GSO001 問題15
問題文
U字管内の液柱の振動と断熱変化
問題文(再掲)
断面積が S で一様なU字管が、水平な床の上に固定されている。U字管の左側の管は上端が閉じられており、右側の管は上端が大気に開放されている。このU字管の中に密度 ρ の液体を入れたところ、左側の管には理想気体(単原子分子)が閉じ込められた。大気圧を P0 、重力加速度の大きさを g とする。
【状態0】 初期状態では、閉じ込められた気体の温度は T0 であり、左右の液面は同じ高さにあった。このとき、閉じ込められた気体柱の長さは l0 であった。
【状態1】 次に、左側の管の気体をゆっくりと加熱したところ、気体は膨張し、液柱全体が右側へ押し出された。気体柱の長さが l1 (l1>l0)になったところで加熱を止め、熱平衡に達した。このときの気体の圧力を P1 とする。
【状態2(微小振動)】 状態1から、液柱全体を管に沿ってごくわずかに動かし、静かに手を放したところ、液柱は単振動を始めた。この振動の周期は十分に短く、左側の管に閉じ込められた気体の状態変化は断熱変化とみなすことができる。
液柱全体の長さを L とし、液体の粘性や管との摩擦、および液柱の運動に伴う運動エネルギー以外のエネルギー損失はすべて無視できるものとする。また、気体の質量は液体の質量に比べて十分に小さく無視できる。
この液柱の微小振動における角振動数の2乗 ω2 を求めよ。
制約
- 大気圧: P0=1.013×105 Pa
- 重力加速度の大きさ: g=9.80 m/s2
- 液体の密度: ρ=1.00×103 kg/m3
- 液柱の全長: L=2.00 m
- 状態0の気体柱の長さ: l0=0.400 m
- 状態1の気体柱の長さ: l1=0.500 m
- 単原子分子理想気体の比熱比: γ=35
入力形式
ω2 の値を単位 rad2/s2 で計算し、得られた値を 10 倍した値を回答せよ。
解説
この問題は、流体のつりあい、熱力学(ポアソンの法則)、そして力学(単振動の運動方程式)が複雑に絡み合う、頻出の融合問題です。未知の現象に対し、自分で変数を定義して運動方程式をゼロから立式する力が問われます。
1. 【状態1】における力のつりあいと気体の圧力 P1 の導出
まず、状態1における気体の圧力 P1 を求めます。 状態0から気体が膨張して長さが l0 から l1 になったため、左側の管の液面は (l1−l0) だけ下がります。非圧縮性の液体であり管の断面積が一定であるため、右側の開放管の液面は初期状態から (l1−l0) だけ上がります。 したがって、状態1における左右の液面の高さの差 Δh は、
Δh=(l1−l0)+(l1−l0)=2(l1−l0)となります。 U字管の底面、あるいは左側の液面と同じ高さの水平面で圧力のつりあいを考えます。左側の液面にかかる圧力は気体の圧力 P1 であり、右側の同じ高さにかかる圧力は「大気圧 P0 + 液面差 Δh 分の液柱が及ぼす圧力」です。したがって、
P1=P0+ρgΔh=P0+2ρg(l1−l0)という関係が成り立ちます。
2. 【状態2】における断熱変化と気体の圧力変化の近似
状態1において液柱が静止している状態をつりあいの位置とし、ここから左側の気体がさらに押し縮められる方向(左側の液面が上に上がる方向)へ液柱全体が距離 y だけ変位した瞬間を考えます(y は微小量とします)。 このとき、気体柱の長さは l1−y となり、体積 V は Sl1 から S(l1−y) へと変化します。
この状態変化は断熱変化とみなせるため、ポアソンの法則 PVγ=一定 が成り立ちます 。状態1の圧力を P1 、体積を V1=Sl1 とし、変位 y における圧力を P 、体積を V=S(l1−y) とすると、
P(S(l1−y))γ=P1(Sl1)γ P=P1(l1−yl1)γ=P1(1−l1y)−γここで、y は l1 に対して十分に小さい微小量(y/l1≪1)であるため、テイラー展開による一次近似 (1+x)n≈1+nx を用います。
P≈P1(1−(−γ)l1y)=P1+l1γP1yこれが変位 y のときの左側管内の気体の圧力です。
3. 液柱の運動方程式の立式
変位 y の瞬間において、液柱全体(質量 M=ρLS)にはたらく復元力を考えます。 液柱の運動方向(左側管で上向き、右側管で下向き)を正とします。 液柱を正の方向へ押し動かそうとする力は、右側開放端の圧力と液体の重力による圧力の和です。このとき、左側の液面は y 上がり、右側の液面は y 下がるため、左右の液面の高さの差は Δh−2y=2(l1−l0)−2y となります。 右側から液柱を押し返す力(正の方向にはたらく力)を管の断面積 S で割った圧力は、P0+ρg(2(l1−l0)−2y) です。 一方、左側から気体が押し返す力(負の方向にはたらく力)の圧力は、P です。
したがって、液柱全体にはたらく合力 F は、
F=[P0+ρg(2(l1−l0)−2y)]S−PSステップ2で求めた P の近似式と、ステップ1の P1=P0+2ρg(l1−l0) の関係を代入します。
F=[P1−2ρgy]S−[P1+l1γP1y]S F=−(l1γP1+2ρg)Sy美しいことに、定数項 P1 が完全に相殺され、合力 F が変位 y に比例する負の力、すなわち単振動の復元力となることが示されました 。
液柱全体の運動方程式 My¨=F は、質量 M=ρLS を用いて、
ρLSy¨=−(l1γP1+2ρg)Sy y¨=−ρLl1γP1+2ρgy単振動の運動方程式 y¨=−ω2y と比較することで、角振動数の2乗 ω2 は次のように求まります。
ω2=ρLl1γP1+2ρg4. 数値計算
与えられた制約の数値を代入して計算します。 まず、P1 を計算します。 l1−l0=0.500−0.400=0.100 m
P1=P0+2ρg(l1−l0)=1.013×105+2×(1.00×103)×9.80×0.100 P1=101300+1960=103260 Pa次に、ω2 の分子を計算します。(γ=5/3)
分子=35×0.500103260+2×(1.00×103)×9.80 =35×206520+19600=5×68840+19600=344200+19600=363800最後に分母 ρL を計算し、ω2 を求めます。
分母=1.00×103×2.00=2000 ω2=2000363800=181.9 rad2/s2求める解答は、この値を 10 倍した整数部分であるため、181.9×10=1819 となります。
最終解答: 1819