GSO004 問題8
問題文
重力場中における相対単振動と融合
問題文
鉛直上向きを y 軸の正の向きとし、地面を y=0 とする。重力加速度の大きさを g とする。空気抵抗は無視できるものとする。
時刻 t=0 に、 y=H の位置から質量 M の小球Aを静かに落下させた。小球Aの下部には、質量が無視できるばね定数 k、自然長 l のばねの上端が固定されており、ばねは鉛直下向きに垂れ下がっている。ばねの下端には、質量が無視できる極めて軽い接着部がついている。
同時に(時刻 t=0 に)、地面(y=0)から質量 m の小球Bを鉛直上向きに初速 v0 で打ち上げた。
時刻 t=t1 に、小球Bはばねの下端の接着部に到達し、その瞬間に完全に接着して一体となった。小球Bが接着した瞬間、ばねの長さはちょうど自然長 l であったとする。また、接着部の質量はゼロであるため、接着の前後で小球Bの速度は変化しないものとする。
その後、小球Bはばねを圧縮しながら小球Aとの相対距離を縮めていき、小球Aと小球Bはばねを介して一体の系として運動する。やがて時刻 t=t2 において、接着後初めてばねが最も縮んだ状態となった。
ばねが最も縮んだときの、ばねの自然長からの縮み量を d とし、その瞬間(時刻 t=t2)における小球Aの y 座標を hA とする。
ばねが最も縮む前に小球Aと小球Bが直接衝突することはなく、また系が地面に落下する前に一連の運動は完結するものとして、以下の入力形式に従って解答せよ。
制約
- 小球Aの質量: M=4.0 kg
- 小球Bの質量: m=1.0 kg
- ばね定数: k=2000 N/m
- ばねの自然長: l=1.0 m
- 小球Aの初期高さ: H=11.0 m
- 小球Bの初速: v0=10 m/s
- 重力加速度の大きさ: g=9.8 m/s2
- 円周率: π とする。
入力形式
ばねの縮み量 d を m 単位で求め、その値を10倍した値を X とする。 また、小球Aの高さ hA を m 単位で求めると、その値は有限小数 α,β,γ を用いて以下のように表される。
hA=α−βπ−γπ2ここで、Y=100α+1000β+100000γ とする。
最終的な解答として、X×Y の値を計算し、自然数で答えよ。
解説
1. 時刻 t1 の決定と、接着直前の状態
小球Aと小球Bが空中で運動を開始してから、小球Bがばねの下端に到達するまでの運動を考えます。 時刻 t における小球Aの y 座標 yA(t) と、小球Bの y 座標 yB(t) は、それぞれ自由落下と鉛直投げ上げの公式より以下のようになります。
yA(t)=H−21gt2 yB(t)=v0t−21gt2ばねの上端は小球Aに固定されており、長さが自然長 l のまま落下しているため、ばねの下端の座標 yA′(t) は
yA′(t)=yA(t)−l=H−l−21gt2となります。小球Bがばねの下端に到達する時刻 t=t1 において、yA′(t1)=yB(t1) が成り立ちます。
H−l−21gt12=v0t1−21gt12両辺から −21gt12 が相殺されることに注目してください。これは、重力場中において両者が同じ重力加速度を受けているため、相対加速度がゼロになり、相対速度が一定に保たれることを意味します。
v0t1=H−l t1=v0H−l与えられた数値を代入すると、
t1=1011.0−1.0=1010.0=1.0 sとなります。この時刻 t1 における小球Aと小球Bの速度 vA1,vB1 は、
vA1=−gt1=−9.8×1.0=−9.8 m/s vB1=v0−gt1=10−9.8=0.2 m/sと求まります。
2. 重心系の運動
接着後、小球Aと小球Bはばねの弾性力によって互いに力を及ぼし合いますが、これは系全体にとっての内力です。系に働く外力は重力のみであるため、系の重心 G の運動は、全質量が重心に集中した1つの質点の放物運動と完全に等価になります。
時刻 t=0 における系の重心の初期位置 yG0 と初期速度 vG0 を求めます。
yG0=M+mMH+m⋅0=4.0+1.04.0×11.0+1.0×0=5.044.0=8.8 m vG0=M+mM⋅0+mv0=5.01.0×10=2.0 m/s重心 G は、この初期状態から加速度 −g で運動を続けるため、任意の時刻 t における重心の位置 yG(t) は以下の式で表されます。
