GSO009 問題7
問題文
音で温度を測る二つの球形共鳴器
問題文
内部体積がそれぞれ V である同一形状の2個の剛体球形共鳴器 X、Y がある。X と Y は、内部体積を無視できる細い連結管でつながれており、連結管の途中には気密なバルブ S が取り付けられている。バルブ S を閉じている間、X と Y の間では気体も熱も移動しない。また、バルブの開閉によって装置へ出入りするエネルギーは無視できるものとする。
X、Y にはそれぞれ小型の音源とマイクが取り付けられており、内部の気体の同じ種類の音響共鳴モードの周波数を測定できる。共鳴器の熱膨張は無視でき、このモードの共鳴周波数 f は
f=Kcと表されるものとする。ここで c は気体中の音速であり、定数 K は気体の種類や温度によらず、X と Y で共通である。
また、理想気体中の音速について
c2=MγRTが成り立つものとする。ここで T は絶対温度、M は気体のモル質量、R は気体定数であり、
γ=CVCpである。CV、Cp は、それぞれ1 molあたりの定積モル熱容量、定圧モル熱容量を表す。
単原子分子理想気体 A と二原子分子理想気体 B の内部エネルギーは、それぞれ
UA=23nRT,UB=25nRTで与えられるものとする。B の振動自由度は無視する。
各共鳴器について、容器壁、音源、マイクを合わせた熱容量を C とする。X と Y は同一の装置であるため C は等しく、扱う温度範囲では一定とする。連結管、バルブおよび後述する電熱線の熱容量は無視できるものとする。各測定時には、気体とそれを収める共鳴器本体は同じ温度の平衡状態にあるものとする。
気体 A、B はすべての状態で理想気体として扱うことができ、互いに化学反応しない。音響測定のために気体へ与えられるエネルギーは無視できるものとする。
実験 I:共鳴器の校正
バルブ S を閉じ、X に単原子分子理想気体 A を封入した。気体 A と X 本体を温度 T0 の平衡状態にし、気体の圧力を p0 とした。このときの共鳴周波数は f0 であった。
次に、X 全体と外界との間で熱が移動しない状態にし、X 内部の電熱線に通電した。外部の電源から電熱線を通じて、気体 A と X 本体を合わせた系へ供給された電気エネルギーを E とする。供給された電気エネルギーはすべてこの系のエネルギー増加に使われるものとする。X は剛体なので体積は変化しない。
通電を止めて十分時間をおき、気体 A と X 本体が再び同じ温度の平衡状態になったところ、共鳴周波数は f1 となった。
実験 II:二種類の気体の混合
実験 I の終了後、X を外界と熱交換させて十分冷却し、内部の気体を入れ替えてから次の実験を行った。
バルブ S を閉じた状態で、X に単原子分子理想気体 A、Y に二原子分子理想気体 B を封入した。A、B の圧力はいずれも p0 とした。
気体 A と X 本体が平衡状態になったとき、X の共鳴周波数は fA であった。また、気体 B と Y 本体が平衡状態になったとき、Y の共鳴周波数は fB であった。
その後、X と Y を合わせた装置全体と外界との間で熱が移動しない状態にし、バルブ S を開いた。A と B は互いに混合し、十分時間が経過すると、両気体および X、Y の共鳴器本体はすべて共通の温度 Tf の平衡状態となった。
バルブを開いてから最終状態に達するまで、装置全体と外界との間に熱の出入りはなく、装置全体の体積は 2V のまま変化しない。混合後の気体についても理想気体の状態方程式を適用でき、混合後の気体の内部エネルギーは A と B の内部エネルギーの和で与えられるものとする。
最終状態での気体の全圧を pf とする。
p0pfを求めよ。
制約
- T0=300K
- p0=1.00×105Pa
- V=1.20×10−2m3
- E=6.678×103J
- f0=4.00kHz
- f1=4.40kHz
- fA=4.80kHz
- fB=4.80kHz
- MA=40.0×10−3kg/mol
- MB=28.0×10−3kg/mol
入力形式
pf/p0 を既約分数 p/q と表す。ただし、p,q は自然数とする。
