問題文
磁場閉じ込め式核融合炉における質量欠損と粒子の運動
問題文
重水素(D)と三重水素(T)を用いた核融合反応(D-T反応)は、次世代のエネルギー源として期待されています。本問では、磁場を用いたプラズマ閉じ込め方式の核融合炉内における、単一の反応モデルを考えます。
真空中の座標空間において、z軸の正の向きに一様な磁束密度Bの磁場が存在しています。
座標原点(0,0,0)において、静止していた重水素原子核(質量mD、電荷+e)と三重水素原子核(質量mT、電荷+e)が核融合反応を起こし、ヘリウム原子核であるアルファ粒子(質量mα、電荷+2e)と中性子(質量mn、電荷0)が生成されました。
この反応において、生成物の核子あたりの結合エネルギーが反応前よりも大きいため、反応後の系の質量の総和は反応前より減少します。この減少した質量(質量欠損)Δmは、アインシュタインの質量とエネルギーの等価性に基づき、完全に生成物(アルファ粒子と中性子)の運動エネルギーに変換されるものとします。
生成されたアルファ粒子と中性子は、運動量保存則に従いxy平面内に互いに逆向きに放出されました。アルファ粒子は磁場からローレンツ力を受け、xy平面内で等速円運動を行います。一方、電荷を持たない中性子は磁場の影響を受けないため、運動量保存則によって決まった放出方向へとそのまま直進し、炉壁に向かいます。
真空中の光速をcとし、反応前の粒子の持つ運動エネルギーは、反応によって放出されるエネルギーに比べて無視できるほど小さく、初期状態では完全に静止していたものとして計算してください。
また本問においては、生成される粒子の速さは光速cに比べて十分に小さいものとみなし、運動エネルギーや運動量の計算には非相対論的力学(古典力学)の公式を適用してください。
このとき、アルファ粒子の描く等速円運動の半径Rを求めてください。
制約
各物理量には以下の厳密な数値を適用すること。
- mD=3.30×10−27 kg
- mT=4.95×10−27 kg
- mα=6.40×10−27 kg
- mn=1.60×10−27 kg
- e=1.60×10−19 C
- c=3.0×108 m/s
- B=0.60 T
入力形式
アルファ粒子の円運動の半径Rをメートル(m)単位で求め、その値を100倍した値を自然数で回答せよ。
(例:R=2.53 m の場合、253と回答する)
1. 質量欠損と放出エネルギーの計算
まず、核融合反応における質量欠損Δmを計算します。反応前の質量の和から、反応後の質量の和を引きます。
Δm=(mD+mT)−(mα+mn)=(3.30+4.95)×10−27−(6.40+1.60)×10−27=8.25×10−27−8.00×10−27=0.25×10−27 kg
この質量欠損が、アインシュタインのエネルギーの式 E=Δmc2 に従い、生成物の総運動エネルギーQとして放出されます。
Q=Δmc2=(0.25×10−27)×(3.0×108)2=0.25×10−27×9.0×1016=2.25×10−11 J
2. 運動量保存則とエネルギーの分配(古典力学の適用)
反応前、重水素と三重水素は静止していたため、系の全運動量は0です。したがって、反応後のアルファ粒子と中性子の運動量をそれぞれpα、pnとすると、運動量保存則より以下の関係が成り立ちます。
pα+pn=0
これにより、両者は互いに逆向きで、運動量の大きさ(絶対値)が等しいことがわかります。この運動量の大きさをpと置きます(∣pα∣=∣pn∣=p)。
問題文の指示に従い、ここでは非相対論的力学(古典力学)を適用します。運動エネルギーKは運動量pと質量mを用いて K=2mp2 と表せるため、エネルギー保存則は以下のように立式できます。
2mαp2+2mnp2=Q
この式をp2について解き、運動量pを求めます。
p2(2mα1+2mn1)p2(2mαmnmα+mn)p2=Q=Q=mα+mn2mαmnQ
数値を代入して計算します。まず質量の項を整理します。
mα+mn=8.00×10−27 kg
mαmn=(6.40×10−27)×(1.60×10−27)=10.24×10−54 kg2
mα+mn2mαmn=8.00×10−272×10.24×10−54=8.0020.48×10−27=2.56×10−27 kg
これを用いてp2を求めます。
p2=(2.56×10−27)×(2.25×10−11)=5.76×10−38 (kg⋅m/s)2
平方根をとることで、pの値が得られます(5.76=2.42 に着目します)。
p=2.40×10−19 kg⋅m/s
3. アルファ粒子の円運動と半径の導出
アルファ粒子(電荷q=+2e)は、磁束密度Bの磁場と垂直なxy平面内を速さvで運動するため、ローレンツ力 f=qvB を向心力として等速円運動を行います。円運動の運動方程式は以下の通りです。
mαRv2=qvB
これを軌道半径Rについて解き、運動量 p=mαv を用いて書き換えます。
R=qBmαv=2eBp
4. 数値代入と最終解答
得られた文字式に数値を代入し、半径Rを求めます。
R=2×(1.60×10−19)×0.602.40×10−19=3.20×10−19×0.602.40×10−19=1.922.40
計算を進めると、美しく約分されます。
R=192240=96120=4860=810=1.25 m
したがって、アルファ粒子の円運動の半径は 1.25 m となります。
入力形式の指示に従い、この値を100倍します。
1.25×100=125
最終解答は「125」となります。