yG(t)=yG0+vG0t−21gt2=8.8+2.0t−4.9t2念のため、時刻 t1=1.0 s での重心位置 yG1 を確認すると、 yG1=8.8+2.0(1.0)−4.9(1.0)2=10.8−4.9=5.9 m となります。(時刻 t1 における yA と yB から重心を計算しても 54×6.1+1×5.1=5.9 m となり一致します)。
3. 重心系から見た相対運動とばねの縮み量 d
ここからがこの問題の最大のポイントです。 小球Aと小球Bからなる系を、重心 G とともに並進する座標系(重心系) から観察します。重心系は加速度 −g で運動している非慣性系であるため、系内の各質点には上向きに大きさ Mg および mg の慣性力が働きます。 この慣性力は、下向きに働く重力と完全に釣り合って相殺されます。したがって、重心系から見れば、重力は存在せず、小球Aと小球Bがばねを介して無重力空間で運動しているのと同じ状態になります。
時刻 t1 の直後、重心系から見た小球Aと小球Bの相対速度を考えます。 両者の相対速度の大きさ vrel は、慣性系から見た相対速度と等しいため、
vrel=vB1−vA1=0.2−(−9.8)=10.0 m/s=v0重力による加速度が等しいため、初速の相対速度 v0 が衝突時までそのまま維持されていたことがわかります。
重心系における系の力学的エネルギーは、換算質量 μ を用いた相対運動の運動エネルギーとして表されます。
μ=M+mMm=4.0+1.04.0×1.0=5.04.0=0.8 kg接着直後(ばねが自然長の瞬間)の重心系における力学的エネルギー Erel は、
Erel=21μvrel2=21×0.8×(10.0)2=40 Jばねが最も縮んだ瞬間、重心系から見た小球Aと小球Bの相対速度は 0 になります。このとき、運動エネルギーはすべてばねの弾性エネルギーに変換されているため、エネルギー保存則より以下の式が成り立ちます。
21kd2=Erel 21×2000×d2=40 1000d2=40⟹d2=0.04⟹d=0.2 mよって、ばねの最大縮み量は d=0.2 m と求まります。 ここから、X の値は以下のようになります。
X=d×10=0.2×10=24. ばねが最も縮む時刻 t2 と小球Aの高さ hA
重心系における小球Aと小球Bの相対運動は、ばね定数 k、換算質量 μ の単振動となります。この単振動の周期 T は、
T=2πkμ=2π20000.8=2π25001=502π=25π s接着した時刻 t1 はばねが自然長(振動の中心)の瞬間であり、そこから初めて最も縮む(振動の端)までの時間は 4T です。 したがって、時刻 t2 は、
t2=t1+4T=1.0+41×25π=1.0+0.01π sとなります。
次に、この時刻 t2 における重心の高さ yG(t2) を計算します。先ほど求めた重心位置の式に t2 を代入します。
yG(t2)=8.8+2.0(1.0+0.01π)−4.9(1.0+0.01π)2 =8.8+2.0+0.02π−4.9(1.0+0.02π+0.0001π2) =10.8+0.02π−4.9−0.098π−0.00049π2 =5.9−0.078π−0.00049π2 m最後に、時刻 t2 における小球Aの高さ hA を求めます。 時刻 t2 において、ばねは d だけ縮んでいるため、小球Aと小球Bの距離は l−d=1.0−0.2=0.8 m です。 小球Aと小球Bの重心は、AからBに向かって質量比の逆比、すなわち m:M=1:4 の位置にあります。 したがって、小球Aは重心 G から上方(y 軸正の向き)に、以下の距離だけ離れた位置に存在します。
重心からのAの変位=M+mm(l−d)=51×0.8=0.16 mよって、小球Aの高さ hA は、
hA=yG(t2)+0.16=(5.9−0.078π−0.00049π2)+0.16 hA=6.06−0.078π−0.00049π2となります。
5. 最終解答の算出
導出された hA の式を、指定された入力形式 hA=α−βπ−γπ2 と比較します。
- α=6.06
- β=0.078
- γ=0.00049
Y の値を計算します。
Y=100α+1000β+100000γ Y=100(6.06)+1000(0.078)+100000(0.00049) Y=606+78+49=733最終解答として X×Y を求めます。
X×Y=2×733=1466解答: 1466