GSO002 問題10
問題文
内包物を持つ氷の融解と液面変動
問題文
断面積 S0 の円柱形の水槽に、密度 ρw の水が十分に入っている。 この水に、1つの大きな氷の塊が浮かんでいる。 氷の塊は、質量 M の純粋な氷(密度 ρi)を主体とし、その内部に以下の3つの異物を完全に内包している。
- 質量 m1、密度 ρ1 の金属塊(ρ1>ρw)
- 質量 m2、密度 ρ2 の油(ρ2<ρw)
- 体積 Va の空気
このとき、氷の塊は水槽の壁や底に触れることなく、完全に水面に静止して浮かんでいた。このときの水面の高さを hinit とする。
その後、周囲の熱を吸収して十分に時間が経過し、氷が完全に融解した。 融解後、金属塊は水槽の底に沈み、油は水の上に分離して一様な厚さの層を形成し、空気はすべて大気中に逃げた。系が再び静止したときの、最上面の液面(油の上面)の高さを hfinal とする。
液面の高さの変動量 Δh=hinit−hfinal を求めよ。 なお、水の蒸発や温度変化による各物質の密度の変化、および油の水への溶解は無視できるものとする。また、空気の質量は極めて小さいため無視してよい。重力加速度の大きさを g とする。
制約
- S0=1.2×10−2 m2
- M=3.0 kg
- ρi=9.2×102 kg/m3
- ρw=1.0×103 kg/m3
- m1=2.7×10−1 kg
- ρ1=7.5×103 kg/m3
- m2=1.7×10−1 kg
- ρ2=8.5×102 kg/m3
- Va=8.0×10−4 m3
入力形式
得られた Δh の単位を m としたときの数値を 105 倍した値を求めよ。 (答えは自然数となる)
解説
1. 初期状態の考察(氷が浮かんでいる状態)
まずは氷が融解する前の、初期の液面高さ hinit を求めるための立式を行います。 水槽にもともと入っていた水の体積を V0 とします。 水に浮かんでいる物体の質量は、氷と内包物の合計になります。空気の質量は無視できるため、浮かんでいる全体の質量 Mtotal は以下の通りです。
Mtotal=M+m1+m2アルキメデスの原理より、水面に浮かんで静止している物体が受ける浮力は、物体にはたらく重力と釣り合います。物体が水面下にある部分の体積(排除体積)を Vsub とすると、力の釣り合いの式は以下のようになります。
ρwVsubg=Mtotalgこれを Vsub について解くと、
Vsub=ρwM+m1+m2水槽は断面積 S0 の円柱形であるため、初期の液面以下の全体の体積 Vinit は、もともとの水の体積 V0 に排除体積 Vsub を加えたものになります。したがって、初期の液面の高さ hinit は次のように表されます。
hinit=S0Vinit=S01(V0+ρwM+ρwm1+ρwm2)2. 融解後の状態の考察
次に、氷が完全に融解した後の状態を考えます。 各物質が系全体の体積(底面から油の上面まで)にどのように寄与するかを個別に評価します。
- 氷から変化した水: 質量 M の氷は融解すると質量 M の水になります。水の密度は ρw なので、その体積は ρwM となります。
- 金属塊: 密度が水より大きいため底に沈みます。沈んだ物体は自身の体積と同じだけの水を押し上げるため、系全体の体積に対する寄与は金属の体積 V1=ρ1m1 となります。
- 油: 密度が水より小さいため、水面に浮いて一様な層を作ります。水槽はまっすぐな円柱であるため、油の層が上に乗ることで、油の体積 V2=ρ2m2 がそのまま全体の体積(最上面までの高さ)に加算されます。
- 空気: 大気中に逃げるため、液面下の体積には一切寄与しなくなります。
したがって、融解後の系全体の体積 Vfinal(もともとの水+氷からできた水+沈んだ金属+浮いた油)は、単純な体積の和として次のように表されます。
Vfinal=V0+ρwM+ρ1m1+ρ2m2これにより、最上面の液面(油の上面)の高さ hfinal は以下のようになります。
hfinal=S0Vfinal=S01(V0+ρwM+ρ1m1+ρ2m2)3. 液面の変動量 Δh の計算
液面の高さの変動量 Δh=hinit−hfinal を計算します。
Δh=S01(Vinit−Vfinal)ここで、体積の変動量 ΔV=Vinit−Vfinal を計算します。V0 と氷の質量に関する項 ρwM が見事に相殺されることに注目してください(これが「水に浮かぶ純粋な氷が溶けても液面は変わらない」理由です)。
ΔV=(V0+ρwM+ρwm1+ρwm2)−(V0+ρwM+ρ1m1+ρ2m2) ΔV=m1(ρw1−ρ11)+m2(ρw1−ρ21)この式から、液面変動に関与するのは「異物の質量」と「水との密度の差」のみであり、空気の体積 Va や氷の質量 M は計算結果に影響を与えないダミー変数であったことがわかります。
4. 数値の代入
与えられた制約の数値を代入して ΔV を求めます。
[金属塊に関する項]
m1(ρw1−ρ11)=0.27×(10001−75001)通分して計算します。
10001−75001=75007.5−1=75006.5=1500013 0.27×1500013=150003.51=0.000234 m3[油に関する項]
m2(ρw1−ρ21)=0.17×(10001−8501)通分して計算します。
10001−8501=8500.85−1=850−0.15=17000−3 0.17×(17000−3)=17000−0.51=−0.000030 m3これらを足し合わせて ΔV を求めます。
ΔV=0.000234−0.000030=0.000204 m3最後に、断面積 S0=1.2×10−2 m2=0.012 m2 で割って Δh を求めます。
Δh=0.0120.000204=0.017 m指示に従い、この数値を 105 倍した値が最終解答となります。
0.017×105=1700