
25です。