問題文
減衰振動の解析:重厚防音扉のドアクローザー設計
問題文
次世代の防音室に設置された、自動閉鎖機構(ドアクローザー)付きの重厚なスライドドアの運動を考えます。
このドアは質量 m の質点とみなすことができ、水平な x 軸に沿って1次元的に運動します。ドアが完全に閉まった位置を原点 x=0 とし、ドアが開く方向を正の向きとします。
ドアクローザーには、ドアを閉めるためのバネと、閉まる速度を抑え衝撃を和らげるためのオイルダンパーが内蔵されています。ドアの位置を x、速度を v=dtdx としたとき、ドアにはバネによる復元力 −kx と、ダンパーによる粘性抵抗力 −γv のみが水平方向に働きます。レールとの間の摩擦力など、その他の力は一切無視できるものとします。
時刻 t=0 に、ドアを x=x0 (x0>0)の位置まで開き、静かに手を放しました(初速度は 0)。
実験室の温度を変えることでダンパー内のオイルの粘性が変化し、減衰係数 γ を以下の3つのケースに設定して運動を観測しました。
ケース1(冬場・高粘度): γ=γ1
オイルが硬く、ドアは過減衰の運動をしました。
時刻 t=ln2 s におけるドアの位置を x1 [m] とします。
ケース2(適温・最適調整): γ=γ2
ドアが最も速く、かつ振動せずに閉まる臨界減衰の運動をしました。
時刻 t=0.5 s におけるドアの位置を x2 [m] とします。この x2 は定数 C を用いて x2=Ce−1 と表されます(e はネイピア数)。
ケース3(夏場・低粘度): γ=γ3
オイルが柔らかく、ドアは**不足減衰(減衰振動)**の運動をしました。
手を放してから初めてドアが x=0 の位置(完全に閉まった位置)を通過する時刻を t3 [s] とします。この t3 の2乗は、互いに素な自然数 P,Q を用いて t32=QPπ2 と表されます(π は円周率)。
各ケースの力学的な振る舞いを微分方程式から解析し、最終的な数値を求めてください。
制約
- ドアの質量: m=100 kg
- バネ定数: k=400 N/m
- 初期変位: x0=0.96 m
- ケース1の減衰係数: γ1=500 N⋅s/m
- ケース2の減衰係数: γ2=400 N⋅s/m
- ケース3の減衰係数: γ3=200 N⋅s/m
入力形式
各ケースの解析結果から以下の3つの値 N1,N2,N3 を計算し、その合計値 N=N1+N2+N3 を自然数で回答せよ。
- N1=x1×100
- N2=C×100
- N3=P+Q
本問は、古典力学における減衰振動のモデルを定係数2階線形同次微分方程式として立式し、減衰係数 γ の値による解の振る舞い(過減衰、臨界減衰、不足減衰)を厳密に解析する総合問題です。
運動方程式の立式と一般化
質量 m のドアに対する運動方程式は、ニュートンの運動第二法則より次のように立式できます。
mdt2d2x=−kx−γdtdx
これを整理すると、
mdt2d2x+γdtdx+kx=0
制約で与えられた定数 m=100, k=400 を代入し、両辺を 100 で割ると以下の基本方程式を得ます。
dt2d2x+100γdtdx+4x=0
また、共通の初期条件として、時刻 t=0 で x(0)=0.96, v(0)=dtdx(0)=0 が与えられています。
ケース1:過減衰(γ1=500 N⋅s/m)
γ=500 を基本方程式に代入します。
dt2d2x+5dtdx+4x=0
この微分方程式を解くため、特性方程式 λ2+5λ+4=0 を考えます。
左辺を因数分解すると (λ+1)(λ+4)=0 となり、特性根は λ=−1,−4 という異なる2つの実数解を持ちます。これが過減衰の条件です。
したがって、一般解は積分定数 A1,A2 を用いて次のように表されます。
x(t)=A1e−t+A2e−4t
これを時間 t で微分し、速度 v(t) を求めます。
