GSO010 問題9
問題文
接地球と中性孤立球――境界条件が変える鏡像系
問題文
真空中に半径 R の導体球と正の点電荷 q がある。点電荷は球の中心を通る直線上を移動するものとする。
次の二つの系を別々に考える。
系Gでは、導体球を常に接地しておく。
系Nでは、導体球を外部の導体から完全に絶縁し、初めから電気的に中性にしておく。したがって、点電荷を移動させている間も導体球の全電荷はゼロに保たれる。
いずれの系でも、点電荷を無限遠から球表面までの距離が h となる位置まで十分ゆっくり移動させる。導体は各瞬間に静電平衡に達しているものとし、無限遠で電位をゼロとする。
点電荷が球表面から距離 h にあるとき、点電荷が導体球から受ける引力の大きさをそれぞれ FG,FN とする。また、点電荷を無限遠からその位置まで移動させる間に外力が点電荷にする仕事をそれぞれ WG,WN とする。
無次元量
ΛG=∣WG∣FGh,ΛN=∣WN∣FNhを定義する。
制約
- R=12cm
- h=21cm
入力形式
比
X=ΛGΛNを既約分数 m/n と表す。
m+n を入力する。
解説
接地球の鏡像系
点電荷と球中心との距離を a とおきます。点電荷が球表面から距離 h にあるので、
a=R+hです。
まず系Gを考えます。
球中心を原点とし、実電荷 q が中心から距離 a の位置にあるとします。
球内の、中心と実電荷を結ぶ直線上に鏡像電荷 q′ を置き、その中心からの距離を b とします。
球面上の一点と実電荷との距離を d、鏡像電荷との距離を d′ とすると、
b=aR2と選ぶことで、
d′=aRdが球面上のすべての点で成り立ちます。
接地球では球面上の電位がゼロなので、
dq+d′q′=0を満たす必要があります。
したがって、
q′=−aRqです。
よって系Gの鏡像系は、
q′=−aRq,b=aR2で与えられます。
この鏡像系は球面上で V=0 を満たすため、静電ポテンシャルの一意性により球外部の電位を正しく表します。
中性孤立球の鏡像系
次に系Nを考えます。
孤立した導体球では、球面が等電位であることに加え、導体球の全電荷がゼロでなければなりません。
先ほどの負の鏡像電荷
−aRqだけでは、中性条件を満たしません。
そこで、さらに球中心に鏡像電荷 q0 を置きます。
中心にある点電荷が球面上につくる電位は球面全体で一定なので、この電荷を追加しても球面が等電位であるという条件は保たれます。
一方、導体球の全電荷がゼロであるためには、球内の鏡像電荷の総和もゼロでなければなりません。
したがって、
−aRq+q0=0より、
q0=aRqです。
よって系Nでは、
−aRqを中心から距離 R2/a の位置に置き、さらに
+aRqを球中心に置けばよいことが分かります。
接地条件と中性条件の違いが、鏡像系そのものの違いとして現れています。
誘導電荷による静電エネルギー
点電荷によって生じる誘導電荷分布は、点電荷 q に比例します。
実電荷の位置における誘導電荷による電位を ϕind とすると、導体との相互作用による静電エネルギーは
U=21qϕindです。
係数 1/2 が付くのは、電荷を 0 から q まで増加させる過程で誘導電位も電荷に比例して増加するためです。
無限遠では相互作用が消えて U=0 なので、点電荷を無限遠から準静的に運ぶ外力の仕事は U に等しくなります。
系Gの仕事
実電荷と負の鏡像電荷との距離は、
a−b=a−aR2=aa2−R2です。
クーロン定数を
k=4πε01とすると、実電荷位置における誘導電位は、
ϕG=k(a2−R2)/a−Rq/a=−a2−R2kqRです。
したがって、
WG=UG=−2(a2−R2)kq2Rとなります。
系Gの力
球中心から外向きを正方向とします。
点電荷に働く力の動径成分は、
Fr=−dadUGです。
力は球に向かうため Fr<0 であり、その大きさは、
FG=dadUGです。
よって、
FG=(a2−R2)2kq2Raを得ます。
系Nの仕事
系Nでは、実電荷位置における誘導電位は二つの鏡像電荷による電位の和です。
負の鏡像電荷からの寄与は、
−a2−R2kqRです。
また、球中心の正の鏡像電荷と実電荷との距離は a なので、その寄与は、
kaRq/a=a2kqRです。
したがって、
ϕN=−a2−R2kqR+a2kqR=−a2(a2−R2)kqR3となります。
よって、
WN=UN=−2a2(a2−R2)kq2R3です。
系Nの力
系Nのポテンシャルエネルギーを微分します。
UN=−2kq2R3a2(a2−R2)1より、
FN=dadUNです。
微分すると、
FN=a3(a2−R2)2kq2R3(2a2−R2)となります。
a>R なので 2a2−R2>0 であり、実際に球へ向かう引力となっています。
無次元量の比較
系Gについて、
ΛG=∣WG∣FGh=2(a2−R2)kq2R(a2−R2)2kq2Rah=a2−R22ahです。
ここで、
h=a−Rなので、
a2−R2=(a−R)(a+R)=h(a+R)です。
よって、
ΛG=a+R2aとなります。
一方、系Nでは、
ΛN=∣WN∣FNh=2a2(a2−R2)kq2R3a3(a2−R2)2kq2R3(2a2−R2)h=a(a2−R2)2h(2a2−R2)=a(a+R)2(2a2−R2)です。
したがって、
X=ΛGΛN=a22a2−R2=2−(aR)2となります。
数値計算
点電荷が球表面から距離 h にあるとき、
a=R+h=12cm+21cm=33cmです。
したがって、
aR=3312=114です。
よって、
X=2−(114)2=2−12116=121226となります。
したがって、
m=226,n=121なので、入力すべき自然数は
m+n=347である。
別解
力はポテンシャルエネルギーを微分せず、実電荷と鏡像電荷とのクーロン力から直接求めることもできます。
系Nでは、中心から距離 R2/a にある負の鏡像電荷による引力から、中心にある正の鏡像電荷による斥力を差し引けばよいので、
FN=kq2[(a2−R2)2Ra−a3R]です。
これを通分すると、
FN=a3(a2−R2)2kq2R3(2a2−R2)となり、主解法と一致します。