問題文
弦の初期変位とフーリエ級数展開に基づく力学的エネルギーの分配
問題文
ギターなどの弦楽器において、弦を特定の場所ではじく(ピックする)行為は、弦に特定の初期変位を与え、無数の固有振動(モード)を励起させることを意味する。本問題では、この現象を1次元波動方程式とフーリエ級数展開を用いて厳密に解析する。
水平方向に x 軸をとる。線密度 ρ、張力 T のしなやかで均一な弦が、 x=0 および x=L の位置で固定されている。弦の変位を y(x,t) とし、微小振動の範囲内で1次元波動方程式 ρ∂t2∂2y=T∂x2∂2y に従うものとする。空気抵抗や内部摩擦による減衰は無視する。
時刻 t=0 において、弦上の点 x=3L を弦に対して垂直に距離 h だけ引っ張り、静かに手を放した(初速度は至る所でゼロである)。このとき、弦の初期状態の形状は x=0 と x=3L を結ぶ線分、および x=3L と x=L を結ぶ線分からなる三角形となる。
この弦の振動 y(x,t) は、無数の固有振動の重ね合わせ(フーリエ正弦級数)として以下のように表現できる。
y(x,t)=n=1∑∞yn(x,t)=n=1∑∞Ansin(Lnπx)cos(ωnt)
ここで、yn(x,t) は第 n 高調波(基本振動を n=1 とする)の変位、ωn はその角振動数、An は各モードの振幅を決定するフーリエ係数である。
第 n 高調波単独が持つ力学的エネルギー(運動エネルギーと弾性エネルギーの和)を En と定義する。
指定された制約のもとで、基本振動(n=1)が持つ力学的エネルギー E1 を計算せよ。
制約
- L=0.90 [m]
- ρ=5.0×10−3 [kg/m]
- T=160 [N]
- h=0.03 [m]
入力形式
計算された基本振動のエネルギー E1 [J] は、以下の形式で表される。
E1=BπCA
ここで、A と B は互いに素な自然数、C は自然数である。
最終的な解答として、A+B+C の値を自然数で入力せよ。
1次元波動方程式と固有モード
弦の振動の一般解は、境界条件 y(0,t)=0,y(L,t)=0 と初速度ゼロの条件 ∂t∂y(x,0)=0 より、問題文で与えられた通り以下の形で書ける。
y(x,t)=n=1∑∞Ansin(knx)cos(ωnt)
ここで、波数は kn=Lnπ、角振動数は ωn=knρT=LnπρT である。
初期条件とフーリエ係数の決定
時刻 t=0 における初期変位 y(x,0)=f(x) は、条件より以下の式で表される。
f(x)={L3hx2L3h(L−x)(0≤x≤3L)(3L<x≤L)
フーリエ係数 An は、両辺に sin(knx) を掛けて区間 [0,L] で積分し、三角関数の直交性を用いることで求められる。
An=L2∫0Lf(x)sin(knx)dx
積分を2つの区間に分けて実行する。
An=L2[∫0L/3L3hxsin(knx)dx+∫L/3L2L3h(L−x)sin(knx)dx]
部分積分を用いる。第1項の積分は、
∫0L/3xsin(knx)dx=[−knxcos(knx)]0L/3+∫0L/3kn1cos(knx)dx=−3knLcos(3knL)+kn21sin(3knL)
第2項の積分は、
∫L/3L(L−x)sin(knx)dx=[−(L−x)kncos(knx)]L/3L−∫L/3Lkncos(knx)dx
x=L で L−x=0 となるため、第一項の評価は x=L/3 の下端のみ残る。
=3kn2Lcos(3knL)−[kn2sin(knx)]L/3L=3kn2Lcos(3knL)+kn21sin(3knL)(∵sin(knL)=sin(nπ)=0)
これらを元の An の式に代入する。
An=L2[L3h(−3knLcos(3nπ)+kn21sin(3nπ))+2L3h(3kn2Lcos(3nπ)+kn21sin(3nπ))]
括弧を展開すると、cos(3nπ) の項は相殺して消える。
An=L2[Lkn23hsin(3nπ)+2Lkn23hsin(3nπ)]=L2(2Lkn29hsin(3nπ))=L2kn29hsin(3nπ)
kn=Lnπ を代入すると、各モードの振幅が定まる。
An=n2π29hsin(3nπ)
各モードの力学的エネルギー
第 n 高調波の変位は yn(x,t)=Ansin(knx)cos(ωnt) である。
系は保存系であるため、力学的エネルギー En は時間によらず一定であり、最大ポテンシャルエネルギー(すなわち t=0 での弾性エネルギー)に等しい。
En=∫0L21T(∂x∂ynt=0)2dx=21T∫0L(Ankncos(knx))2dx
半波長の整数倍の区間において ∫0Lcos2(knx)dx=2L であるから、
En=41TLkn2An2=41TL(Lnπ)2An2=4Ln2π2TAn2
先ほど求めた An を代入する。
En=4Ln2π2T(n2π29hsin(3nπ))2=4Ln2π2Tn4π481h2sin2(3nπ)=4n2π2L81Th2sin2(3nπ)
数値計算と最終解答
求めたいのは基本振動(n=1)のエネルギー E1 である。
E1=4π2L81Th2sin2(3π)=4π2L81Th2(23)2=4π2L81Th2⋅43=16π2L243Th2
制約で与えられた数値を代入する。
- T=160
- h2=(0.03)2=0.0009
- L=0.90
E1=16×π2×0.90243×160×0.0009
分母分子を整理する。
E1=14.4π2243×0.144=π2243×0.01=π22.43=100π2243 [J]
入力形式 E1=BπCA と比較すると、
- A=243
- B=100 (243と100は互いに素)
- C=2
したがって、求めるべき和は、
A+B+C=243+100+2=345
最終的な解答は 345 となる。