GEO001 問題4
問題文
偏心した直円柱の慣性テンソルと慣性主軸
問題文
3次元デカルト座標系 (x,y,z) を考える。 一様で等方的な密度を持つ質量 M、底面の半径 R、高さ h の直円柱がある。 この円柱の一つの底面が x−y 平面(z=0)に完全に含まれており、その底面の中心の座標は (R,0,0) である。 円柱の中心軸(対称軸)は直線 x=R,y=0 に一致し、円柱の本体は 0≤z≤h の領域に存在している。 座標原点 O(0,0,0) は、この底面の円周上に位置していることになる。
原点 O を通り、x−z 平面内に含まれる任意の直線を回転軸としたときの、円柱の慣性モーメントを考える。この回転軸の方向を x−z 平面内で連続的に変えたとき、慣性モーメントが取り得る最大値を IA、最小値を IB とする。 また、原点 O を通り、y 軸に完全に一致する直線を回転軸としたときの、円柱の慣性モーメントを IC とする。
円柱の高さが h=2R の関係を満たすとき、IA,IB は次のように表される。 IA=SP+QMR2 IB=SP−QMR2 ここで、P,S は互いに素な自然数であり、Q は平方因子を持たない自然数(いかなる素数の2乗でも割り切れない自然数)である。 また、IC は次のように表される。 IC=VUMR2 ここで、U,V は互いに素な自然数である。
上記から導出される変数 P,Q,S,U,V を用いて、指示された一意な自然数を算出せよ。
制約
- 円柱の質量: M=12.0 kg
- 円柱の底面の半径: R=0.50 m
- 円柱の高さ: h=1.0 m
- 慣性テンソルの各成分は Iij=∫ρ(r2δij−xixj)dV で定義されるものとする。すなわち、非対角成分(慣性乗積)は Iij=−∫ρxixjdV (i=j) である。
入力形式
次の式で計算される値 W を、自然数として入力せよ。 W=P×Q+S×U+V
解説
解説
1. 重心まわりの慣性テンソル
まず、円柱の重心 G の座標を求める。 円柱の中心軸は x=R,y=0 にあり、z 方向には 0≤z≤h の範囲に一様に分布しているため、重心 G の座標は (xG,yG,zG)=(R,0,h/2) となる。 問題の条件 h=2R より、重心の座標は G(R,0,R) である。
重心 G を原点とし、各座標軸に平行な軸を持つ並進座標系 (x′,y′,z′) における慣性テンソル IG を考える。 一様な直円柱の重心まわりの主慣性モーメントの公式より、対称軸(z′ 軸)まわり、および対称軸に垂直な軸(x′,y′ 軸)まわりの慣性モーメントは以下のようになる。 IG,x′x′=IG,y′y′=41MR2+121Mh2 IG,z′z′=21MR2 ここに h=2R を代入すると、 IG,x′x′=IG,y′y′=41MR2+121M(4R2)=(123+124)MR2=127MR2 また、(x′,y′,z′) 座標系は円柱の対称軸に沿っているため、非対角成分はすべて 0 となる。 IG,x′y′=IG,y′z′=IG,z′x′=0
2. 平行軸の定理を用いた原点Oまわりの慣性テンソル
次に、平行軸の定理を用いて、原点 O(0,0,0) まわりの慣性テンソル IO を求める。 重心 G の位置ベクトルは rG=(R,0,R) である。テンソルの各成分について平行軸の定理を適用する。
対角成分: IO,xx=IG,x′x′+M(yG2+zG2)=127MR2+M(02+R2)=1219MR2 IO,yy=IG,y′y′+M(xG2+zG2)=127MR2+M(R2+R2)=1231MR2 IO,zz=IG,z′z′+M(xG2+yG2)=21MR2+M(R2+02)=23MR2=1218MR2
非対角成分: IO,xy=IG,x′y′−MxGyG=0−M(R)(0)=0 IO,yz=IG,y′z′−MyGzG=0−M(0)(R)=0 IO,zx=IG,z′x′−MzGxG=0−M(R)(R)=−MR2=−1212MR2
以上より、原点 O まわりの慣性テンソル IO は行列表記で次のように表される。 IO=12MR2190−120310−12018
3. y軸まわりの慣性モーメント
原点 O を通り、y 軸に一致する回転軸まわりの慣性モーメント IC は、慣性テンソルの成分 IO,yy に他ならない。 IC=1231MR2 よって、これを VUMR2 と比較すると、U=31,V=12 となる。(31と12は互いに素である)
4. x−z平面内の主慣性モーメント
原点 O を通り x−z 平面内にある回転軸の方向単位ベクトルを n=(cosθ,0,sinθ)T とおく。 この回転軸まわりの慣性モーメント I(θ) は、二次形式 I(θ)=nTIOn で与えられる。 IO の y 成分に関する非対角要素はすべて 0 であるため、x−z 平面内の慣性モーメントの極値問題は、IO から y 成分を除外した 2×2 の部分行列 Ixz の固有値問題に帰着する。 Ixz=12MR2(19−12−1218)
この行列の固有値を λ とする。便宜上 λ′=MR212λ とおき、次の特性方程式を解く。 det(19−λ′−12−1218−λ′)=0 (19−λ′)(18−λ′)−(−12)2=0 λ′2−37λ′+342−144=0 λ′2−37λ′+198=0 解の公式を用いて λ′ を求める。 λ′=237±372−4×198=237±1369−792=237±577 ここで 577 は素数であり、平方因子を持たない。 元の固有値 λ に戻すと、最大値 IA と最小値 IB は以下となる。 IA=2437+577MR2 IB=2437−577MR2
5. パラメータの特定と最終計算
得られた式と問題の定義を比較し、各パラメータを特定する。 SP±QMR2=2437±577MR2 P=37,Q=577,S=24 となり、37 と 24 は互いに素である条件も満たしている。
最後に、要求された値 W を計算する。 W=P×Q+S×U+V W=37×577+24×31+12 37×577=21349 24×31=744 W=21349+744+12=22105
求める最終的な自然数は 22105 である。