GEO001 問題5
問題文
量子三体問題における引力バリアとエフィモフ的スケーリング
問題文
ある混合次元量子三体系では、ボルン・オッペンハイマー近似を用いることで、重い2粒子間の相対距離 r (r>0) に関する有効1次元問題へ帰着される。この系の波動関数 u(r) は、以下のゼロエネルギー・シュレディンガー方程式を満たすとする。
−2μℏ2dr2d2u(r)+(r3C3−r2C2)u(r)=0
ここで μ は換算質量、C3>0 は短距離で働く斥力的な 1/r3 相互作用の強さ、C2>0 はエフィモフ効果に対応する有効的な引力 1/r2 相互作用の強さである。便宜上、無次元のパラメータ R,s を以下のように定義する。
R=ℏ22μC3,s2+41=ℏ22μC2
本問題では s>0 であるとする。 この方程式は、適切な変数変換 x=2R/r および u(r)=rF(x) を用いることで、変形ベッセル方程式に帰着できる。
短距離領域 (r→0) において確率密度が発散しない(すなわち物理的に許容される)解を選び、その解が中距離領域(短距離の 1/r3 斥力が支配的となる特性長 R よりは十分に大きい距離でありつつ、波動関数の外側への減衰長よりは十分に小さい領域)においてどのような漸近形を持つか調べよ。
中距離領域において波動関数 u(r) は対数周期的な振動を示し、空間スケールの変換 r→λr (λ>1)に対して確率密度の空間構造(節の位置など)が自己相似性を持つことがわかる。このとき、隣り合う束縛状態の空間的広がり an,an+1 (an<an+1) の比は an+1/an=λ となる。
さらに、極めて浅い束縛状態のエネルギー En は、空間的広がりに対して En≃−2μan2ℏ2 とスケールすることが知られている。 この系において、隣り合う束縛状態のエネルギーの比を Λ=En+1En (ここで ∣En∣>∣En+1∣ とする)と定義する。
以上の条件をもとに、ある特殊な実験系について考える。
制約
この実験系では、各物理定数が無次元化された有効引力パラメータにおいて、厳密に以下の関係式を満たすように調整されている。
ℏ22μC2=41+41960321
解答形式
この系におけるエネルギー比 Λ は、ある整数 W を用いて Λ=eWπ と厳密に表すことができる。 整数 W の値を半角数字で答えよ。
解説
解説
1. 支配的なポテンシャルと無次元化 与えられた方程式の両辺に ℏ22μ を掛け、定義された無次元パラメータ R,s を用いて整理すると、次の方程式が得られます。
dr2d2u(r)+[r2s2+1/4−r3R]u(r)=0
2. 変数変換と短距離解 指示に従い、x=2R/r すなわち r=4R/x2 とおき、u(r)=rF(x) という変数変換を行います。微分の連鎖律等を用いて計算を進めると、以下の変形ベッセル方程式が得られます。
x2F′′+xF′−(x2−4s2)F=0
この方程式を変形ベッセル方程式の標準形 x2F′′+xF′−(x2+ν2)F=0 と比較すると ν2=−4s2 となるため、次数が純虚数 ν=±2is となります。したがって、その一般解は純虚数次数の第1種および第2種変形ベッセル関数を用いて F(x)=AI2is(x)+BK2is(x) と表されます。
短距離極限 (r→0、すなわち x→∞) において、I2is(x) は指数関数的に発散するため物理的な解として不適切であり、K2is(x) は指数関数的に減衰するため境界条件を満たします。したがって、解は u(r)∝rK2is(2rR) に確定します。
3. 中距離領域の対数周期解と離散スケール不変性 中距離領域 (r≫R) では 1/r3 項が無視でき、方程式はオイラーの微分方程式 u′′(r)+r2s2+1/4u(r)=0 に近似されます。 実数解を構成すると、中距離における波動関数の漸近形は対数周期的な振動解となります。
u(r)=C′rcos(slnr+δ)
空間スケールを r→λr と変換したとき、確率密度の空間構造が自己相似性を持つ(波動関数の符号反転を許容する)条件から、slnλ=π となります。よって、隣り合う束縛状態のサイズの比は λ=eπ/s です。
4. 束縛エネルギー列の比の計算 極めて浅い束縛状態 (E≃0) では、波動関数の内部領域の振る舞いはゼロエネルギー解で精度良く近似できます。そのため、E=0 の解が持つ空間的なノード(節)の自己相似性が、そのまま隣り合う束縛状態のサイズ比 λ に反映されます。 エネルギーのスケール則 En≃−2μan2ℏ2 より、エネルギー比 Λ は空間的広がりの比の2乗となります。
Λ=En+1En=(anan+1)2=λ2=e2π/s
5. 数値の代入と最終解答 制約として与えられた関係式を代入し、s を求めます。
s2+41=ℏ22μC2=41+41960321
これより s2=41960321 となり、s>0 より s=4196031 です。 これをエネルギー比の式に代入すると、
Λ=e2π×419603=e839206π
解答形式 Λ=eWπ と比較すると、W=839206 となります。
正解: 839206