GSO002 問題11
問題文
浮力と弾性支持が織りなす干渉縞のシフト
問題文
水平で平坦な上面を持つガラス板Bが固定されている。その上に、長さ L の一様な直方体であるガラス板Aが置かれている。 ガラス板Aの左端(位置 x=0)はガラス板Bの上面と接しており、この接合部は滑らかに回転できる蝶番のように振る舞い、ガラス板Aは鉛直面内で微小な角度だけ傾くことができる。 ガラス板Aの右端(位置 x=L)の下面とガラス板Bの上面の間には、自然長 l0、ばね定数が未知の微小な円柱状の弾性スペーサーが挟まれており、ガラス板Aを支えている。 スペーサーの変形はフックの法則に従い、その質量や体積は無視できる。 ガラス板Aの質量を M、密度を ρ とし、重力加速度の大きさを g とする。 ガラス板Aとガラス板Bの間には、非常に小さな角度のくさび形の隙間が形成されている。
【実験1】 装置全体を空気中に置いた。波長 λ の単色光を装置の真上から鉛直下向きに照射したところ、ガラス板Aの下面とガラス板Bの上面で反射した光の干渉によって明暗の縞模様が観察された。 このとき、隣り合う明線の間隔を測定すると Δx1 であった。 なお、空気の屈折率は 1 とし、空気の密度および浮力は無視できるものとする。
【実験2】 この装置全体を、密度 ρ0、屈折率 n の透明な未知の液体中に完全に沈め、くさび形の隙間もその液体で満たした。 十分に時間が経過し、ガラス板Aが静止した状態で、実験1と同様に波長 λ の単色光を真上から照射したところ、隣り合う明線の間隔は Δx2 であった。 ただし、ガラス板Aおよびガラス板Bの屈折率は液体の屈折率 n よりも大きいとする。また、液体の浸入によってスペーサーのばね定数は変化しない。
上記の結果から、液体の屈折率 n を求めよ。
制約
計算には以下の数値を用いること。
- ガラス板Aの質量 M=0.40 kg
- ガラス板Aの密度 ρ=2.0×103 kg/m3
- ガラス板Aの長さ L=0.20 m
- 弾性スペーサーの自然長 l0=1.0×10−4 m
- 重力加速度の大きさ g=10 m/s2
- 単色光の波長 λ=6.0×10−7 m
- 液体の密度 ρ0=1.0×103 kg/m3
- 空気中での明線の間隔 Δx1=0.75×10−3 m
- 液体中での明線の間隔 Δx2=0.50×10−3 m
入力形式
液体の屈折率 n は既約分数 BA (A,B は互いに素な自然数)として表される。 100A+B の値を計算し、自然数で回答せよ。
解説
本問は、波動分野の「くさび形空気層の干渉」と、力学分野の「剛体のつり合い・浮力」を組み合わせた融合問題です。実験1の干渉条件から未知のばね定数を逆算し、実験2の力学的変化から再び干渉条件を立式するという、分野横断的な思考力が問われます。
1. 微小角近似の妥当性と準備
ガラス板Aの右端(x=L)における隙間の高さを D とします。このときガラス板Aの傾き角 θ は sinθ=D/L となります。 隙間の高さ D は自然長 l0=1.0×10−4 m よりも小さいため、θ≈D/L<5.0×10−4 rad という極めて小さな値です。 したがって、cosθ≈1 とみなせるため、ガラス板Aの重心の水平座標は実質的に 2L としてモーメントのつり合いの式を立てることができます。
2. 空気中(実験1)における波動と力学の解析
真上から入射した光の、ガラス板Aの下面での反射(自由端反射、位相変化なし)と、ガラス板Bの上面での反射(固定端反射、位相 π 変化)による干渉を考えます。 空気中での右端の隙間の高さを D1 とすると、位置 x での隙間の厚さは xLD1 です。 空気の屈折率を 1 とすると、明線の干渉条件は整数 m を用いて、 2xLD1=(m+21)λ 隣り合う明線の間隔 Δx1 は、 Δx1=2D1Lλ これに数値を代入して D1 を求めます。 D1=2Δx1Lλ=2×0.75×10−30.20×6.0×10−7=1.5×10−31.2×10−7=8.0×10−5 m
次に、力学的なつり合いを考えます。ガラス板Aの重力 W=Mg=0.40×10=4.0 N が重心(x=L/2)に働きます。 接合部(x=0)を回転軸とするモーメントのつり合いより、スペーサーの支持力を F1 とすると、 W⋅2L=F1⋅L⟹F1=2W=2.0 N スペーサーの縮み量 y1 は y1=l0−D1=1.0×10−4−8.0×10−5=2.0×10−5 m です。 フックの法則 F1=ky1 より、未知のばね定数 k が求まります。 k=y1F1=2.0×10−52.0=1.0×105 N/m
3. 液体中(実験2)における力学と波動の解析
装置全体を液体に沈めると、ガラス板Aには鉛直上向きに浮力 Fb が働きます。 ガラス板Aの体積 V=ρM より、アルキメデスの原理を用いて浮力を求めます。 Fb=ρ0Vg=ρ0ρMg=1.0×103×2.0×1030.40×10=2.0 N 浮力は一様な直方体の重心に作用するため、見かけの重力 W′=W−Fb=4.0−2.0=2.0 N となります。 再び x=0 まわりのモーメントのつり合いから、液体中でのスペーサーの支持力 F2 は、 F2=2W′=1.0 N このときのスペーサーの縮み量 y2 は、 y2=kF2=1.0×1051.0=1.0×10−5 m したがって、液体中における右端の隙間の高さ D2 は、 D2=l0−y2=1.0×10−4−1.0×10−5=9.0×10−5 m
液体中での干渉を考えます。隙間は屈折率 n の液体で満たされているため、光路差は 2nd となります。 また、反射の際の位相変化は実験1と同様(下側の反射は位相反転なし、上側の反射は π 反転あり)です。 明線の干渉条件から、液体中での明線間隔 Δx2 は、 Δx2=2nD2Lλ これに数値を代入し、液体の屈折率 n を求めます。 n=2D2Δx2Lλ=2×9.0×10−5×0.50×10−30.20×6.0×10−7=9.0×10−81.2×10−7=912=34
4. 解答の算出
屈折率 n=34 は既約分数であり、A=4,B=3 と対応します。 求めるべき値は 100A+B であるため、 100×4+3=403 よって、回答すべき自然数は「403」となります。