問題文
平行電流間の荷電粒子の運動
問題文(再掲)
真空中の x,y,z 直交座標系において、z 軸に平行な2本の無限に長い直線導線が配置されている。一方の導線は (d,0,z) を通り、もう一方の導線は (−d,0,z) を通っている。これら2本の導線には、ともに +z 方向へ一定の電流 I が流れている。
時刻 t において、質量 m、電気量 q(q>0)の荷電粒子を原点 (0,0,0) に置き、初速度 v=(v1,0,v0) を与えた。ここで、v1 は v0 に比べて十分に小さく(v1≪v0)、粒子の x 座標の変位は常に d に比べて十分に小さい(∣x∣≪d)ものとする。
粒子は z 方向へ進みながら、x 軸方向において微小な単振動を行う。このとき、粒子の z 方向の速度成分は v0 で一定であると近似してよい。粒子が x 方向の単振動を1周期終える間に、z 方向に進む距離 L を求めよ。
制約
- 導線の位置座標のパラメータ: d=0.50 m
- 導線に流れる電流: I=50 A
- 粒子の電気量: q=2.0×10−4 C
- 粒子の質量: m=4.0×10−5 kg
- z方向の初速度: v0=1.0×102 m/s
- 真空の透磁率: μ0=4π×10−7 N/A2
- 重力や粒子からの電磁波の放射は無視する。
入力形式
距離 L は円周率 π を用いて Aπ (m) の形で表される。自然数 A の値を回答せよ。
1. 原点付近の磁束密度を求める
まずは、2本の無限に長い直線導線が x 軸上の原点付近(∣x∣≪d)にどのような磁場を作っているのかを調べます。アンペールの法則(またはビオ・サバールの法則)を用いて、それぞれの導線が作る磁束密度を重ね合わせましょう。
直線電流 I から距離 r 離れた点における磁束密度の大きさ B は、真空の透磁率を μ0 とすると以下の式で表されます。
B=2πrμ0I
- 導線1(座標 x=d)が作る磁場:
観測点 (x,0,z) までの距離は d−x です。電流は +z 方向(手前方向)に流れているため、右ねじの法則により、原点付近では +y 方向の磁場を作ります。
この磁束密度の大きさを B1 とすると、次のようになります。
B1=2π(d−x)μ0I
- 導線2(座標 x=−d)が作る磁場:
観測点 (x,0,z) までの距離は d+x です。こちらも電流は +z 方向に流れているため、右ねじの法則により、原点付近では −y 方向の磁場を作ります。
この磁束密度の大きさを B2 とすると、次のようになります。
B2=2π(d+x)μ0I
したがって、点 (x,0,z) における磁束密度の y 成分 By は、これら2つの磁場の差(重ね合わせ)として計算できます。
By=B1−B2=2π(d−x)μ0I−2π(d+x)μ0I
これを共通の分母で通分して整理します。
By=2πμ0I((d−x)(d+x)(d+x)−(d−x))=2πμ0Id2−x22x=π(d2−x2)μ0Ix
ここで、問題文の条件より粒子の変位は d に比べて十分に小さい(∣x∣≪d)ため、x2 は d2 に比べて非常に小さくなり、d2−x2≈d2 と近似することができます。
By≈πd2μ0Ix
これにより、原点付近の磁束密度ベクトル B は、y 軸方向のみを持ち、x に比例して大きくなることがわかりました。
2. 荷電粒子にはたらくローレンツ力を導出する
次に、この磁場中を運動する荷電粒子が受ける力を考えます。磁場中を速度 v で動く電気量 q の粒子が受けるローレンツ力 F は、外積を用いて F=q(v×B) と表されます。
粒子の速度ベクトルを v=(vx,0,v0)、磁束密度ベクトルを B=(0,By,0) と置いて外積を計算します。
v×B=(vx,0,v0)×(0,By,0)=(−v0By,0,vxBy)
したがって、ローレンツ力の各成分は次のようになります。
- x 成分: Fx=−qv0By
- y 成分: Fy=0
- z 成分: Fz=qvxBy
ここで、x 軸方向の力 Fx に、先ほど求めた By の近似式を代入します。
Fx=−qv0(πd2μ0Ix)=−(πd2qv0μ0I)x
この式は、Fx=−Kx(K は正の定数)という形をしており、原点に引き戻そうとする復元力としてはたらくことを示しています。これが x 方向で単振動を起こす理由です。
補足: z 軸方向の力 Fz=qvxBy についてですが、vx と By (つまり x) はともに微小量であるため、それらの積である Fz はさらに小さな2次の微小量となります。そのため、z 方向の加速度はほぼゼロとなり、問題文にある「z 方向の速度成分は v0 で一定であると近似してよい」という仮定が成り立ちます。
3. 運動方程式と単振動の周期
粒子の質量を m とし、x 方向の運動方程式を立てます。
max=Fx⟹mdt2d2x=−(πd2qv0μ0I)x
単振動の運動方程式 ma=−mω2x と係数を比較することで、角振動数 ω は次のように求まります。
mω2=πd2qv0μ0I⟹ω=πmd2qv0μ0I
単振動が1回完了するのにかかる時間、すなわち周期 T は T=2π/ω で与えられるため、逆数をとって代入します。
T=2πqv0μ0Iπmd2=2πdqv0μ0Iπm
4. 1周期の間に進む距離 L を計算する
粒子は z 方向には速さ v0 で等速直線運動をしていると近似できるため、x 方向の単振動を1周期終える間に z 方向に進む距離 L は以下の式で計算できます。
L=v0T=v0⋅2πdqv0μ0Iπm=2πdqv0μ0Iπmv02=2πdqμ0Iπmv0
いよいよ、与えられた数値をこの式に代入していきます。計算ミスを防ぐため、まずはルートの中身だけで計算を済ませましょう。
- d = 0.50 m
- m = 4.0×10−5 kg
- v0 = 1.0×102 m/s
- q = 2.0×10−4 C
- μ0 = 4π×10−7 N/A²
- I = 50 A
ルートの中の分母と分子をそれぞれ計算します。
分子:
πmv0=π×(4.0×10−5)×(1.0×102)=4.0π×10−3
分母:
qμ0I=(2.0×10−4)×(4π×10−7)×50=(2.0×50×4π)×10−11=400π×10−11=4.0π×10−9
ルートの中身:
4.0π×10−94.0π×10−3=106
この結果を距離 L の式に戻して平方根をとります。106=1000 ですね。
L=2π×0.50×1000=1000π
結論
計算の結果、距離 L は 1000π m と求まりました。問題では距離が Aπ m の形で表されるときの自然数 A を回答することが求められていますので、最終的な答えは以下のようになります。
回答: 1000