GSO002 問題6
問題文
自転車の空気入れにおける熱力学第一法則(バルブ開放前の圧縮過程)
問題文
あるサイクリストが、シリンダー型の空気入れを用いて自転車のタイヤに空気を入れようとしている。ここでは、ピストンを押し込み始めてから、タイヤのバルブが開いて空気が注入され始める直前までの、シリンダー内部が密閉されている(閉鎖系とみなせる)圧縮過程を考える。
シリンダー内部の空気を一つの熱力学系とみなし、これを定積モル比熱が CV=25R (R は気体定数)の理想気体として扱う。
初期状態において、シリンダー内の空気の圧力は P1、体積は V1 であった。 サイクリストがピストンを押し込んだ結果、空気は圧縮され、バルブが開く直前の状態において圧力は P2、体積は V2 となった。
この圧縮過程において、サイクリスト(外部)がシリンダー内の空気に対して行った仕事(外部からされた仕事)を Win とする。また、圧縮に伴う温度上昇により、空気はシリンダーの壁面を通して外部へ熱量 Qout を放出した。
この過程において、空気が外部へ放出した熱量 Qout [\mathrm{J}] を求めよ。
【座標系および符号の定義】
- P1,V1,P2,V2,Win,Qout はすべて正の値とする。
- 気体が外部から吸収した熱量を Q、気体が外部に対してした仕事を W、内部エネルギーの変化量を ΔU としたとき、熱力学第一法則は Q=ΔU+W と表される。
制約
- 初期状態の圧力:P1=1.0×105 Pa
- 初期状態の体積:V1=2.5×10−3 m3
- 最終状態(バルブ開放直前)の圧力:P2=3.0×105 Pa
- 最終状態(バルブ開放直前)の体積:V2=1.48×10−3 m3
- 外部から気体に対してされた仕事:Win=562 J
入力形式
空気が外部へ放出した熱量 Qout [\mathrm{J}] の値を自然数で回答せよ。
解説
1. 内部エネルギーの定式化
理想気体の内部エネルギー U は、絶対温度を T、物質量を n とすると、定積モル比熱 CV を用いて以下のように表されます。
U=nCVT本問の過程ではシリンダーは密閉されているため、物質量 n は一定です。また、空気は2原子分子理想気体とみなせるため、CV=25R です。したがって、
U=25nRT理想気体の状態方程式 PV=nRT を用いると、内部エネルギーは圧力 P と体積 V を用いて次のように書き換えられます。
U=25PV2. 内部エネルギーの変化量 ΔU の算出
状態1(初期状態)から状態2(バルブ開放直前)への変化に伴う内部エネルギーの変化量 ΔU は、
ΔU=U2−U1=25(P2V2−P1V1)となります。与えられた制約の数値をそれぞれ代入します。
P1V1=(1.0×105 Pa)×(2.5×10−3 m3)=250 J P2V2=(3.0×105 Pa)×(1.48×10−3 m3)=444 Jこれらを代入して計算します。
ΔU=25(444−250)=25(194)=5×97=485 JΔU>0 であるため、圧縮によって気体の温度は上昇していることが確認できます。
3. 熱力学第一法則を用いた放熱量 Qout の導出
熱力学第一法則は「気体が外部から吸収した熱量 Q」と「気体が外部に対してした仕事 W」を用いて以下のように定義されます。
Q=ΔU+W本問では、気体は外部へ熱量を「放出」しており、外部から仕事を「されて」います。
- 気体が吸収した熱量 Q は、放出した熱量 Qout を用いて Q=−Qout と表されます。
- 気体が外部にした仕事 W は、外部からされた仕事 Win を用いて W=−Win と表されます。
これらを熱力学第一法則の式に代入します。
−Qout=ΔU+(−Win)移項して Qout について整理します。
Qout=Win−ΔUこの式は、「外部からされた仕事のうち、内部エネルギーの増加に使われなかった分が、熱として外部へ逃げた」という直感的なエネルギー収支を表しています。
ステップ2で求めた ΔU=485 J と、制約として与えられた Win=562 J を代入します。
Qout=562−485=77 J以上より、空気が外部へ放出した熱量は 77 J と一意に求まります。
正解:77