v(t)=−A1e−t−4A2e−4t
初期条件 x(0)=0.96, v(0)=0 を代入して連立方程式を立てます。
A1+A2=0.96…①
−A1−4A2=0…②
②より A1=−4A2。これを①に代入すると、−3A2=0.96⟹A2=−0.32 となります。
よって A1=−4×(−0.32)=1.28。
ドアの変位は以下の式で確定します。
x(t)=1.28e−t−0.32e−4t
時刻 t=ln2 s における位置 x1 を求めます。
e−ln2=eln21=21
e−4ln2=eln(2−4)=161
これらを代入して計算します。
x1=1.28×21−0.32×161=0.64−0.02=0.62 [m]
したがって、求める値 N1 は以下の通りです。
N1=0.62×100=62
ケース2:臨界減衰(γ2=400 N⋅s/m)
γ=400 を代入します。
dt2d2x+4dtdx+4x=0
特性方程式は λ2+4λ+4=0 となり、(λ+2)2=0 より重解 λ=−2 を持ちます。これが臨界減衰の条件です。
重解の場合、一般解は (B1+B2t) という線形項を伴い、次のように表されます。
x(t)=(B1+B2t)e−2t
速度 v(t) は積の微分法を用いて求めます。
v(t)=B2e−2t−2(B1+B2t)e−2t=(B2−2B1−2B2t)e−2t
初期条件を適用します。
x(0)=B1=0.96
v(0)=B2−2B1=0⟹B2=2×0.96=1.92
変位の式が確定します。
x(t)=(0.96+1.92t)e−2t=0.96(1+2t)e−2t
時刻 t=0.5 s における位置 x2 を計算します。
x2=0.96(1+2×0.5)e−2×0.5=0.96×2×e−1=1.92e−1 [m]
問題文より x2=Ce−1 であるため、C=1.92 となります。
したがって、求める値 N2 は以下の通りです。
N2=1.92×100=192
ケース3:不足減衰(γ3=200 N⋅s/m)
γ=200 を代入します。
dt2d2x+2dtdx+4x=0
特性方程式は λ2+2λ+4=0 となります。二次方程式の解の公式より、
λ=−1±12−4=−1±3i
特性根が共役複素数となるこの状態が**不足減衰(減衰振動)**です。
オイラーの公式を用いて実数関数で表現すると、一般解は以下のようになります。
x(t)=e−t(D1cos3t+D2sin3t)
速度 v(t) を求めます。
v(t)=−e−t(D1cos3t+D2sin3t)+e−t(−3D1sin3t+3D2cos3t)
初期条件を適用します。
x(0)=D1=0.96
v(0)=−D1+3D2=0⟹D2=3D1=30.96
変位の式が確定します。
x(t)=e−t(0.96cos3t+30.96sin3t)
手を放してから初めて x=0 となる時刻 t3 を求めます。e−t>0 であるため、括弧の中身が 0 になる条件を考えます。
0.96cos3t3+30.96sin3t3=0
両辺を 0.96 で割り、3 を掛けます。
3cos3t3+sin3t3=0
ここで cos3t3=0 と仮定すると sin3t3=±1 となり上式を満たさないため、cos3t3=0 です。両辺を cos3t3 で割ります。
3+tan3t3=0⟹tan3t3=−3
t3>0 においてこれを満たす最小の角度は 3t3=π−3π=32π です。
t3=332π [s]
これを2乗します。
t32=274π2=274π2
問題文より t32=QPπ2 であり、4 と 27 は互いに素な自然数であるため、P=4, Q=27 と確定します。
したがって、求める値 N3 は以下の通りです。
N3=4+27=31
最終解答
各ケースから得られた値を合算します。
N=N1+N2+N3=62+192+31=285
最終的な自然数は 285 となります。