GEO004 問題2
問題文
二連式ファラデー円板と斜め衝突
問題文
水平に置かれた2枚の一様な金属円板A、Bが、それぞれ独立した鉛直軸の周りに摩擦なく回転できる装置がある。各円板の質量を Mi、半径を ai、回転軸周りの慣性モーメントを Ji とする。ただし、添字 i はAまたはBを表す。
両円板には、それぞれ鉛直上向きの一様磁場が加えられている。各円板の中心と外周には静止した電極ブラシが接触しており、中心ブラシ同士は抵抗を無視できる導線で接続され、外周ブラシ同士は抵抗 R とスイッチを直列に介して接続されている。
円板Aの外周上には、質量と慣性モーメントを無視できる小さな衝突板が固定されている。衝突板の接触面は滑らかな鉛直平面で、その面は接触点における半径方向に平行である。したがって、接触面の法線は円周方向を向く。
初め、両円板は静止しており、スイッチは開いている。
質量 m の小球が水平面内を運動し、円板Aの回転軸から距離 aA の位置で衝突板に斜めに衝突する。小球は質点として扱え、衝突直前の速度は、接触点における半径方向外向きの成分と、円周方向の成分 v を持つ。ここで、円周方向の正の向きは、上から見て反時計回りとし、v>0 とする。
衝突は瞬間的であり、小球と衝突板の間には摩擦がない。接触面の法線方向の相対速度に対する反発係数は e である。衝突中、円板の回転軸周りの外力のモーメントは無視できる。また、小球は衝突後、装置と再び接触することなく飛び去る。
この衝突が完了した直後にスイッチを閉じる。
各円板は理想的なファラデー円板として振る舞う。上から見て反時計回りを角速度の正の向きとすると、円板 i の中心に対する外周の電位は
Ei=kiωiで与えられる。ただし、
ki=2Biai2であり、Bi は各円板に加えられた磁束密度の大きさである。
回路の電流 I は、円板Aの外周ブラシから抵抗 R を通り、円板Bの外周ブラシへ流れる向きを正とする。このとき、回路の電流は
I=RkAωA−kBωBを満たす。
また、電流によって円板A、Bが受ける回転軸周りの電磁トルクは、それぞれ
τA=−kAI,τB=kBIである。トルクの符号も反時計回りを正とする。
回路の全抵抗 R は正で一定であり、自己インダクタンスは無視できる。また、各円板の軸の摩擦、空気抵抗、電磁トルク以外の外力のモーメントは無視できる。
なお、回転運動については、以下の関係を用いてよい。
- 一様な円板の慣性モーメントは J=21Ma2 である。
- 回転軸周りの角運動量は L=Jω であり、外力のモーメントが働かなければ保存される。
- トルクの時間積分は角運動量の変化に等しい。
スイッチを閉じてから十分長い時間が経過し、回路電流が0に近づくまでに、回路を正方向に通過する正味の電荷量 Q を求めよ。
制約
- m=0.1kg
- v=3m/s
- e=2011
- MA=1kg
- aA=0.2m
- BA=0.8T
- MB=0.5kg
- aB=0.15m
- BB=1.2T
入力形式
電荷量 Q を C 単位で表し、既約分数
Q=SPとする。ただし、P,S は互いに素な正の整数である。
自然数 P+S を入力せよ。
解説
方針
この問題は、衝突による円板Aの回転と、その後の電磁誘導による2枚の円板の運動を分けて考えます。
衝突では、円板Aの回転軸周りの角運動量保存則と反発係数を用いて、衝突直後の角速度を求めます。
その後、スイッチを閉じると、円板Aには回転を妨げるトルクが、円板Bには回転を加速するトルクが働きます。
重要なのは、電流が流れなくなる条件が、両円板の停止ではなく、両円板の起電力が一致することだと見抜くことです。
さらに、電磁トルクが電流に比例することから、トルクの時間積分を、回路を通過した電荷量と結びつけます。
1. 衝突直後の円板Aの角速度
円板Aの慣性モーメントは
JA=21MAaA2です。
衝突直後の小球の円周方向速度を v′、円板Aの角速度を Ω とします。
衝突中、円板Aの軸周りの外力のモーメントは無視できるので、小球と円板Aの合計の角運動量が保存されます。
maAv=maAv′+JAΩ(1)また、反発係数の定義より、接触面の法線方向の相対速度について
