GSO006 問題9
問題文
弾性基礎上の張力付き細いリボンを走る波束の位相速度と群速度
問題文
十分に長い細い弾性リボンが、水平な x 軸に沿って張られている。リボンの微小な鉛直変位を y(x,t) とする。リボンには一様な張力 T がかかっており、さらにリボンの曲げ剛性 B と、鉛直変位に比例して復元力を及ぼす弾性基礎がある。
リボンの単位長さあたりの質量を μ、弾性基礎が単位長さあたりに及ぼす復元力の比例係数を κ とする。微小振動について、リボンの運動方程式は
μ∂t2∂2y=T∂x2∂2y−B∂x4∂4y−κyで与えられるものとする。
このリボンを、角振動数 ω、波数 k の正弦波
y(x,t)=Acos(kx−ωt)として振動させる。ただし k>0、ω>0 とする。
このとき、位相速度を
vp=kω群速度を
vg=dkdωで定義する。
位相速度と群速度が等しくなる正の波数を k∗ とし、そのときの共通の速さを v∗ とする。v∗ を求めよ。
制約
- μ=8.00×10−2 kgm−1
- T=7.20 N
- B=5.00×10−3 Nm2
- κ=1.28 Nm−2
入力形式
求めた v∗ について、次の無次元量
N=1 m2s−2v∗2を入力せよ。
解説
分散関係を求める
まず、波の形
y(x,t)=Acos(kx−ωt)を運動方程式に代入します。
時間について二階微分すると
∂t2∂2y=−ω2y空間について二階微分、四階微分すると
∂x2∂2y=−k2y ∂x4∂4y=k4yです。これらを運動方程式に代入すると、
−μω2y=−Tk2y−Bk4y−κyとなります。両辺に −1 をかけ、y=0 として割ると、
μω2=Tk2+Bk4+κです。したがって分散関係は
ω2=μκ+μTk2+μBk4となります。
ここで
Ω2=μκ,a=μT,b=μBとおくと、
ω2=Ω2+ak2+bk4と書けます。
この形を見ると、Ω2 は弾性基礎による局所的な復元効果、ak2 は張力による効果、bk4 は曲げ剛性による効果を表しています。Ω2 項や k4 項があるため、波数によって波の速さが変わる分散性が生じます。特に k4 項は、高波数側で分散性を強くする効果をもちます。
位相速度を表す
位相速度は、波の山や谷など、一定位相の点が進む速さです。定義より
vp=kωです。分散関係を用いると、
vp2=k2ω2=k2Ω2+a+bk2となります。
したがって、このリボンでは位相速度は一定ではなく、波数 k に依存します。
群速度を表す
群速度は、近い波数をもつ波を重ねたときにできる波束の包絡線が進む速さです。定義より
vg=dkdωです。
分散関係
ω2=Ω2+ak2+bk4を k で微分します。左辺は合成関数の微分により
dkdω2=2ωdkdωです。右辺を微分すると
dkd(Ω2+ak2+bk4)=2ak+4bk3となるので、
2ωdkdω=2ak+4bk3です。よって
vg=dkdω=ωak+2bk3となります。
位相速度と群速度が一致する条件
位相速度と群速度が一致する条件は
vp=vgです。つまり
kω=ωak+2bk3です。両辺に kω をかけると、
ω2=ak2+2bk4となります。
一方、分散関係より
ω2=Ω2+ak2+bk4です。これらを等しいものとして比較すると、
Ω2+ak2+bk4=ak2+2bk4となります。両辺から ak2 を消すと、
Ω2+bk4=2bk4したがって
bk4=Ω2です。よって、位相速度と群速度が一致する正の波数は
k∗=(bΩ2)1/4です。
ここで重要なのは、張力に由来する a が一致条件そのものには現れないことです。張力項は ω2 の中で ak2 として入り、位相速度と群速度の比較では同じ形で現れるため、条件式から消えます。
共通速度を求める
位相速度と群速度が一致するときの速さは、位相速度の式を使って
v∗2=k∗2Ω2+a+bk∗2と書けます。
一致条件
bk∗4=Ω2より、
k∗2=bΩです。したがって
k∗2Ω2=Ω/bΩ2=Ωbまた、
bk∗2=bbΩ=Ωbです。よって
v∗2=a+2Ωbとなります。
これは、v∗2 が、張力だけがある弦の波速の二乗 T/μ に、弾性基礎と曲げ剛性の組合せによる補正項 2Ωb が加わった形になっていることを表しています。ここで a=T/μ は速度そのものではなく、速度の二乗の次元をもつ量です。
数値を代入する
まず、
a=μT=8.00×10−27.20=90.0 m2s−2です。
次に、
b=μB=8.00×10−25.00×10−3=6.25×10−2 m4s−2なので、
b=0.250 m2s−1です。また、
Ω2=μκ=8.00×10−21.28=16.0 s−2より、
Ω=4.00 s−1です。
したがって
v∗2=a+2Ωb=90.0+2⋅4.00⋅0.250=92.0 m2s−2となります。
つまり
v∗=92 ms−1=223 ms−1です。
入力すべき無次元量は
N=1 m2s−2v∗2なので、
N=92です。
したがって、入力すべき自然数は
92です。