GSO004 問題7
問題文
逆ヘルムホルツコイルと超伝導リングが織りなす磁気スプリング
問題文
空間に xyz 座標系をとる。真空の透磁率を μ0 とする。 z 軸を中心軸とする、半径 a の2つの円形固定コイルA, Bがある。 コイルAは z=d の平面上に固定されており、z 軸正の向きから見て反時計回りに一定の電流 I0 が流れている。 コイルBは z=−d の平面上に固定されており、z 軸正の向きから見て時計回りに一定の電流 I0 が流れている。
この系の中心軸上に、質量 m、半径 b (b≪a)、自己インダクタンス L の超伝導円形コイルC(電気抵抗は 0 )が配置されている。 コイルCは、その中心が常に z 軸上にあり、かつコイル面が常に xy 平面と平行を保つように拘束されながら、z 軸上をなめらかに運動できる。 z 軸正の向きと右ねじの関係にある向きを、コイルCに流れる電流 i の正の向きとする。 コイルCは非常に小さいため、コイルA, Bの電流がコイルCを貫いて作る磁束 Φext は、中心軸上の磁束密度 Bz(z) とコイルCの面積の積で近似できるものとする。
コイルCは初期状態として原点 z=0 に固定されており、このときコイルCに流れる電流は i=0 であった。 時刻 t=0 にコイルCの固定を静かに外すと同時に、z 軸方向に微小な初速度を与えたところ、コイルCは原点付近で微小振動を行った。重力の影響は無視できるものとする。
制約
各物理量には以下の数値が割り当てられている。
- μ0=4π×10−7 H/m
- a=0.04 m
- d=0.03 m
- b=0.005 m
- I0=10 A
- m=34×10−3 kg
- L=3×10−7 H
入力形式
コイルCの微小振動の周期 T は、互いに素な自然数 A,B を用いて以下のように表される。
T=BπA [s]A+B の値を自然数で解答せよ。
解説
この問題は、不均一な磁場空間における超伝導リングの磁束保存と、それに伴うローレンツ力による単振動を解析する問題です。いわゆる「磁気スプリング」のモデルとなります。
1. 中心軸上の磁場と原点付近での近似
まず、ビオ・サバールの法則を用いて、コイルA, Bが z 軸上の点 z に作る磁束密度 Bz(z) を求めます。 半径 a、電流 I の円電流が中心軸上の距離 r 離れた点に作る磁場は 2(a2+r2)3/2μ0Ia2 と表されます。 コイルAは z=d にあり、I0 が反時計回り(+z 方向の磁場を作る)に流れています。 コイルBは z=−d にあり、I0 が時計回り(−z 方向の磁場を作る)に流れています。 したがって、合成磁場の z 成分 Bz(z) は次のように立式できます。
Bz(z)=2μ0I0a2[(a2+(z−d)2)3/21−(a2+(z+d)2)3/21]原点付近での微小振動を考えるため、∣z∣≪d として z の1次まで近似(テーラー展開)します。
(a2+(z∓d)2)−3/2=(a2+d2∓2dz+z2)−3/2≈(a2+d2)−3/2(1∓a2+d22dz)−3/2ここで (1+x)n≈1+nx の近似を用いると、
≈(a2+d2)−3/2(1±a2+d23dz)これを Bz(z) の式に代入します。
Bz(z)≈2(a2+d2)3/2μ0I0a2[(1+a2+d23dz)−(1−a2+d23dz)]=(a2+d2)5/23μ0I0a2dzこの比例定数を K とおくと、Bz(z)≈Kz と表せます。
2. 磁束保存則と誘導電流
超伝導コイルCの電気抵抗は 0 であるため、コイルCを貫く全磁束 Φ は時間的に一定に保たれます(磁束保存則)。 外部磁束 Φext(z) は、コイルCが十分小さいことから Φext(z)≈πb2Bz(z)≈πb2Kz となります。 全磁束は外部磁束と自己誘導による磁束の和で表されます。
Φ=Φext(z)+Li(z)初期状態 z=0 において、Φext(0)=0 かつ i(0)=0 であるため、全磁束は常に 0 です。
πb2Kz+Li(z)=0⟹i(z)=−Lπb2Kz3. コイルCが受ける電磁力(復元力)
コイルCが受ける z 方向の力 Fz を求めます。コイルCの位置における磁束密度の動径成分 Br を評価する必要があります。 マクスウェル方程式の ∇⋅B=0 を円柱座標系で適用します。対称性から Bz は r にあまり依存しないとすると、
r1∂r∂(rBr)+∂z∂Bz≈0積分することで、コイルCの半径 r=b における動径成分 Br(b) が求まります。
rBr≈−∫r∂z∂Bzdr=−2r2∂z∂Bz⟹Br(b)≈−2b∂z∂Bzここで ∂z∂Bz≈K であるため、Br(b)≈−2bK となります。 微小部分 dl が受けるローレンツ力 dF=idl×B の z 成分を全周で積分します。電流の正の向きは θ 方向であり、θ^×r^=−z^ の関係に注意すると、
Fz=∮i(dl)Br(−1)=−i(2πb)Br=−i(2πb)(−2bK)=πb2Kiこれにステップ2で求めた i(z)=−Lπb2Kz を代入します。
Fz=−L(πb2K)2zこれは z に比例する負の力であり、明らかな復元力です。実効的なばね定数を keff=L(πb2K)2 とおくと、単振動の角振動数 ω は ω=mkeff=mLπb2K となります。
4. 数値計算
与えられた数値を代入して K を計算します。 a2=(0.04)2=1.6×10−3 d2=(0.03)2=0.9×10−3 a2+d2=2.5×10−3 (a2+d2)5/2=(2.5×10−3)5/2=3.125×10−7
K=3.125×10−73(4π×10−7)(10)(1.6×10−3)(0.03)=3.125×10−757.6π×10−11=18.432π×10−4次に πb2K を計算します。b2=(0.005)2=2.5×10−5 より、
πb2K=π(2.5×10−5)(18.432π×10−4)=46.08π2×10−9実効ばね定数 keff は、
keff=3×10−7(46.08π2×10−9)2=3×10−72123.3664π4×10−18=707.7888π4×10−11角振動数 ω は、
ω=(4/3)×10−3707.7888π4×10−11=530.8416π4×10−8ここで 530.8416=23.04 と綺麗に平方根が外れます。
ω=23.04π2×10−4=2.304π2×10−3 [rad/s]最後に周期 T を求めます。
T=ω2π=2.304π2×10−32π=2.304π2000=2304π2000000分数 23042000000 を約分します。 2000000=27×56 、 2304=28×32 より、最大公約数は 27=128 です。
2304÷1282000000÷128=1815625したがって、周期 T は以下のように表されます。
T=18π15625 [s]A=15625、 B=18 であり、これらは互いに素です。 求める値は A+B=15625+18=15643 となります。