v′−aAΩ=−evが成立します。
したがって、
v′=aAΩ−ev(2)です。
(2)式を(1)式に代入すると、
maAv=maA(aAΩ−ev)+JAΩより、
maA(1+e)v=(JA+maA2)Ωとなります。
したがって、
Ω=JA+maA2maA(1+e)vです。
ここで、
JA=21×1×0.22=501kgm2なので、
Ω=1/50+0.1×0.220.1×0.2×(1+11/20)×3=831rad/sとなります。
なお、衝突面に摩擦がないため、小球の半径方向速度は衝突によって変化しません。また、この速度成分は円板Aの回転軸周りの角運動量に寄与しません。
2. 電磁トルクと通過電荷量の関係
スイッチを閉じた後の円板A、Bの角速度を、それぞれ ωA、ωB とします。
電磁トルクは
τA=−kAI,τB=kBIです。
電流 I は単位時間当たりに移動する電荷量なので、微小時間 dt に通過する電荷量を dq とすると、
dq=Idtと表せます。
したがって、各円板のトルクによる角運動量の変化は
dLA=−kAdq dLB=kBdqとなります。
スイッチを閉じた直後から、電流が0に近づくまでに通過する電荷量を Q とすると、角運動量の変化は
JA(ωA,f−Ω)=−kAQ(3) JBωB,f=kBQ(4)です。
ただし、ωA,f、ωB,f は十分時間が経過した後の各円板の角速度です。
(3)、(4)式を整理すると、
ωA,f=Ω−JAkAQ(5) ωB,f=JBkBQ(6)となります。
3. 電流が流れなくなる条件
回路の電流は
I=RkAωA−kBωBで与えられます。
初めは円板Aだけが正方向に回転しているため、電流は正方向に流れます。
この電流によって円板Aは減速し、円板Bは加速します。その結果、両円板の起電力の差は小さくなっていきます。
十分長い時間が経過して電流が0に近づくと、
kAωA,f−kBωB,f=0すなわち、
kAωA,f=kBωB,f(7)が成立します。
ここで重要なのは、両円板の角速度が等しくなる必要はないという点です。
電磁結合係数 kA と kB が異なるため、角速度が異なっていても起電力が等しくなれば電流は流れません。
(5)、(6)式を(7)式に代入すると、
kA(Ω−JAkAQ)=kBJBkBQとなります。
整理すると、
kAΩ=(JAkA2+JBkB2)Qしたがって、
Q=JAkA2+JBkB2kAΩ(8)が得られます。
この式には抵抗 R が含まれていません。
抵抗は電流の大きさや減衰に要する時間には影響しますが、最終的に回路を通過する電荷量には影響しないのです。
4. 数値計算
まず、円板Bの慣性モーメントは
JB=21MBaB2=21×0.5×0.152=16009kgm2です。
また、各円板の電磁結合係数は
kA=2BAaA2=20.8×0.22=1252 kB=2BBaB2=21.2×0.152=200027となります。
これらを(8)式に代入すると、
Q=1/50(2/125)2+9/1600(27/2000)21252⋅831分子は
1252⋅831=50031分母は
1/50(2/125)2+9/1600(27/2000)2=250032+250081=2500113です。
したがって、
Q=113/250031/500=113155Cを得ます。
5. 最終状態の確認
求めた電荷量から、最終的な円板A、Bの角速度を計算すると、
ωA,f=831−1/502/125⋅113155=9042511rad/s ωB,f=9/160027/2000⋅113155=113372rad/sとなります。
実際に起電力を比較すると、
kAωA,f=1252⋅9042511=565002511 kBωB,f=200027⋅113372=565002511となり、両円板の起電力は確かに一致します。
また、両円板の最終角速度はいずれも正であり、電流が流れなくなっても回転運動が続いていることが確認できます。
6. 入力値
求めた電荷量は
Q=113155Cです。
155 と 113 は互いに素なので、
P=155,S=113したがって、入力すべき自然数は
P+S=268です。