GSO004 問題5
問題文
磁気力によるプルイン現象
問題文
水平な絶縁体の床の上に、長さ L の十分に細くまっすぐな導体棒Aが固定されている。空間には鉛直下向きに一様な重力場が存在し、重力加速度の大きさを g とする。
Aの真上には、Aと平行に長さ L、質量 m の細くまっすぐな剛体の導体棒Bが配置されている。Bの両端は、鉛直方向に張られた絶縁性の軽いばねで上方から吊るされており、水平かつAと平行を保ったまま鉛直方向にのみなめらかに移動できる。Bを吊るしているばね全体の合成ばね定数を K とする。
AおよびBに電流を流さないとき、Bは静止しており、AとBの距離は d であった。また、この静止状態において、ばねは自然長から Δl だけ伸びていた。
次に、AとBに同じ向きに大きさ I の電流を流した。電流を流すための導線が及ぼす力や、棒の端部における磁場の乱れ、地磁気などの影響は無視できるものとし、真空の透磁率を μ0 とする。
電流 I を 0 から非常にゆっくりと大きくしていくと、平行電流間にはたらく引力によってBはAに引き寄せられて徐々に下がっていく。そして、電流が Ic を超えた直後、力の釣り合いの位置が存在しなくなり、BはAに向かって急激に落下した(この現象は微小電気機械システム等で見られる「プルイン現象」の磁気力版モデルである)。
この臨界電流 Ic の値を求めよ。
制約
- L=2.0 m
- m=0.40 kg
- d=0.0145 m
- Δl=0.0245 m
- g=9.8 m/s2
- μ0=4π×10−7 N/A2
入力形式
臨界電流 Ic の値をアンペア(A)単位で求め、その数値を回答せよ。答えは自然数となる。
解説
1. 電流を流す前の力の釣り合い
まず、電流を流す前の状態を考えます。導体棒Bにはたらく力は、下向きの重力 mg と、ばねの伸び Δl による上向きの弾性力 KΔl です。 Bは静止しているため、以下の力の釣り合いの式が成り立ちます。 KΔl=mg これより、ばね定数 K は以下のように表されます。 K=Δlmg
2. 電流 I を流したときの力の釣り合い
次に、電流 I を流したとき、Bが釣り合いを保って静止している状態を考えます。このときのAとBの距離を x (0<x<d)とします。
電流が 0 のときのAとBの距離は d であり、このときばねは Δl だけ伸びていました。 距離が x に減少したということは、Bは下方に d−x だけ移動したことになります。したがって、このときのばね全体の伸びは Δl+(d−x) となります。 ばねによる上向きの弾性力 Fk は次のようになります。 Fk=K{Δl+(d−x)}
また、平行な導線に同じ向きの電流 I が流れるとき、導線間には引力(アンペール力)がはたらきます。距離 x だけ離れた長さ L の平行導線間にはたらく力の大きさ Fm は、以下の式で与えられます。 Fm=2πxμ0I2L この力は引力であるため、Bには下向きにはたらきます。
Bにはたらく力の釣り合いの式(上向きを正)を立てると、 K{Δl+(d−x)}−mg−2πxμ0I2L=0 ここで、初期状態の釣り合いの式 KΔl=mg を用いると、重力の項と初期のばねの弾性力が相殺され、次のように極めてシンプルな関係式が得られます。 K(d−x)−2πxμ0I2L=0 両辺に x をかけて整理すると、x についての二次方程式が得られます。 Kx2−Kdx+2πμ0I2L=0
3. 臨界電流 Ic の導出
Bが釣り合いの位置を保って静止できるためには、上記の二次方程式が実数解 x を持つ必要があります。 二次方程式の判別式を D とすると、実数解を持つための条件は D≥0 です。 D=(−Kd)2−4⋅K⋅2πμ0I2L≥0 K2d2−π2μ0I2LK≥0 K>0 であるため、両辺を K で割り、I2 について解くと、 I2≤2μ0LπKd2 この不等式を満たす最大の電流値が、釣り合いを保てる限界である臨界電流 Ic となります。したがって、 Ic=d2μ0LπK となります。(なお、このとき D=0 であり、x=2d となります。つまり、最初の距離の半分の位置を超えると静止できずに吸着します。)
4. 数値の計算
求めた K=Δlmg を Ic の式に代入します。 Ic=d2μ0LΔlπmg 与えられた制約の数値を代入します。
- L=2.0 m
- m=0.40 kg
- d=0.0145 m
- Δl=0.0245 m
- g=9.8 m/s2
- μ0=4π×10−7 N/A2
まず、根号の中身を計算します。 2μ0LΔlπmg=2×(4π×10−7)×2.0×0.0245π×0.40×9.8 分子の π と分母の π は約分されます。 =2×4×10−7×2.0×0.02450.40×9.8=16×10−7×0.02453.92 分母の数値部分 16×0.0245 を計算します。 16×0.0245=16×10000245=100003920=0.392 これを用いて式を整理すると、 =0.392×10−73.92=10−710=108
これを Ic の式に戻して平方根をとります。 Ic=0.0145×108=0.0145×10000=145 A よって、求める臨界電流は 145 A となります。
最終的な回答は、単位を除いた自然数となるため「145」です。