GSO003 問題6
問題文
ばねとストッパーを備えたピストンの熱力学サイクル
問題文
断面積Sのなめらかに動く質量が無視できるピストンを持つ円筒形シリンダーが、鉛直上向きに固定されている。シリンダー内には単原子分子理想気体が封入されている。シリンダーの外部の気圧(大気圧)はP0で一定である。 ピストンの上方には、ばね定数kのばねが鉛直に取り付けられている。このばねの上端は固定されており、下端はピストンが基準位置にあるときに、自然長の状態でピストンの上面にちょうど触れるようになっている。なお、ばね定数kは、k=3V02P0S2を満たすように調整されている。
この気体に対して、以下の過程からなる熱力学サイクル(状態A → 状態B → 状態C → 状態A)を行わせた。
- 状態A: 気体の体積はV0、圧力はP0であり、ピストンは静止している。このとき、ばねは自然長でピストンにちょうど触れている。
- 過程A → B: 気体にゆっくりと熱を与えたところ、気体は膨張してピストンが上昇し、ばねを押し縮めた。気体の体積が4V0になったところで加熱を止め、この状態を状態Bとした。
- 過程B → C: 状態Bにおいて、ピストンの位置が動かないようにストッパーを挿入して固定した。その後、気体からゆっくりと熱を奪い、気体の圧力がP0に下がったところで放熱を止め、この状態を状態Cとした。
- 過程C → A: 状態Cにおいて、ピストンの位置を保持したまま、ばねをピストンから静かに取り外した。その後、ストッパーを外し、気体の圧力が常に大気圧P0と釣り合うようにしながら気体からゆっくりと熱を奪い、体積をV0に戻して状態Aに復帰させた。
この1サイクルの熱効率eを求めよ。
制約
- 大気圧: P0=1.0×105Pa
- 状態Aにおける気体の体積: V0=1.0×10−3m3
- シリンダーの断面積: S=1.0×10−2m2
- ばね定数: k=3V02P0S2=320000N/m
- 気体定数: R=8.31J/(mol⋅K)
入力形式
この熱機関の熱効率eは、既約分数ba(a,bは互いに素な自然数)として表される。 a+bの値を計算し、自然数で回答せよ。
解説
本問は、ばねの弾性力が関与する気体の状態変化と、それらを組み合わせた熱力学サイクルにおける熱効率を求める問題です。各過程における気体の圧力Pと体積Vの関係を明らかにし、P−Vグラフ上の面積から仕事を、熱力学第一法則から吸収・放出する熱量を計算していきます。
1. 各状態における気体の圧力と体積の導出
【状態A】 問題文より、気体の体積はVA=V0、圧力はPA=P0です。
【状態B】 過程A → Bにおいて、気体の体積がVになったときのピストンの上昇距離(ばねの縮み)をxとします。体積の増加分はシリンダーの断面積Sとxを用いて以下のように表せます。
V−V0=Sx⟹x=SV−V0このとき、質量無視のピストンに働く鉛直方向の力のつり合いを考えます。上向きに気体の圧力による力PS、下向きに大気圧による力P0Sとばねの弾性力kxが働きます。
PS=P0S+kxこれにxの式を代入して整理すると、過程A → Bにおける圧力Pと体積Vの関係式が得られます。
P=P0+S2k(V−V0)状態Bでは体積がVB=4V0に達します。問題の条件よりk=3V02P0S2であるため、これを代入して状態Bの圧力PBを求めます。
PB=P0+3V0S22P0S2(4V0−V0)=P0+3V02P0×3V0=P0+2P0=3P0【状態C】 過程B → Cはピストンを固定した定容変化であるため、体積はVC=4V0のままです。冷却によって圧力がP0に下がったとあるため、圧力はPC=P0です。
2. 各過程における仕事と熱量の計算
熱力学第一法則ΔU=Qin−Woutより、気体が吸収した熱量QinはQin=ΔU+Woutとなります。単原子分子理想気体の内部エネルギーはU=23PVと表せることを利用します。
【過程A → B(吸熱過程)】 P−Vグラフ上で、状態A(V0,P0)と状態B(4V0,3P0)を結ぶ直線になります。気体が外部にした仕事WABは、この直線の下部の台形の面積に等しくなります。
WAB=21(PA+PB)(VB−VA)=21(P0+3P0)(4V0−V0)=21×4P0×3V0=6P0V0内部エネルギーの変化量ΔUABは以下の通りです。
ΔUAB=23(PBVB−PAVA)=23(3P0⋅4V0−P0V0)=23(11P0V0)=233P0V0=16.5P0V0したがって、この過程で気体が吸収した熱量QABは、
QAB=ΔUAB+WAB=16.5P0V0+6P0V0=22.5P0V0=245P0V0(※ P,Vがともに単調増加しているため、この過程では常に熱を吸収し続けています)
【過程B → C(放熱過程)】 定容変化のため、気体が外部にする仕事WBC=0です。 内部エネルギーの変化量ΔUBCは、
ΔUBC=23(PCVC−PBVB)=23(P0⋅4V0−3P0⋅4V0)=23(−8P0V0)=−12P0V0QBC=−12P0V0となり、これは放熱過程であることを示しています。
【過程C → A(放熱過程)】 ばねが外され、常に大気圧P0と等しい圧力を保ちながら収縮する定圧変化です。 気体が外部にした仕事WCAは、
WCA=PA(VA−VC)=P0(V0−4V0)=−3P0V0内部エネルギーの変化量ΔUCAは、
ΔUCA=23(PAVA−PCVC)=23(P0V0−P0⋅4V0)=23(−3P0V0)=−4.5P0V0QCA=ΔUCA+WCA=−4.5P0V0−3P0V0=−7.5P0V0となり、これも放熱過程です。
3. 熱効率の算出
1サイクルを通じて気体が外部にした正味の仕事Wnetは、各過程の仕事の和(またはP−Vグラフ上のサイクルの閉曲線が囲む面積)となります。
Wnet=WAB+WBC+WCA=6P0V0+0−3P0V0=3P0V01サイクルにおいて気体が吸収した総熱量Qinは、吸熱過程であるA → Bで吸収した熱量のみをカウントします。
Qin=QAB=245P0V0熱機関の熱効率eは、吸収した熱量に対する正味の仕事の割合なので、
e=QinWnet=245P0V03P0V0=456=152熱効率は既約分数152として求められました。 したがって、a=2,b=15となり、a+b=2+15=17が最終的な解答となります。
最終解答: 17