p+q を入力せよ。
解説
1. 気体 A、B の比熱比
単原子分子理想気体 A の内部エネルギーは
UA=23nRTであるため、
CV,A=23Rです。
1 molの理想気体を一定圧力のもとで ΔT だけ加熱すると、状態方程式より、気体が外界にする仕事は
pΔV=RΔTです。
したがって、定圧で必要な熱量は、内部エネルギーの増加分にこの仕事を加えたものとなるので、
Cp=CV+Rを得ます。
よって、
Cp,A=25Rであり、
γA=CV,ACp,A=35です。
同様に、二原子分子理想気体 B について、
CV,B=25R,Cp,B=27Rなので、
γB=57です。
2. 実験 I から共鳴器の熱容量を求める
実験 I の加熱後の温度を T1 とします。
加熱前後で同じ気体 A を同じ共鳴器 X に入れているため、K、γA、MA は共通です。
したがって、
f2∝Tより、
T0T1=(f0f1)2です。
よって、
T1=300(4.004.40)2=363Kとなり、
T1−T0=63Kです。
実験 I の初期状態について、
n0RT0=p0Vなので、
n0R=T0p0V=3001.00×105×1.20×10−2=4.00J/Kです。
X は剛体なので、気体は体積変化による仕事をしません。
したがって、供給された電気エネルギー E は、気体 A の内部エネルギーの増加と共鳴器 X 本体のエネルギーの増加の和に等しく、
E=(23n0R+C)(T1−T0)です。
よって、
6678=(23×4.00+C)63となるので、
C=100J/Kを得ます。
3. 実験 II の二つの初期温度
実験 I の初期状態と実験 II の気体 A を比較します。
同じ気体 A について、
T0TA=(f0fA)2なので、
TA=300(4.004.80)2=432Kです。
次に、実験 II では
fA=fBです。
f=Kc で K は共通なので、A と B の音速も等しくなります。
したがって、
MAγARTA=MBγBRTBであり、
TB=TAγBγAMAMBです。
よって、
TB=4327/55/340.028.0=360Kとなります。
同じ共鳴周波数であっても、気体の比熱比とモル質量が異なるため、温度が等しいとは限らないことが分かります。
4. 混合後の温度
バルブを開く前は、A、B とも圧力が p0、体積が V です。
したがって、
nARTA=p0V,nBRTB=p0Vです。
ここで、単原子分子気体 A の混合前の内部エネルギーは、
UA,i=23nARTA=23p0Vです。
同様に、B について、
UB,i=25p0Vです。
混合後は、A、B はともに温度 Tf なので、
UA,f=23TAp0VTfおよび
UB,f=25TBp0VTfとなります。
また、共鳴器 X は TA から Tf、Y は TB から Tf へ温度が変化します。
装置全体は外界から断熱されており、剛体なので外界に体積変化による仕事もしません。したがって、気体 A、気体 B、共鳴器 X、共鳴器 Y を合わせた系のエネルギーが保存され、
23p0V+25p0V+C(TA+TB)=(2TA3p0V+2TB5p0V+2C)Tfとなります。
ここで、
p0V=1.00×105×1.20×10−2=1200Jなので、
4×1200+100(432+360)=(2×4323×1200+2×3605×1200+200)Tfです。
整理すると、
84000=2425Tfより、
Tf=176720Kを得ます。
この値は
360K<Tf<432Kを満たしており、熱平衡後の温度としても妥当です。
5. 最終圧力
最終状態では、A と B の物質量は保存され、気体が占める全体積は 2V です。
したがって、
pf(2V)=(nA+nB)RTfです。
混合前の状態方程式から、
nAR=TAp0V,nBR=TBp0Vなので、
p0pf=2Tf(TA1+TB1)となります。
よって、
p0pf=21176720(4321+3601)=153154です。
したがって、
p=154,q=153なので、入力すべき自然数は
p+q=307です。
答え:307