問題文
シュレの跳躍:質点と化した猫の斜方投射
問題文
ある日、物理学を専攻する学生は、愛猫の「シュレ」が驚異的なジャンプを見せるのを目撃した。
シュレは水平な床の上からジャンプし、前方に置かれた観葉植物(障害物)の先端をすれすれで飛び越え、そのまま床に置かれたお気に入りのおもちゃに見事着地したのである。
学生は「猫は質点である」という物理学者特有の大胆な仮定を用い、この神業的なジャンプの初速度を解析することにした。
ジャンプの開始地点を原点 O(0,0) とし、水平右向きに x 軸、鉛直上向きに y 軸をとる。
シュレは原点から仰角 θ (0<θ<2π)、初速 v0 で斜方投射されたとする。
障害物の先端の座標は (L,H)、おもちゃの座標は (D,0) である。
空気抵抗は無視できるものとし、重力加速度の大きさを g とする。
シュレの軌跡が (L,H) および (D,0) を通るという条件から、初速度の2乗 v02 を導き出すことができる。
制約
- 障害物までの水平距離 L=1.0 m
- 障害物の高さ H=0.50 m
- 着地地点までの水平距離 D=1.6 m
- 重力加速度の大きさ g=9.8 m/s2
入力形式
与えられた制約の数値を用いて v02 の値を計算せよ。
答えは既約分数 BA (A,B は互いに素な自然数)となるので、A+B の値を自然数で回答せよ。
本問は、斜方投射の軌跡の式を用いて、未知の初速度 v0 と投射角 θ を決定する典型的な標準問題です。一見すると文字が多く複雑に見えますが、着地地点 (D,0) の条件をうまく使うことで、計算を劇的に簡略化することができます。
1. 軌跡の式の導出
まずは基本となる斜方投射の軌跡の式を導出します。
時間 t におけるシュレの座標 (x,y) は、初速 v0 の各成分を用いて次のように表されます。
x=(v0cosθ)t
y=(v0sinθ)t−21gt2
x の式より t=v0cosθx となるので、これを y の式に代入して t を消去します。
y=(v0sinθ)(v0cosθx)−21g(v0cosθx)2
整理すると、以下の軌跡の式が得られます。
y=xtanθ−2v02cos2θgx2
2. 拘束条件の適用
シュレは着地地点 (D,0) を通るため、軌跡の式に代入します。
0=Dtanθ−2v02cos2θgD2
D=0 より両辺を D で割り、移項して整理すると、以下の重要な関係式が得られます。
2v02cos2θgD=tanθ⋯①
これを変形し、軌跡の式の第2項の係数部分を tanθ と D で表しておきます。
2v02cos2θg=Dtanθ⋯②
次に、シュレは障害物の先端 (L,H) をすれすれで通過するため、これも軌跡の式に代入します。
H=Ltanθ−2v02cos2θgL2
ここに先ほどの式②を代入することで、v0 を消去し θ のみを残すことができます。
H=Ltanθ−L2(Dtanθ)
H=Ltanθ(1−DL)=DL(D−L)tanθ
これにより、仰角 θ が満たすべき条件が決定されます。
tanθ=L(D−L)HD
3. 具体的な数値の代入
与えられた制約の数値を代入し、tanθ の値を求めます。
tanθ=1.0×(1.6−1.0)0.50×1.6=0.600.80=34
これにより、このジャンプの投射角は tanθ=34 (約 53∘)であることが分かります。
4. 初速度の平方 v02 の算出
式①を変形して v02 を求めます。
v02=2tanθcos2θgD
ここで、三角関数の相互関係 cos2θ1=1+tan2θ を用いると、cosθ を直接求めずとも計算が可能です。
v02=2tanθgD(1+tan2θ)
tanθ=34 より tan2θ=916 なので、1+tan2θ=925 となります。
最後に、残りの数値(g=9.8, D=1.6)を代入します。
v02=2×349.8×1.6×925=915.68×25×83
v02=9392×83=9×8392×3=349
初速度の2乗は v02=349 (m/s)2 となります。
既約分数 BA の形になっており、A=49, B=3 (互いに素な自然数)です。
したがって、求める値 A+B は以下のようになります。
49+3=52