GSO005 問題3
問題文
真夏の夜の熱力学
問題文
真夏の夜、完全に断熱された密閉容器(寝室をモデル化したもの)の中に、質量 ma の空気が閉じ込められており、その初期温度は T1 であった。 暑さをしのぐため、この空間に初期温度 T2 (T2<T0)の氷を質量 mi だけ静かに置き、再び密閉した。
十分な時間が経過した後、室内の空気と氷(融けて水になっている状態を含む)は熱平衡状態に達し、全体の温度は T3 (T3>T0)となった。 この過程において、以下の条件を仮定する。 ・空気から氷(および水)への熱移動のみを考慮し、外部との熱のやり取りや容器の熱容量は無視できる。 ・空気の体積変化は無視でき、定積変化として扱う。空気の定積比熱を cv とする。 ・氷の比熱を ci、氷の融解熱を L、水の比熱を cw とする。 ・氷の融点を T0 とし、最終的に氷はすべて水になり、蒸発はしないものとする。
熱平衡時の温度 T3 を文字式で導出した後、与えられた制約の数値を代入し、T3 の値を求めよ。
制約
・空気の質量: ma=35 kg ・空気の定積比熱: cv=720 J/(kg\cdotK) ・空気の初期温度: T1=308 K ・氷の質量: mi=0.8 kg ・氷の初期温度: T2=248 K ・氷の比熱: ci=2100 J/(kg\cdotK) ・氷の融点: T0=273 K ・氷の融解熱: L=336000 J/kg ・水の比熱: cw=4200 J/(kg\cdotK)
入力形式
熱平衡時の温度 T3 の値を自然数でそのまま入力せよ。
解説
1. 各物質が失う熱量と得る熱量の定式化
外部との熱のやり取りがなく、容器の熱容量も無視できるため、熱量保存の法則が成り立ちます。 すなわち、「空気が失った熱量」と「氷(および水)が得た熱量」は等しくなります。
まず、温度 T1 の空気が T3 まで冷却される際に失う熱量 Qout は、体積が一定の定積変化であるため以下のように表されます。 Qout=macv(T1−T3)
次に、温度 T2 の氷が熱を吸収し、最終的に温度 T3 の水になるまでに得る熱量 Qin を考えます。これは以下の3つの過程に分けられます。
- 氷が T2 から融点 T0 まで温度上昇するのに必要な熱量: Q1=mici(T0−T2)
- 融点 T0 で氷がすべて水に融解するのに必要な熱量: Q2=miL
- 融解した水が T0 から T3 まで温度上昇するのに必要な熱量: Q3=micw(T3−T0)
これらを足し合わせると、氷と水が得た総熱量 Qin は、 Qin=mi{ci(T0−T2)+L+cw(T3−T0)} となります。
2. 熱量保存の法則に基づく方程式の構築
熱量保存の法則より、Qout=Qin であるから、 macv(T1−T3)=mi{ci(T0−T2)+L+cw(T3−T0)}
この式を未知数である T3 について解くために展開し、整理します。 macvT1−macvT3=mici(T0−T2)+miL+micwT3−micwT0 T3 を含む項を右辺へ、含まない項を左辺へ移項してまとめます。 macvT1+micwT0−mi{ci(T0−T2)+L}=(macv+micw)T3
したがって、求める温度 T3 の式は以下のようになります。 T3=macv+micwmacvT1+micwT0−mi{ci(T0−T2)+L}
3. 数値の代入と計算
与えられた制約の数値をそれぞれの項に代入していきます。
まず、分母にあたる熱容量の合計を計算します。 macv=35×720=25200 J/K micw=0.8×4200=3360 J/K 分母=25200+3360=28560 J/K
次に分子の各項を計算します。 1項目の空気の初期保有熱量に相当する項: macvT1=25200×308=7761600 J
2項目の水の基準温度に関する項: micwT0=3360×273=917280 J
3項目の氷の昇温と融解に必要な熱量の項: T0−T2=273−248=25 K ci(T0−T2)+L=2100×25+336000=52500+336000=388500 J/kg mi{ci(T0−T2)+L}=0.8×388500=310800 J
分子全体を足し引きします: 分子=7761600+917280−310800=8678880−310800=8368080 J
最後に、分子を分母で割って T3 を求めます。 T3=285608368080=2856836808=293 K
よって、最終的な熱平衡時の温度は 293 K (摂氏 20 ∘C であり、涼しい部屋の温度)となります。